ひろば

市民連合/立憲野党インタビュー
「第211回通常国会終盤を迎えて(2023.5)」
⑤れいわ新選組 衆議院議員 櫛渕万里さん

市民連合、立憲野党インタビューをお送りします。第5回目はれいわ新選組共同代表・櫛渕万里衆議院議員です。インタビュアーは福山真劫さん(市民連合)です。

【福山】市民と野党の共闘を進めてきた市民連合として、この間、立憲野党各党にインタビユーをし、それぞれの取り組みを紹介しています。今日はよろしくお願いします。それでは最初に櫛渕さんが政治に関わるようになった原点をお話しいただけますか。

【櫛渕】運動の原点、ということで言えばNGOピースボートの経験です。世界80カ国近くをまわる中で、格差や貧困、紛争など、グローバル経済が進む中での様々な矛盾を見てきました。新自由主義を推し進める「世界経済フォーラム」に対抗して作られた「世界社会フォーラム」には、数多くの市民団体が集まってきており、新自由主義の経済政策のもとで虐げられている人たちの現状を知りました。また同時に、先進国も成熟した民主主義を形成していく必要があります。私がピースボートの運動をしていた時期は、日本での自殺者が10年以上にわたり3万人を超えた時期です。グローバリゼーションの勝ち組にも入りきれない日本の現状を、世界各国の現状と比べてみていく中で、やはり日本の政治に関わらねばという思いを強くしました。

【福山】なるほど。それで議員になった経過はどうでしたか。

【櫛渕】私が最初議員になったのは2009年の政権交代の時でしたが、それ以前には、田中秀征さんの政治塾に参加していました。集まってきている人の中にはミュージシャンや弁護士、官僚など様々な職種の人たちがいて、私はNGOから、といった感じで参加していました。議員になって以降は、永田町の数の論理になかなか馴染めなかった。その点、れいわ新選組は少数政党で、やりたいことをブレずに進めていけます。私としてはこの政党での活動を通じて、新しい政治を作り上げていきたいと考えています。

【福山】今国会では、様々な悪法が通ってしまいましたが、その点についてはどうでしょう。

【櫛渕】国会全体がどんどん大政翼賛化しているように思います。今年度予算では史上最大の防衛予算が組まれているのにそれがあっさり可決されてしまう。安全保障三文書や敵基地攻撃能力など、日本の国の姿を根幹から変える政策が進められようとしているのに、本質的な議論ができていない。憲法の問題もそうです。海外から見れば、平和憲法は一定の「おもし」になっていて、それによって、信頼されていたところもあるのに、その精神を逸脱して軍事拡張に進めば、周辺国から不信感が募っていくだけです。これではいくら外交努力をしても、うまくいきません。私は昨年、ウィーンで開催された核兵器禁止条約の第一回締約国会議に参加しましたが、世界では「核に頼らない安全保障」の枠組みがスタートしているのです。日本は、唯一の戦争被爆国として、「核の傘」から「非核の傘」を広げていく歴史的な役割があるのです。

公文書管理のいい加減さなども問題です。入管法にしても、閣議決定されてものがそのまま通っていく。こうなると立法府そのものが軽いものになってしまいます。今の国会の危機的な状況を可視化させ、国会の外の国民と連携して、立法府の力を取りもどす。民主主義を正常化させなければならないと思っています。そのためには「闘う野党の復活」が必要です。私自身、懲罰動議を受けましたが、やむにやまれぬ思いでした。小さな力ですが、国民の代表としてあきらめずに最後まで行動していく責任があると考えています。

【福山】そうですね。加えるとすれば、権力の私物化の問題。これもどんどんひどくなっています。

【櫛渕】そうです。福島第一原発事故から12年しか経っていないのに原発推進するGXやマイナンバーについても、既得権ありきで大きな問題があります。また、少子化対策の財源で後期高齢者の保険料を上げる方針が示されていますが、世代間を分断しかねない深刻な問題です。LGBTについては最悪の結論で、マイノリティの権利を置き去りにした、本末転倒のものになってしまいました。本来必要だったのは、私も法案提出者になっている差別解消法であって、れいわ新選組は理解増進法には反対しました。日本維新の会や国民民主党がこの件で果たした役割は、当事者の思いを踏み躙り、票を持っているマジョリティーにすり寄ろうとしたものとしか思えません。

【福山】そうですね。私としてはやはり運動の側ももう一踏ん張りしなければ、という思いを強くしています。

【櫛渕】少数者の人権を守ろうとする議論が減ってきているように思います。そのような中で、れいわ新選組は、やはり経済の問題を解決しなければと思っています。格差が広がることによって、自分より弱い人をいじめるという構造になり、排外主義や差別が広がっていっているのが現状なのではないでしょうか。政治家までもが強い者の味方になってしまっては、この状況が拡大再生産されるだけです。

