第27回参議院選挙を終えて(2025年7月21日)

自公政権に再び国民の厳しい審判が下った。日本政治の流動化は今後さらに加速するだろう。
私たちはこの度の選挙を、「自公政治からの決別」、そして「来るべき政権交代」への足掛かりとして位置づけ、立憲各野党に共通政策、そして共闘の維持拡大を要請した。結果的に、32の1人区のうち17選挙区で「野党共闘」が実現し、自民を14勝18敗にまで追い詰めた(前回は自民28勝)。今回の選挙で、獲得議席数は自公の与党は47議席、野党は78議席、結果として昨年の衆議院に続き、参議院においても、自公(与党)は少数となった。立憲主義を踏みにじり、長年国民生活に背を向けたまま裏金政治を温存する政権に、明確にNOを突きつけることができたのは、もっとも大きな成果であった。市民連合はこの成果を実現するために、全国で一定の役割を果たすことが出来た。
しかし自公の凋落は、必ずしも立憲主義や「リベラル」の復調を意味しなかった。今回、私たちが共闘を呼び掛けた立憲野党は軒並み伸び悩み、戦後民主主義や「リベラル」な市民的諸価値を公然と否定する政党が台頭し、メディアを席巻した。昨年のアメリカ大統領選がそうであったように、社会の矛盾や不安の矛先が、与野党含め「既存の政治」全体へと向けられ、“サムシング・ニュー(新しい何か)”を求めた世論の一部は、従来の平和主義や立憲主義というより、むしろナショナリズムや排外主義へとなだれ込んだ。
かつて政治学者のB・バーバー氏が『ジハードvs.マックワールド』で分析したように、経済のグローバル化(マックワールド)が進行することで世界は一つになるのではなく、かえって社会内部に差別や偏見、憎悪や怨嗟が醸成され、相互扶助と対話を旨とする民主主義や市民社会の基盤が壊されていく。今回の選挙ではむしろ、このようにファシズム化する世界社会の「危機」に目を向けるべきだろう。日本政治も今後さらに本格的にこの問題と対峙することになる。
これからさらに流動化する政治状況の中で、「市民」的な諸価値に基づく政治勢力は何を実践していくべきなのか。今後のファシズム、そして戦争という歴史の慣性に抗うためにはいったい何が必要なのか。時代の分岐点に立つ私たちは、選挙の度に奔走するのみならず、まさにあらゆる垣根を超えた日常的な対話や実践によって、この根本的な課題克服のための活路を見いだす必要があるだろう。そしてこの危機感を共有する市民と共に、混迷する時代の羅針盤、すなわち「信じられる未来」の具体像を、草の根から構想し、実現していかなければならない。
2025年7月21日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合