コラム

2023年統一地方選
女性の政治参画の新しい風 【2023.5】

希望を感じる結果

この4月に実施された統一地方選は、女性が躍進する選挙でした。女性候補者・当選者数が過去最多となり、各地で女性たちが上位当選しています。女性議員を求める機運が確実に高まっているのを感じさせる結果でした。

数字を振り返ると、道府県議会の当選者に占める女性割合は平均で14.0%、市議会では22.0%、東京都特別区(葛飾区・足立区を除く21区議会)で36.8%、町村議会で15.4%となっています。東京の状況は3割、4割が普通ということですから、やはり変化を感じます。

また男女同数か女性が過半数の議会も複数誕生しました(千葉県白井市、兵庫県宝塚市、東京都杉並区、埼玉県三芳町、愛知県日進市、東京都武蔵野市、大阪府忠岡町、奈良県三郷町、北海道新十津川町、東京都清瀬市=統一地方選後半戦で女性割合の高い議会順)。広範な地域で誕生している点も興味深い点です。

女性首長が増えた点も今回の特色でした。選挙前の女性首長割合は約2.5%。本当に女性が少ないのです。1年前に杉並区で岸本聡子さんが当選したことが、多くの女性の挑戦につながったのではないかと思います。女性区長は豊島区、北区、江東区で3人誕生し、東京23区の区長は6人が女性となりました。市長では全国で7人の女性が当選を果たしています。

残念ながら知事や政令指定都市の首長は全て男性でした。女性知事は歴代でも7人しかまだ誕生していないのです。男性政治の牙城ともいえるのが知事や大都市の首長です。女性議員のプールが国政・地方議会で厚く形成されることが、壁を打ち破るためには必要でしょう。

私が今回の選挙結果を見て意外に感じたのは、鹿児島、香川、岡山の県議会で女性割合が2割を超えたことです。これまで都道府県議会で2割を超えていたのは、3割超の東京都議会と2割の京都府議会の2つしかなかったからです。香川は2人から9人へ、鹿児島は5人から11人へと急増しています。ほかにも、岡山は8人から12人へ、青森は3人から7人へ、山形は2人から6人へ、大阪が6人から13人へ、熊本が1人から5人へと急増しました。首都圏・近畿圏でなくても女性が増えた県がある点で画期的といえるでしょう。他方で、新潟、滋賀、徳島の県議会では女性議員が1人減り、京都、神奈川を含む8つの府県議会では現有議席から変化はありませんでした。女性が急増した地域と後退した地域に二極化した結果となっています。

女性たちのネットワークが鍵

今回の結果が示すのは、女性は選挙に出たら強いということです。有権者が今の政治に閉塞感を感じ、変化を求めているのではないかと思います。まだまだ女性が少ない現状下では、女性が新しい政治をもたらすのではという期待が女性候補者たちに寄せられているのではないでしょうか。

このように考えると、女性候補者を増やしていけば、女性議員は確実に増えていくことがわかります。女性議員が減ったり、ほぼ変化のなかった自治体では、女性候補者が出にくい環境にあることが伺えます。逆に女性が急増した地域では何が起きたのでしょうか?

ヒントになるのは、そうした地域では女性のネットワークが作られ、女性候補者を発掘したり応援したりする活動があったという点です。「鹿児島県内の女性議員を100人にする会」、「くまもと女性議員の会」、「福岡・女性議員を増やす会」、東海地方の「女性を議会に!ネットワーク」などの活動が成果につながったと考えられるからです。

1999年にも統一地方選で女性議員が急増をしました。この時には、1995年に北京で開催された世界女性会議に参加した女性たちを中心に、全ての都道府県で女性候補者のためのバックアップスクールが誕生したと言われています。こうした草の根の女性たちのネットワークと支援を背景に女性議員が増えたのですが、2000年代に入ると保守派からのバックラッシュ(男女共同参画行政への反動)が湧き起こり、女性たちの活動も制約されていきます。このことがその後の停滞を生んでしまいました。

つまり、歴史から学べることは、女性の草の根ネットワークをもっと各地で広げていくこと、そしてその活動が持続するよう横の連携を作り出し、好事例を共有し、バックラッシュが来たときに効果的な対応が取れるよう知恵を絞っていくことではないかと思います。

支え手を広げよう

女性ネットワークが鍵であるというということが何を意味するのかというと、支え手の層を厚くすることが重要だという点です。そもそも選挙ボランティアは不足していますが、女性のボランティアはさらに少ないのです。特に女性候補者の場合は、ボランティアに中高年男性が目立ってしまうと、本人も苦労するでしょうし、有権者から見ても違和感を感じることになるでしょう。

こうした背景から、女性ボランティアを広げる試みが出てきたことは特筆すべき動きです。Stand by Women代表の濵田真里さんはわかりやすい「選挙ボランティアのしおり」を作製し、20代・30代の女性議員を増やす活動をしているFIFTYS PROJECT(代表:能條桃子)も候補者支援の一環として候補者ボランティアを募集していました。私も授業やゼミで選挙ボランティアを経験してみることを促したところ、何人かが実際に初めて体験することにつながりました。感想を聞いてみると、チラシをなかなか受け取ってもらえないので、街行く人をよく観察して配るように工夫したとか、街の練り歩きへの有権者の反応が楽しかったなど、政治への関心が俄然高まったのを感じます。学生時代に選挙ボランティアをすることがもっと当たり前な社会になってほしいと思います。

支え手というのは選挙だけの一過性のものではありません。困っていることや解決してほしいことを伝え、そして当選した議員が議会でどのような発言をしているのか、自治体のためにどんな働きをしているのかをチェックしていくことが大切です。地方議会は国政以上に有権者の関心が向いていないのが実情です。メディアの報道量も少ないのです。となると、議員の発信力と市民のアクションに期待するほかありません。応援した議員が何をしているのかを気にかけ、何をしてほしいのかを伝える市民が増えることが民主主義を機能させるのです。そうした能動的な市民が増えるための仕掛け作りが広がることを期待しています。

三浦まり(上智大学教授)