市民連合/立憲野党インタビュー
「第211回通常国会終盤を迎えて(2023.5)」
②日本共産党参議院議員 田村智子 さん
市民連合、立憲野党インタビューをお送りします。第2回目は、日本共産党参議院議員・田村智子政策委員長です。インタビュアーは菱山南帆子さん(市民連合)です。
【菱山】今日はありがとうございます。市民連合では悪法乱発の通常国会も終盤を迎えて、立憲野党各党にインタビユーをしています。よろしくお願いします。それでは最初に田村さんか政治に関わるようになった原点をお話しいただけますか。
【田村】核兵器への恐怖が原点です。小学生の頃、「はだしのゲン」や被爆者の方々が描いた絵で、被爆直後の惨状が脳裏から離れなくなりました。1980年代の核軍拡競争に私は絶望していましたが、反核運動の世界的な広がりなど、日本共産党を通じて初めて知り、核兵器禁止条約を求める署名に毎日のように取り組みました。いま、ウクライナの事態に、軍拡は仕方ないという諦めのような状況がありますが、「平和をあきらめない」ことが求められていると思います。
【菱山】なるほど。今、岸田政権は憲法改悪と同時並行で大軍拡を進めています。軍拡財源法案などもう隠しもしないで、なりふり構わず突き進んでいます。これに対して、終盤国会に向けてどうたたかっていかれますか。
【田村】衆議院財務金融委員会での法案採決をさせまいと、塚田委員長の解任決議案、、その後も鈴木財務大臣の不信任案など、国会内の野党共闘で審議日程は大幅にずれこんでいます。世論調査で軍拡のための増税に8割が反対、国民世論や運動が国会に影響を与えています。物価高騰での生活が大変なとき、ミサイルに巨額の税金を使うのかが、身近な問題になっていると思います。敵基地攻撃能力、その財源、武器産業支援、武器輸出など、憲法蹂躙の政治が一気に進んでいますが、これらが日本の在り方を根本から変えるという全体像を知らせたい。憲法についても、「9条改憲」や「岸田政権のもとでの改憲」には反対が多数です。平和国家という歩みを変えてよいのかを問いかけ、あらためて幅広い市民との共同を築いていきたいと思っています。
【菱山Jアラートとかもなるし、攻めてこられたらどうしよう、と不安感を持っている人たちに、どう説明していくかが課題ですね。
【田村】ミサイルに対抗してミサイルでは、相互の不信と不安を煽るだけです。真っ先に米国から購入したトマホークも配備は4〜5年後、3000㎞射程のミサイル開発は見通しすら立っていません。直ちにできることは外交しかない、これが現実です。中国との関係では、「互いに脅威にならない」という日中共同宣言を踏まえた対話が大切だと、共産党として、岸田首相と中国大使に提言しました。対立や紛争を武力衝突にしない外交こそ必要です。
【菱山】戦争は最大の暴力です。そして、その暴力の下にはたくさんの暴力が重なっています。田村さんにもきていただきましたが、私たちは「ウイメンズアクション」の街頭行動を続けています。そこで、社会的差別、DV、性暴力など、さまざまな課題を提起していますが、それらが差別排外主義と結びついていることを強く感じています。戦争を進めることと、差別排外主義の暴力とは、表裏一体ですね。
【田村】大切な問題提起ですね。分断、対立、憎悪を煽る、力で支配する、その最悪の結論が戦争であり、個人の尊重をないがしろにする政治ともつながっていると思います。対立を煽るのは古い政治であり、市民と野党の共闘は、これを乗り越える新しい運動として発展させたいです。
【菱山】私は海外の人と仲良くやっていきたいし、LGBTにしても若い人たちはすでに乗り越えています。しかし、自民党は入管法改悪にしても、LGBTをめぐるこの間の法案修正にしても、古いものにしがみつこうとしている。選択的夫婦別姓制度ですら反対です。それが統一教会のようなカルト集団と結びついているわけです。
【田村】統一教会は、古い政治の改革を妨害する攻撃部隊として、自民党が利用し温存してきたことは明らかです。反省も関係を絶つこともできないのは異常です。一方で、特に若い人たちの意識は「個人の尊重」という方向に大きく変わっていると感じます。入管法をめぐっても、連日、国会前に若い人たちの声が響いています。「外国人の人権を守らない国では、私たちの人権も守られない」、その通りです。入管法もLGBT差別禁止も野党共同で対案を提出しています。連帯して最後までがんばります。
【菱山】お願いします。このままでは、世界から日本は最低の国だと思われてしますます。コロナの対策を見ていても、アジア諸国の対策は優れているものが多く、そのようなものを学ぶべきなのに、アジアの中での優越感を保ちたいという古い考えにいまだにしがみついている勢力があるように思います。
【田村】賃金は上がらない、自治体では非正規雇用の75%が女性、年収200万円ほどの働き方を必然としているのは、「女性は家計補助」という構造が、経済・社会の行き詰まりをもたらしています。
【菱山】そのような中で、統一自治体選挙では日本維新の会が躍進したといわれています。大阪で維新がやったことはまさにこの間違った構造改革だと思いますが、どうでしょう。
【田村】維新政治は、新自由主義の行き詰まりに「怯むな、突き進め」というものです。選挙結果は厳しいものですが、一方で、大阪では、カジノやコロナ対策の失政など、これでいいのかという私たちの訴えに、かつてない手応えを実感しています。対話で知らせる、その力をもっとつけていきたいです。
【菱山】大阪での憲法集会には5000人の参加があったと聞いています。運動の方も、徐々に大きくなってきています、連携して進めていければと思います。それでは最後に、衆議院選挙も近いと言われている中で、みなさんにメッセージをお願いします。
【田村】 市民の要求運動こそが、国会での共闘、野党共闘を前へ進める力だと思います。インボイス中止、子ども予算の倍増、物価高騰から暮らしを守るなど、いま多面的な運動は各分野各地で起きています。これらの要求は大軍拡と絶対に両立しません。ジェンダー平等・気候危機打開など古い政治の矛盾と限界も明らかです。要求運動を広げて、立憲主義を貫く政策の一致点で気持ちのいい共闘をつくるよう、日本共産党も奮闘します。
【菱山】そうですね。自治体レベルでは、既に市民と野党の共闘がうまくいっているところもあります。そういったところの成功例も広げながら、私たちも共闘を進めていきたいと思います。今日はありがとうございました。
2023年5月17日@参議院議員会館/インタビュアー・菱山南帆子(市民連合)
【田村智子 参議院議員プロフィール】
参議院議員。日本共産党副委員長、政策委員長。1965年長野県小諸市生まれ。早稲田大学第一文学部入学、学費値上げ問題、核兵器廃絶運動などで学生の声を代表する論陣を張る。国会議員秘書などを経て2010年の参議院選挙で初当選。2019年「桜を見る会」について安倍晋三首相(当時)を質し、社会問題化させた。2021年の予算委員会で、コロナ禍で女性に困難をもたらしたジェンダーギャップを当たり前とする社会の構造的矛盾を変えるため、政策の根本的転換を求めた。2022年の予算委員会でも男女賃金格差の是正のため、国際的には当たり前の同一賃金同一労働とするよう求めた。愛称「タムトモ」