2024年10月27日 第50回衆議院選挙の結果を受けて
裏金政治をめぐって自民党に鉄槌が下った。国会解散まで戦後最短の審議で選挙に臨み、「禊(みそぎ)」をはかった石破新政権だったが、議席の単独過半数どころか、勝敗ラインとしていた自公による過半数獲得も達成できなかった。与党の一翼を担った公明党の新代表と副代表も、選挙区での落選を余儀なくされた。
選挙の公示前、自民党は、裏金問題への対応として自党の候補者10人を「非公認」としたが、間もなくそれら候補者支部への2000万円の資金供与も明らかとなり、同党の政治改革への不信を増長させた。今回、この「偽装公認」問題、そして裏金問題自体を幾多のマスメディアに先駆けて明らかにし、野党躍進の契機をつくりだしたのが日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』であったことは、記憶にとどめておくべきである。今回の選挙では、いかなる強大な権力も、その体内に巣くう腐敗の事実が明らかとなり、国民の信頼を失えば、一夜のうちにその基盤が瓦解するという、民主政治の真実が再確認されることになった。日本の有権者は、今回の選挙で明確に、政治権力に対して抜本的な政治改革の必要性を突きつけた。
しかし他方で、派閥からのキックバックが政治資金収支報告書に不記載だった自民党議員46人中18人が当選を果たし、「旧安倍派5人衆」のうち4人が議席を維持した。したがって裏金問題は、依然としてまったく解決しておらず、引き続き国会内外での追及が続けられなければならない。そして今回争点となったこの裏金問題の解決も、民主政治にとってはいわば最低限のスタートラインにすぎないことも再確認すべきである。私たちの眼前には、自公政権12年間、あるいは「失われた30年」で蓄積された多くの政治課題が山積している。しかし、選挙期間中に全国で、それらの重要争点が十分に議論されたとはいえない。
私たち市民連合は、立憲主義の回復や安保法制の廃止というこれまでの取り組みにもとづき、先の立憲野党(立憲・共産・社民・沖縄の風)との「政策合意」において、憲法9条や専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使、そして敵基地攻撃能力を許容することはできないという点を再確認した。またこれに加え、逆進性の強い税制の是正など市民の生活を守る経済政策や、誰もが個人として尊重されるジェンダー平等と人権保障、原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへの転換といった、来るべき立憲政治の指針に関する共通原則も確認した。そしてこれらの確認にもとづき、今回の選挙戦においても、市民と野党との共闘で戦うために全国各地でさまざまな取り組みを行い、結果的に、改憲政党(自民・公明・維新)による3分の2の議席獲得を阻止することにも寄与することができた。ただその一方で、全国的には、野党共闘が実現した選挙区だけではなく、野党同士が競合した選挙区も生じ、今後の共闘のあり方に課題を残した。
しかしいずれにせよ、選挙期間中に必ずしも十分に議論されなかった重要課題について、今後不確実性を高める国会内の政治過程においても、立憲各野党がしっかりとその当初の方向性を見失わずに歩みを進められるかどうか、私たちはそれをしっかりと見守り、またその実現のために多くの市民団体と連携しつつ、独自の取り組みを行っていきたい。
いかなる政党といえども、永田町の権力闘争に拘泥し、つい昨日まで街頭で触れ合い、語り合ってきた有権者や国民の存在を忘れ、立憲政治の大きな原則を踏み外すようなことを、私たちはけっして許容しない。「政権交代は最大の政治改革」であり、その訴えは総選挙で大きく有権者に届いた。しかし、むしろその政権交代への過程で実現される具体的な政治の「中身」こそが、さらに重要な争点であることも、ここで確認しておきたい。
残念なことに、この度の総選挙では、戦後3番目に低い投票率に終わった。ほぼ2人に1人が選挙に行かなかったことになる。この国では、有権者の政治そのものへの無関心、あるいはさらに言えば「絶望」が顕著である。現在の選挙制度において、今回のような一部野党の躍進も、冷静に見れば、その多くが与党側の失策とそれに対する与党支持層の離反に起因するものにすぎない。したがって、今、勝利に沸き立つ立憲野党も、けっして奢ることなく、今後の国会活動においては、むしろ現在政治への期待を失った多くの国民でさえもが微かな希望を見い出しうるような政治の姿を実現してほしい。
私たち市民連合は、選挙後も引き続き、戦争へと向かう国のゆくえを正すべく、各地域でたゆまぬ活動を展開し、市民の立場から政治に参加し、これを創り、またこれを監視する。来年の参議院選挙に向けても、立憲主義と平和主義にもとづくあらゆる政党や組織、政治家と連携し、「市民と野党との共闘」を引き続き追求したいと願う。
2024年10月28日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合