【福山】れいわ新選組の活動を見ていると、格差社会によって生じた貧困の問題に寄り添うことが原点のように見えているのですが。

【櫛渕】そうです。経済問題なんです。30年も賃金が上がらない、そこにコロナと物価高が襲いかかり、国民はいわば三重苦といえる非常事態にあります。なかでも、れいわ新選組にはロスジェネ世代の人々が一定層いる、当事者性の強い政党だと思っています。みんな、いまの死にたくなるような世の中を自ら変えようと、一緒にポスターを貼ったり、街宣をしたり、それぞれの方々の話を聞きていると、「いや、勤めている会社がブラック企業で非正規で・・・」などという話が出てきます。私たちが消費税廃止を掲げるのは、まずは生活の底上げと経済再生が必要だからです。お財布の中に使えるお金を増やさなきゃいけない。山本代表が言うように「生きているだけで価値ある社会」を作ることが重要です。れいわ新選組の政策は、それぞれの当事者から発せられるものがそのまま政策になっています。私たちの街頭宣伝では、新しい参加者が参加しやすいように、一人一人に一分間マイクを持ってもらって発言してもらったりしています。それが政策になっていくのです。元々投票にいっていない5割の有権者が動けば、確実に政治は変わり、自公政権を倒すことができると思います。

【福山】そうですね。それで、内閣不信任案の採決については、棄権をされたと聞いていますが、なぜなのでしょう。

【櫛渕】私たちも岸田政権は不信任に値すると考えています。国会質疑の中でも、岸田内閣の進めている政策は「売国・棄民路線」であるとして反対してきました。しかし、内閣不信任案が提出されたのは防衛財源確保法が採決された後で、結果的にあっさりと法案の成立を許してしまいました。そんなことでは内閣不信任案に賛成する意味もないと言うことで、棄権しました。このことについては、党としてホームページに声明(内閣不信任案「棄権」の理由)も出していますのでご覧いただければと思います。

【福山】そうですか。私としては、棄権するまでのことはなかったのではないかと思うのですが・・・。

【櫛渕】やはり、本気で止めようとしているかどうかだと思います。今回も、2015年の安保法制の時のような大きな運動を、やりようによっては作れたのではないでしょうか。国会議員の中には、運動は運動で、政治家の仕事は国会で法律を作ることだと役割分担をしてしまっている人もいるように思いますが、国会議員も国会の外に出て、同じ空気を吸って、生の声を聞き、市民の運動ともっと連携していくべきだと思います。

【福山】そうですね。ぜひそのようなスタンスでお願いします。では、最後になりますが、解散総選挙は当面はないと思われますが、来るべき衆議院選挙で、れいわ新選組として、もっとも訴えたいことをお聞きしたいと思います。

【櫛渕】今この時代、戦争をさせない、国民を飢えさせない、ということです。専守防衛と徹底的な平和外交、そして、国内の安全保障を徹底する。増税や国民負担を増やさないことはもちろん、消費税を廃止、最低でも減税は絶対です。そして、積極財政で、一律の現金給付や教育の完全無償化、奨学金の返済はチャラにして、教育ローンの返済苦で自らの命を絶つような若者をもう一人も出してはなりません。れいわ新選組は、この国に生きるすべての人々が「生きててよかった」と思える国づくりを進めていく、この点を強く訴えていきたいと思います。

【福山】ありがとうございました。今の政治を転換するために、引き続き連携していきましょう。

インタビュアー・福山真劫(市民連合)(2023年6月16日@参議院議員会館)

 

【櫛渕万里 参議院議員プロフィール】
1967年10月15日生。群馬県沼田市 出身
趣味 : 旅行、和歌/特技 : スキー(SAJ検定一級)、ダイビング(レスキュー資格得)/家族 : 夫、黒猫11歳(オテンバ娘です)/尊敬する政治家:石橋湛山、ネルソン・マンデラ/好きな言葉 : 「初志貫徹」/好きな本 :「モモ」/好きなもの:卵かけごはん、ムーミン

【経歴】
沼田市立沼田小学校卒業/沼田市立沼田中学校卒業/群馬県立沼田女子高等学校卒業/立教大学社会学部卒業/
NGOピースボート事務局長/新党さきがけ「政治塾」専修科生/法政大学国連グローバル・コンパクト研究センター共同代表/明治学院大学国際平和研究所客員研究員/民主党国会議員候補者公募試験合格/衆議院議員 東京都第23区(町田市・多摩市)※予算委員会、経済産業委員会理事、環境委員会など歴任し、「自然エネルギー促進法」の成立に尽力する。/小林秀雄に学ぶ「池田塾」二期生/全国ご当地エネルギー協会事務局長

現在、衆議院議員2期(れいわ新選組)、東京都第22区総支部長(三鷹市・調布市・狛江市・稲城市一部)
※予算委員会、内閣委員会などに所属。議員立法「消費税5%減税法案」や「LGBT差別解消法案」等を提出。