マッチョ政治の終わりの始まり
― 宮城県議会議員選挙の報告(2023.11)
10月22日、徳島高知、長崎での国政補選と投票日を同じくして、宮城県議会議員選挙が行われました。この選挙結果には、私たち宮城県民のみならず、今の自公政治の転換をめざす全国の人々がくみ取るべき教訓があると思われますので、報告したいと思います。
宮城県議選の結果は、自公過半数割れ、立民全員当選
県議選翌朝(10/23)の河北新報(宮城県の地方紙)の一面トップには、「宮城県議選 自公過半数割れ」「女性 最多の10人当選」の大見出しが踊りました。
今回の県議選で自民党は現職4人が落選し、前回の28議席から24議席に後退。公明党の4議席を加えても28議席にとどまり、2005年の村井嘉浩知事就任以来、初めて村井与党が過半数を割りました(総議席数は59なので過半数は30)。もちろん自民はこれから保守系無所属を会派に取り込む多数派工作をやると思われますが、この選挙結果は重大です。
一方、立憲民主党は公認候補10人が全員当選と大きく前進しました。なかでも仙台市内の5選挙区のうち4選挙区で、立民の女性候補がトップ当選(残る1選挙区は2位当選)。仙台隣接の新興住宅地が広がる選挙区でも、立民の女性新人候補が2位当選と躍進し、これらによって全体で女性当選者は過去最多の10人となりました(59人中10人ですからまだまだ少ないですが)。
共産党は仙台市外の定数2の選挙区で自民の独占を打ち破って新人候補が当選するなど奮闘しましたが、仙台市内で現職元職が惜敗(いずれも次点)し、全体としては現有5議席確保となりました。
宮城県議選の最大の争点は「病院統廃合」問題
今回の県議選は争点が明確であり、あらゆるメディアが一致して「4病院再編構想の是非」と報じました。4病院再編構想とは、県内の2つの公的病院に2つの県立病院を統合(および合築)し移転するという構想で、国策である「公立・公的病院統廃合」「病床削減」を率先しながら、県立病院をつぶして財政負担を減らそうというものです。
村井知事は、これをトップダウンで指示し、議会へも県民へも情報を出さず、公的病院運営機関らと”密室で”協議し、構想を固めてから説明するという強引な手法で進め、当該病院の患者・利用者、医療従事者、周辺住民らから強い不信や反対の声があがっていました。特に県立精神医療センターのユーザーによる「当事者抜きで決めるな!」という運動がまき起こる中、その当事者らで構成された宮城県精神保健福祉審議会で村井知事が「どのような意見が出ても私の考えに変わりはない」「私を止めることができるのは県議会だけだ」と言い放ち、その様子がTVニュースで放映されると「あまりにも横暴だ」「独断専行が過ぎる」という反発が県内に広がっていきました。
オッサン政治・マッチョ政治への批判を糾合した
今回の選挙結果の底流には物価高に対して無策の岸田自公政権への厳しい評価(最低水準の支持率)があり、最大の争点が4病院再編構想だったことは間違いありません。それに加えて、県民有権者の投票行動を大きく左右したのは、村井知事の強引で横暴なオッサン政治への嫌気、「決めるのは俺だ。黙ってついてこい」的なマッチョ政治への反発であったと考えられます。
実はこれは村井知事の一貫した政治手法で、特に311大震災後は「創造的復興」の名のもとに、水産特区(漁業の民営化)、空港民営化、水道民営化、そして原発再稼働などを、当事者の頭越しに強行してきたのです。村井知事は“力強いリーダーシップ”を演出し、再選を重ねてきましたが、今回はあまりにも甚だしい当事者無視が県民の前に露わになりました。
そして、そのマッチョ政治への批判票を集めたのが、(立民を中心とした)女性候補たちでした。彼女らは村井知事への批判を鮮明にして4病院再編反対を明確に訴え、その政策メッセージとマッチョとは対極にある女性候補の佇まいがシンクロし、さらには立民の女性国会議員の応援もシナジーして、村井マッチョ政治批判票の受け皿となりました。今回の宮城県議選での、立民女性候補の異常な(?)強さの秘密はここにあったと言えます。
教訓をまとめると、①現政権を批判する鮮明な政策メッセージを打ち出すこと(曖昧や中庸はダメ)。②その政策メッセージがオッサン政治・マッチョ政治への批判(ジェンダー平等への志向)をはらんでいること。③それらメッセージ&メタメッセージとシンクロする(体現する)候補者であること。。。これが強力地盤の自公政治家を負かす“勝利の方程式”と言えます。
維新の勢いをくい止めたこと等々
実は今回の県議選でもうひとつ、マッチョな勢力が県政進出を狙っていました。それは維新の会です。
維新の会は、今年7月の仙台市議選で5選挙区すべてに候補者を擁立し、5人全員が当選。「弱かった東北に足場を築いた」と評され、県議選では何人立てるか何人受かるか、宮城の政界は“戦々恐々”となったのでした。で結果は、4人擁立、2人当選でした。
候補者不足から擁立は4人にとどまり、仙台市内で2人当選を許したものの、仙台市外では村井批判を鮮明にした候補者が勝つことで、維新の当選を阻止しました。明らかに仙台市議選のときの勢いは削いだと言えます。
「対・維新」で考えても、現政権への批判勢力・対抗勢力は我が方だということを明確にすることが肝要だと言えます。
市民連合みやぎは、立民公認・推薦候補14人、共産公認候補8人、無所属候補1人と政策協定の覚書を交わし、それらの候補者の当選へ向けて、それぞれの選挙区で奮闘しました。結果は、23人中18人当選となりました。
今後の課題としては、新たな構成で始まる県議会で4病院再編構想を白紙撤回に追い込むこと(特に選挙の最中に反対を言明した自公議員の“手のひら返し”を許さないこと、そうすれば阻止できる)。今回の県議選の教訓を生かして衆院総選挙と参院選の準備をすること。さらには最大のチャンスを迎える次の県知事選の候補者を発掘すること。。これらを頑張っていきたいと考えています。
多々良 哲(市民連合@みやぎ事務局長)