ひろば

市民連合/立憲野党インタビュー
「第211回通常国会終盤を迎えて(2023.5)」
④沖縄の風参議院議員 伊波洋一さん

市民連合、立憲野党インタビューをお送りします。第4回目は参院会派沖縄の風・伊波洋一代表(参議院議員)です。インタビュアーは福山真劫(市民連合事務局)です。

(福山)伊波議員の運動参加の原点はどのようなものですか。

【伊波】私は1952年生まれです。当時沖縄は米軍基地の島でした。1945年の沖縄戦では、私たちの集落も激戦地でした。集落の5割近くの人たちが亡くなりました。どこを見ても生活の中に米軍がいました。またベトナム戦争によって、米軍住宅がどんどん拡大してきて、私たちの集落でも空いている山などに住宅地が作られていきました。私は高校2年生の時に生徒会副会長をしていました。B52が嘉手納基地に落ちて、みんなで近くの小学校で開催された県民抗議集会に参加しました。それが当たり前だったのです。1969年、その時代は若い人たちの意識がとても強くて、社会問題が自分のことであると考えていた時代でした。その後労働組合運動に参加し、基地問題などに取り組み、県議会議員や市長などを務め、今日に至っています。

(福山)なぜ参院会派沖縄の風を結成されたのですか。

【伊波】沖縄には革新共闘の伝統がありました。しかしそのままでは国会でどの会派にも所属できなかったのです。2016年7月10日参議院選挙で私が当選して、糸数慶子議員と沖縄選出議員が2人になったのです。国会活動上のいろいろな利点があり、会派を作りました。沖縄の問題で一番大きなのは、やはり米軍基地問題、戦争の問題、平和の問題なので、そこに力点を置いています。

(福山)現在の運動状況と若者についてのどうお考えですか。

【伊波】少し見えにくいところがあるような感じがしますが、若い人たちが、彼らなりの良し悪しとか、あるいはその正義や不正という感覚を持っているのは確かだと思います。今年の2月26日に沖縄県庁前の県民広場で、ミサイル配備反対の集会が、およそ県内80団体の市民運動により行われました。若い人たちとシルバー世代の人たちが議論して、シルバーの言っていることはなかなか若い人にはわからないということを、面と向って言われ、せめて一つは自分たちの言葉を入れてほしいという声があって、若い人のスローガンを集会に入れました。それで大成功して、1600名集まり、デモ行進もやりました。今も、それなりの人数が集まってくるようなところには20代、30代の人たちが結構いい比率で入ってきます。更に去年の9月に行われた沖縄県での自治体選挙では、20代30代の若い女性市議、男性市議が結構誕生しました。そういうメンバーがこの運動に関わっていて、そういう意味では沖縄の地域運動の世代交代が、少しずつ行われ始めているような感じがします。

(福山)当面の沖縄の課題は何でしょうか。

【伊波】辺野古新基地建設反対運動では、キャンプシュワブ前の座り込みで、多くの市民が闘っています。また軟弱地盤の上に飛行場を作るというのは、技術的に不可能だと言われています。でも政府はその方針しかないからと、埋立工事を強行しています。たとえ辺野古の裁判で沖縄県が負けて、国が裁判で勝っても、結果的に飛行場は完成できないという意見が結構多いのです。

あまり注目されていませんが、米軍海兵隊が移転する先のグアムの基地の建設は完成しています。コロナ禍もあったので移転は遅れていますが、2024年から9000名の海兵隊とその家族が、そのうち海兵隊4000人がグアム、残りの5000人はハワイ、オーストラリア、そして米本土へ移転するという計画になっています。これで沖縄の基地の在り様がかなり変わってくるのではないかと思います。

南西諸島の自衛隊基地づくりは、要するにミサイル配備です。奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島、そして沖縄本島に地対艦ミサイルという敵国艦船を撃つミサイルを配備します。安保3文書では、この南西諸島の軍事化というのをきちんと計画しています。そういう意味で沖縄、南西諸島を台湾有事の際に日米の軍事拠点にしようと、日本政府は着実に動いています。

