ひろば

【報告】わたしたちの“あんぽ”を考える緊急市民集会
2023年1月23日 @連合会館2階

去年の12月、政府は「敵基地攻撃」を認め、軍事費を倍増させる外交安全保障上の大転換を閣議決定しました。しかしこの決定は、ほとんどの憲法学者が反対した2015年の安保法制(戦争法)の強行採決に続き、“戦後平和主義の死刑宣告”ともいえる内容です。そして依然として、国民的な議論がまったくなされていないという最大の問題を抱えたままです。

この1月23日の市民連合「緊急集会」は、今、すべての市民がいっしょになって智慧をしぼり、「わたしたちの“あんぽ”」を考える時だ、という切迫した問題意識から開催されました。市民連合として、政府決定に対する“応答”の第一弾、これからの「2023年安保」に向けたキックオフ集会です。限られた時間にもかかわらず、安保問題に関する包括的な争点の見取り図が提起され、今後の安保議論の礎となる密度の濃い内容になっています。

まず、新外交イニシアチブ代表の猿田佐世さんと平和構想提言会議共同代表の川崎哲さんによる、平和のための「対抗構想」が示され、政府の安保政策が何よりも政治的な「リアリズム(現実主義)」に基づいていないことが明らかにされました。軍備の増強や「抑止力」によって本当に平和は実現するのか、政府の言う「安全保障」は、日本国民の「安全」を本当に「保障」するものなのか、実際は、軍拡によって、かえって米中の軍事紛争に巻き込まれるのではないか、といった私たちの素朴な不安が、どれも的を射たものであることが逐次明らかになりました。「自発的な対米追従」によって米中の対立構造に巻き込まれるのではなく、新時代に向けたより創造的な外交の可能性が提起されました。

  

また、それを受けて、成蹊大学の遠藤誠治さん(国際政治学)と上智大学の中野晃一さん(政治学)によって、今後中国との「共通の安全保障」をより具体的に追求すべきことや、気候危機を前提とした惑星レベルの安全保障の重要性、あるいは、外交安全保障政策の深層にある政策エリートたちの「アジア蔑視」といった問題など、より包括的な論点が浮かび上がりました。

  

さらに、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組のすべての立憲野党の国会議員も参加し、石垣のりこ、山添拓、くしぶち万里、福島瑞穂、伊波洋一各氏より、衆院の国会議論を踏まえたコメントがなされました。「専守防衛」と「敵基地攻撃」との論理矛盾をことごとくごまかして強弁する政府の姿勢が批判され、日米同盟が沖縄(南西諸島)にとって持つ真の意味、また、世界を覆う軍事経済の問題なども議論されました。また最後には、フロアからも、立憲民主党の打越さくら、米山隆一各氏をはじめ、熱い意見が出されました。

   

  

  

単に日米軍事同盟のみに依拠した安全保障政策は、限界を迎えています。国民の生活や生命に直結する安全保障問題を、一部の「外交安保ムラ」に任せ続けるのはあまりに危険であり、市民がそのオルタナティブを下から構想しなければならない時代を迎えています。市民連合は、これを契機に、さらに市民発の新しい外交安全保障像を模索していきます。

佐々木寛(新潟国際情報大学教授/市民連合@新潟共同代表)

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