地域から

2023年参議院徳島・高知合区補選勝利の教訓から2024年4.28衆議院三補選勝利へ
― 2023年参議院徳島・高知合区補選報告 【 市民連合・徳島】

何故、保守地盤の強い四国で勝利できたのか

1. 争点の絞り込みと鮮明化

ア、なぜ、補選が行われることになったのか。(高野参議院議員による秘書への暴行での議員辞職)その責任(自民党公認の議員)は誰にあるのか。本来、不要の補選費用(税金から約11億円の支出)が何故生じたのか。

対置したスローガン 政治の信頼を取り戻す

イ、本来、立候補を辞退すべき自民党が総力をあげたことにより、発足後2年を経過した岸田政権への評価、審判が第二の争点となった。

対置した主要な政策ポイント 物価高に苦しむ国民生活 とりわけ、地方においては死活問題となるガソリンの高騰対策を強調(街宣で最も拍手賛同が多かった)したこと。

対置したスローガン 国民にあたたかな政治

ウ、多くの国民が疑問、戸惑いをもっている健康保険証廃止の見直し。

エ、あと、社会保障政策や食料自給率の向上などもありましたが、ア~ウを対置、強調したことが大きかったのかなとおもわれます。

 

2. 幅広い事実上の野党共闘構築と新たな選挙体制について

ア、立候補の形態を政党公認ではなく、無所属としたこと

形態を無所属としたことにより、事実上の野党系候補でありながら、保守リベラル層や保守系無党派層の心理的抵抗を軽減したこと。

尚、候補者自身は県民党を名乗り、保守層からの支持も強く意識しておりました。

イ、組織推薦は連合高知、連合徳島だけであったこと

ウ、政党、及び、どの市民団体とも公認はもとより、推薦、支持依頼など一切せず、また、どの団体組織とも政策協定なども締結せず、形としては連合以外のすべての団体組織は自主支援となったこと。

エ、徳島県での選対は従来の政党を中心にした総合選対ではなく、徳島県議会会派新しい県政を創る会の県議が選対本部長となり、連合・徳島、新しい県政を創る会、中央本部から応援に入った立憲民主党の秘書団、連合本部からの派遣団が事実上の選対となり、選挙戦は廻っていきました。この新しい県政を創る会には5名の県議が所属しており、政党的には立憲、国民の県議、及び、市民団体などが応援した無所属ので構成されています。ちなみに、全員、連合推薦議員であったことも迅速な選挙体制構築にプラスに作用したとおもいます。

オ、動向が気がかりだった維新も国民も擁立しなかったことにより、水面下の様々な紆余曲折があったにしろ、結果的に幅広い野党共闘対自民・公明という構造に持ち込むことができたこと。

カ、市民連合・徳島はこの選挙体制と連絡を密にして、全県下で役割をはたしてきました。

3. 徳島県の戦いが勝敗の帰趨を決める

合区全体でみると今回の補選勝敗の帰趨は徳島県の結果にかかっているというのが、メディアも含め、与野党共通の認識でした。我々も、今回の不祥事を起こしたのは高知の参議院議員であり、かつ、与党の候補者が自民党の高知県議であったので、高知県内では野党側がリードできるのではないか、最終的には徳島での戦いの結果が合区での勝負を決めるという認識でした。

4. 2023年10月22日投票のこの補選が衆議院長崎4区の補選と並んで岸田政の評価を左右するものとなり、与野党総力戦の戦いとなりました。

ア,与野党総力戦で様変わりした選挙風景

野党側

街頭や屋内集会においてこれまでの政党や市民団体の発言や旗などは全く無くなり、視覚に入るのは「政治の信頼を取り戻す」の幟だけ。

発言は唯一団体推薦した連合以外は様々な国会議員や元首長の応援演説だけ。(上記、二点の是非についてはおいておきます。)

これまでの徳島の国政選挙ではありえなかった程の多くの国会議員が繰り返し、応援に入ったことによりメディアへの露出が大きく増加。

立憲民主党:泉、岡田、蓮舫、辻元、野田、小西、長妻、小川淳也、他

国民民主党:前原 共産党:小池  有志の会:泉元明石市長 元埼玉県知事

などなど。―敬称略―

与党側

岸田総理、山口公明代表の揃い踏みをはじめ、茂木幹事長、小渕優子選対本部長など、著名な国会議員がたくさん応援に来県。

特に総理来県のときは会場の公園では入口を一箇所に制限して、これまでにないものものしい警備体制がしかれました。前例があまりない岸田総理、公明党山口代表揃っての同時来県にもかかわらず、わずか500人位の聴衆しか集まらず、岸田総理が発言しようとしたときには「増税メガネ」の野次が飛ぶほどでした。

通常、野党側が行う、「選挙に行こう」のスタンディングを今回は与党側が支持層の棄権を憂慮して「投票に行こう」のスタンディング

5. 戦いの結果

報道によると与党が自民票の60%、公明の90%、無党派層、維新票では1割そこそこにしか浸透しきれませんでした。

一方、野党側は立憲、国民、共産支持層の9割近くに浸透。また、驚くことに無党派層の9割、維新支持層まで9割近くにまで浸透しました。

最終的な投票結果は勝負の徳島県で83637対57253、得票率59.36対40.64、合区全体では233250対142036、得票率62.15対37.85での勝利で完勝でした。ちなみに、徳島県内の立憲主党の支持率が一昨年参議院選時の3.8%から9.3%に急上昇。

PDF版はこちらからダウンロードできます。

6. 全国の皆さまに知ってほしい合区という選挙の難しさについて

ア、現在、全国で45ある参議院の選挙区において、僅か二つしかない合区が島根・鳥取合区と徳島・高知合区です。過去、2016年、2019年、2022年と3回、この合区の選挙は戦われました。合区選挙に現れる特徴的な傾向として、候補者がどちらかの県に偏った場合、候補者がいない県の投票率が極端に下がり、同時に選挙には行くが無効票が極端に増加します。これまで、2016年が与野党ともに徳島県、2019年、2023年補欠選挙が与野党ともに高知県からの出馬となりました。

イ、行政的には徳島県は四国で唯一、関西広域連合に加盟しており、歴史的文化的にも関西とのつながりの方が深く、高知県との合区は多くの県民の間ではもう一つ、なじみにくい面があります。

ウ、17日間しかない選挙期間で東西300㎞にわたる広大な選挙区での選挙戦は移動だけでも大変で、選挙カーも17日間のうち、各地域、地域には僅かな時間を通り過ぎるということになり、有権者からすれば選挙をしている感じがほとんどしないということになります。

エ、したがって、合区の選挙は遅くとも半年前には事実上の戦いに入らなければ間にあいません。政治活動の費用の面でも大変なものがあります。