中国が台湾有事を起こすという宣伝が、日本国内に流れています。それで日本では、中国による台湾有事が差し迫っていると思っている人が多数です。それはちょっと違うかなと思います。中国は基本的に、建国百年の2049年までに自国の一部である、台湾を統一するのが目標になっています。めざしているのは平和統一です。台湾では、有事にはさせないという市民の運動がかなり強くあります。中国サイドもそうです。私たち沖縄の市民は、台湾、中国、それぞれの市民の平和運動と話し合いを続けています。

岸田さんの安保3文書には、アメリカを中心とする世界秩序が壊れていくという認識が書かれています。中国はいま日本のGDPの4倍に成長しています。アメリカの8割になっています。ここ4、5年程度で、アメリカも抜くだろう言われています。今アメリカにとっての関心は、中国がアメリカを凌駕する経済大国になっていくこと、軍事大国になっていくことです。そしてそれと対決することです。安保3文書はそれに対応する、まさに戦争計画です。そのことがほとんど理解されていないと思います。少なくとも日本にとっては、本当にプラスは何もありません。安保3文書で優先される「積極的な外交の展開」というのは、中国や周辺諸国に対する平和外交ではなくて、G7による中国を包囲するための外交なのです。

沖縄、南西諸島は中国に面しています。そのため台湾有事になれば、危ないと言われています。しかし今回配備されるミサイルは、全国に分散されます。戦争になれば、私は沖縄だけが集中して攻撃されるとは思いません。全国の米軍、自衛隊が敵国ミサイルの「標的」にされます。また、もし来年台湾の総統選挙で政権が変わって親中的になった時には、その状況は変わります。それでも日本の安保3文書は解消しません。本土は、また朝鮮半島といろいろな意味で距離が近い。極めて重い課題を担ったままになってしまいます。更にまた、アメリカにおいて、政権が変わり、万が一、米中が歩み寄りをする時のことも考えておかねばなりません。アメリカに従属、依存しないようにするために、自主的な外交が必要だと思います。

(福山)伊波さんのように状況を踏み込んで理解をしている人は、なかなかいないと思います。この状況をどうするかを含めて、総選挙をどう闘うかお聞きしたいと思います。

【伊波】グローバルな世界は、事実として、もうG7諸国よりBRICSなどG20諸国の方が、GDPが増えているのです。アジア、アフリカではG7は日本だけです。中国をはじめG7以外の国、特に周辺諸国と平和外交を強力に行うべきです。日米安保ではもうすでに、日本は守れないのです。中国が強くなっていて、日本は戦争になれば防衛しようがないのです。ウクライナのように米軍が、米国のための戦争を日本でやるだけです。日本防衛のためであっても、米軍は核保有国とは戦争をしません。私たちは基地負担に抗議して島ぐるみで運動を積み重ねてきた経過があります。だからいま、沖縄、南西諸島が軍事化されて、さらに戦争の危険も迫る状況で、それに抗して闘っているわけです。台湾有事に日本が介入すれば、日本本土も含めて戦場になる、ということを伝えているわけですけれども、どうも日本本土の側は、理解していないところがあると思います。安保3文書で日本が軍拡していくということは、「台湾有事」に外から加わっていくということではなく、それどころか日本を戦場に提供する、「日本有事」を引き受けることです。沖縄はずっとこのことを共有しながら、多くの立憲野党、市民の皆さんと共に平和運動、総選挙を闘いたいと思います。

(福山)現在は時代の大きな転換点です。沖縄での奮闘を期待します。ぜひ頑張って下さい。

【伊波洋一 参議院議員プロフィール】
1952年1月4日沖縄県宜野湾市生まれ。1974年3月琉球大学理工学部卒業後、宜野湾市役所入職。宜野湾市職労委員長、中部地区労事務局長を経て、1996年沖縄県議会議員(2期)。2003年宜野湾市長(2期)。2016年の参院選で初当選。2022年参院選で再選を果たす。外交防衛委員会、行政監視委員会に所属。これまでに政府開発援助及び沖縄・北方問題に関する特別委員会、国際経済・外交調査会、北朝鮮・拉致特、政治倫理・選挙特、皇室典範特例法案特に所属。