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第50回 衆議院議員選挙にあたって (2024年10月15日)

去る10月11日、ノルウェーのノーベル委員会は、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)に今年の平和賞の授与を発表した。近年、ウクライナ戦争やガザでのジェノサイドをはじめとする深刻な平和問題が噴出する中で、迫りくる核戦争の脅威に焦点を当てたノーベル委員会の確かな判断に心より敬意を表したい。

一方、日本では、アメリカとの核共有や「中国、ロシア、北朝鮮の核連合に対する抑止力」としてのアジア版NATOを持論とする石破茂氏が新首相に選出された。新政権では、岸田前政権の大軍拡路線、および憲法改正の方針も継承されている。朝鮮半島や台湾海峡における緊張は一向に収束せず、東アジアにおいても、今後さらに安全保障問題をめぐる数々の争点が浮上するだろう。私たち市民連合は、2015年以降、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求めて、立憲野党と連携しつつこれまで5回の国政選挙を闘ってきた。しかし、今回の与野党の代表選挙や、国会解散までの戦後最短の国会審議においては、この現在危機に瀕している平和と立憲主義を守るための議論が十分になされることはなかった。

もちろん、この度の国政選択選挙では、第一に、歴代自民党政権がつくりあげてきた、まさに民主政治の根幹をゆるがす「裏金政治」の問題に明確な審判を下さなければならない。自民党代表選の際に石破氏が喧伝した、地域創生や日米地位協定の改訂、そして「政治資金をチェックする第三者機関の立ち上げ」といった政治改革の公約も、党役員や内閣の人事、そして裏金議員の衆院選公認などの「手のひら返し」にも見られたように、岸田前政権の「新しい資本主義」と同様、掛け声だけに終わるだろう。歴史が証明するように、自民党はけっして自民党そのものを変えることはできない。それゆえ、今回の総選挙では、政権が発する選挙用のスローガンに有権者が惑わされることなく、裏金政治や統一教会問題といった歴代政権の腐敗を根底から正し、民主政治をまずは最低限のスタートラインにもどすことが求められている。

しかしまたそれに加え、今回の選挙では、日本社会の将来を決する他の重要な争点についても議論が共有されなければならない。市民連合は今回も、去る10月7日と8日に、政策合意書(「市民の生活を守り、将来世代に繋げる政治への転換を」)を、各立憲野党(立憲民主党・共産党・社会民主党・沖縄の風)と確認した。「憲法も国民生活も無視する軍拡は許さない」と訴える第1項には、集団的自衛権や敵基地攻撃能力の保有、そして辺野古新基地建設等基地の強化を認めず、非核三原則の遵守と核兵器廃絶めざした努力が謳われている。また第2項には、インフレ高進の中、生活の劣化状況に関して逆進性の強い税制の是正などの市民生活を守る経済政策、第3項には、選択的夫婦別姓制度や同性婚制度など、誰もが個人として尊重されるジェンダー平等と人権保障、そして第4項には、気候変動対策の強化と、原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへの転換が謳われている。いずれも、自公政権が進めてきた政治の方向性とは真っ向から対峙する内容であり、できる限りこれらすべての争点が選挙期間中に活発に議論されることを望む。

特に、戦争の根源にジェンダー不平等の問題があるという共通認識から、私たち市民連合は、「女性の声で政治を変えよう」という、フェミブリッジ(フェミニストの架け橋)の呼びかけを重視し、選挙期間中にも行動を共にする。政権の腐敗を正し、立憲政治を回復する絶好の機会であるにもかかわらず、今回は残念ながら、野党共闘の構築は十分になされなかった。しかし、市民連合による先の包括的な政策合意、そして組織や立場を横断して手をつなごうとするフェミブリッジの挑戦は、これまで市民と野党の共闘のために力を尽くしてきた全国の仲間へのエールである。まさにそれぞれの地域でさまざまな形で奮闘する全国の市民の力によって、私たちは、立憲主義の回復と政権交代の旗を掲げ、政策合意した統一候補や政党会派の候補者の勝利をめざす。そしてできうる限りの有権者の参加を促し、低落する投票率を改善すべく、広範な「選挙に行こう」運動に取り組む。

私たち市民は、あくまでも自らが政治のゆくえを決める主権者として、最後まで民主政治や立憲政治の原点を見失わず、また選挙そのものだけでなく、「選挙後」も見据えながら、未来に向けて協働し続ける。そして何よりも、この度の選挙によって試される候補者や政党が、そのような市民の声を身に帯びることなしに、長きにわたって存続しえないことを、証明したいと思う。

2024年10月15日

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合

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