参院選2019

高等教育無償化プロジェクトFREEが目指す未来一学生の思いー齊藤 皐稀 (東洋大夜間部3年)

「大学入ってすぐの4月、奨学金の返済を考えると将来が不安になった。精神的に追い詰められた。自殺しようと考えてた。」

高校時代の友達に対して実態調査アンケートをした時、彼はそう言いました。鳥肌が立ち、いいようのないくやしさと悲しみがこみあげてきました。僕がこれから始まる大学生活に胸いっぱいの希望を持っていた時に、彼は死のうとすら考えていた。その時、僕は初めて本当の意味で高すぎる学費と名ばかりの奨学金制度の問題に真向いました。

「高等教育無償化プロジェクトFREE」が立ち上がったのは2018年9月のことでした。東工大や芸大が学費の値上げを決定し、千葉大が学費の値上げを検討するといった状況で当時者である学生の声がまだまだ世間にも政治の場にも届いていない、そう感じました。僕たちは、学生の声をもっともっと世間や政治の場に届けるために「学費・奨学金に関する学生実態調査」を学生一人一人から集めることに決めました。

実態調査をした高校時代の友達は、続けてこう言います。「シングルマザーで家にお金はない。それでも、大学に行こうと思ったのは高い給料をもらえる職に就くため、英語をがんばっていたからそれを深める勉強もしたかった。だから、奨学金を借りてでも進学したかった。けど、受験に失敗した。浪人する余裕はなかった。大学卒業後の700万の返済を考えると、そこまでして第一志望じゃない大学に行く必要はあったのかと考えて、不安で不安でしょうがなかった、不安にさせちゃだめだと思って親にも相談できなかった…」

「痛い」と言わせないこの社会の空気は、学生を自己責任へと追い込みます。FREEの実態調査はその痛みを「痛い」と声に出す役割を担っています。

「アルバイトが忙しくて、テスト前なのに勉強ができず、再試になった。」(千葉県立保健医療大学・世帯年収270万円未満)

「一人暮らしをする金銭的余裕はないが、1日4時間半の通学時間がもったいない。またその時間以外でバイトと勉強をするのはきつい」(津田塾大学・600~800万円)

「奨学金の返済がいつまでかかるか不安なため、安心できる職に就きたいという不安に駆られる。」(中央大学・600~800万円)

「友人:大学などへの進学も考えていたがお金に余裕がないため就職した。」(東洋大学)

ただ、FREEの活動は「痛み」を届けることだけが目的ではありません。なぜなら、学費の無償化は「もっと、こんなことに挑戦してみたい!」「あきらめていた進学をする!」といったワクワク感を孕んだものになるからです。また、高等教育で得た知識や能力は社会に還元されていきます。日本の社会にとっても前向きなものになります。「もし、いま学費が無償になったら、あなたはどうしますか?」の質問には以下のような回答がありました。

「4年制の大学に編入。アルバイトをやめる。」(白梅学園短期大学)

「バイトを辞める。たくさん旅行する。留学する。趣味にお金を使う。服やカバンなどをたくさん買う。」(慶應義塾大学・400~600万円)

「ギリギリで小手先のテクニックで周りに助けられて単位を取るのではなく、1年では分からなかった授業を留年してもきちんと理解したい。」(東京大学・600~800万円)

ごくわずかな声を挙げてきましたが、これだけでも「学生のリアル」がつかめてくるのではないでしょうか。FREEではこうした「学生のリアル」を出発点にして、僕らの望む政治のありかたを発信しています。

FREEは5月に成立した「大学等における修学の支援に関する法律案」に対するステートメントを発表しました。法案に前向きな点があるということを歓迎したうえで、①対象がとても限定されている、②消費税の増税分が財源となっている、③支援を受けられない大学がある④高い学費の値下げにはならない、という4つの問題点を指摘しましたが、根本的な修正はありませんでした。実態調査の内容から見ても満足のいくものではありません。

FREEの最終的な目標は「すべての人への高等教育の無償化」です。そのために、①高等教育の無償化を目指し、大幅な学費値下げにふみ出す。②高等教育の授業料免除枠を大幅に拡大する。③奨学金制度を抜本的に改善する―――給付制奨学金の抜本増。貸与型奨学金の完全無利子化。返済中の奨学金の利子払いの免除。返済困難者への救済制度の拡充。という3つのことを求めています。FREEはこの要求を創立の時に決めましたが、僕自身実態調査を集めていくなかで、本当に必要なものだと思うようになっていきました。冒頭の「初めて本当の意味で高すぎる学費と名ばかりの奨学金制度の問題に真向」った瞬間は、FREEの要求にこだわらなければいけない、そう感じた瞬間でもありました。

よく、高等教育の無償化は現実性がないという指摘をいただきます。でも、現実は実態調査一枚一枚に書かれた苦しみや悲しみ、そして希望の声なのです。「学生のリアル」を直視した政治的な判断が下されるために、FREEは3つの要求をこれからも掲げ続けていきます。

 

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