地域から

福岡市長選挙に関わって  2022年11月28日

最初に、福岡市長選挙へのご支援・ご協力、有り難うございました。

「市民連合ふくおか」は、福岡県内の市民連合その他の諸団体のネットワーク組織です。ですから、これを母体にして、福岡市長選挙を戦うことはできないので、まず有志として会議の招集を行いました。その結果、一部政党も関わる、労組、市内各地で活動している市民団体・個人らが幅広く結集する形で結成されたのが「福岡市から政治をかえる会」(以下略称を使用「かえる会」)でした。「市民連合ふくおか」「選挙に行こう1区市民連合」も、途中から参加団体となりました。

「かえる会」は、8月以来の議論をへて、9月10日(土)に、基本政策8項目・内定候補を決めました。しかし、数日後に、立憲民主党所属のベテラン市議の田中しんすけ氏(44歳・4期目の途中で辞任)が立候補を表明したことから、数回にわたる協議を経て、10月8日(土)に、内定候補引き下げ、基本政策8項目について協定を締結、選対についても別選対で情報共有しながら運動を展開することとする合意を得て、10月11日(火)より田中しんすけ氏を野党統一候補として戦うことになりました。

【基本政策8項目】

①大企業中心の大型開発を市民中心で見直します。

 ②市民の生活を底上げし、市民が元気な街にします。

 ③ジェンダー平等を推進する施策を行います。

 ④社会で出産・育児を支え、子どもの権利を大切にする社会をつくります。

 ⑤気候危機対策を積極的に進めます。

 ⑥コロナ・感染症対策を充実させます。

 ⑦都市外交により、東アジアに非核平和地域をつくります。

⑧日本国憲法の精神を生かして課題ごとに、市民による施策の提言・意見交換の場、施策検証の場を設け、市政に反映させます。

田中しんすけ氏は無所属で立候補を表明し、所属会派の関係から、立憲民主党・社会民主党・国民民主党の3党と連合福岡が推薦しました。別選対である「かえる会」には、市民団体を介する形で日本共産党が支援、れいわ新選組有志も参加、地域からは、ふくおか緑の党・市民ネットワーク福岡・市民政治ネットワーク福岡城南も結集。結果として、田中しんすけ氏を支える政党は、国政5党・地域政党3党の合わせて8党になりました。「かえる会」には約60の諸団体が結集しており、田中しんすけ氏は、1972年に福岡市が政令都市となって以来初めての全野党結集の候補者となりました。田中選対とは別に、「かえる会」の選対は、できることは何でもすると いう精神でフル活動しました。下記の集会もその一つです。

11月15日(火)夜開催の集会映像のダイジェスト版(中野晃一先生の講演も実施)

 

対する現市長の高島宗一郎氏は、48歳ですが、すでに3期12年にわたって市長を続け、今回の挑戦は4期目でした。第2次安倍政権が長く続いたことで、戦後民主主義の残っていた良さが破壊し続けられたように、福岡市政においても、市役所上層部の高島市政に対する忖度は目に余るものがありました。多選批判は当然です。しかし、高島市長は、九州朝日放送(KBC)の元人気キャスターで、そのパフォーマンスは抜群です。さらに、安倍元首相が亡くなるまでは、安倍晋三氏・麻生太郎氏と懇意にしていたことを売りにして、政府の目玉政策を先取りして福岡市で実施、成果を上げたとして支持を得るといった手法をとっていました。当然、地元の財界・医師会などからの支持も厚いです。安倍氏の死によって今回は手法を変更し、来春に市議選を控えた自民・公明・維新の福岡市議団(全議席数の2/3を占有)と結んでの選挙戦を展開しました。もう一つの特徴は、「ステルス戦法」で選挙戦を盛り上げない、争点隠しをするというものでした。

結果は、以下の通りです。投票率の伸びが少ない、田中しんすけ氏の集票が伸びなかったと、厳しい結果に終わりました。

【投開票の結果】

★投票率34.3%(前回に比べ2.9%伸び、期日前投票は1.5倍に増えた)

★高島宗一郎氏  329606票(得票率74.9%)  前回は285435票(73.1%)
   田中しんすけ氏  96408票(得票率21.9%) 前回の共産単独推薦候補は 94437票(24.2%)

福岡県は、元々保守層が強い地域で、福岡市にあたる衆議院の福岡1区~3区は、2021年衆議院選でも自民党候補3人が当選し、独占しています。また、投票率も全般的に低く、2021年衆院選では47都道府県のなかで45位(54.39%)、2022年参院選では35位(48.76%)でした。そんな中での1政令都市での市長選です。高島市長の岩盤票28万票前後を上回るためには、投票率が少なくとも40%台半ばにならないと、非常に厳しい戦いであることは予想されていました。ですから、「かえる会」選対は、前にも記しましたように、田中しんすけ氏の名前と政策を少しでも広げる、投票に行こうといった運動を、とくに選挙期間中は強めました。

田中氏の演説も、選挙期間中には熱を帯びるものとなり、高島市政の目玉であった「天神ビックバン(経済特区の指定をうけ、高さ規制を緩め、数年間に少なくとも30棟のビル建て替え工事をするもの)」を批判し、トップダウン型の政治から対話集会を開くなどしてボトムアップ型の政治をめざそうとするなど、次第にその主張が明確になり、政策を知った市民からの反応はすこぶる良かったようです。

しかし、結果は厳しいものでした。

敗因は一言でいうと「時間不足」です。田中しんすけ氏の立候補表明が、11月20日(日)の投開票日の2ヶ月前、戦う枠組みができたのが10月半ばの1ヶ月前、28万票前後の岩盤票を持つ高島市長に対抗するには時間が足りなかったということです。と同時に、「天神ビックバン」などの高島市政の問題点を市民の間に浸透させるには、数年間の蓄積が大切であり、数ヶ月では無理だったということかと思いました。高島市長側の巧妙な戦いぶりもありましたが、高島市政の問題点を、私たちが市民に広げることができていなかったことが、分厚い壁の打破に至らなかったということです。

投票率については、目標とする数値にはほど遠いものでしたが、前回の2018年と異なり今回の市長選はコロナ禍で全国的に投票率が低迷する中での市長選です。ですから、仮定の話にはなりますが、「かえる会」の活動がなければ、投票率は20%台に留まった可能性が高く、頑張った成果もあるのかなと思っています。

「かえる会」選対はフルに動いたと思います。田中選対より依頼された事も引き受け、田中選対を補った部分もありました。そうした活動を通じて、とくに立憲民主党の福岡市議団との関係は良好なものになったと思います。また、新聞報道が、選挙戦が始まる前後から変化し、高島市政に対する批判も交えた報道をされるようになりました。ただ、現在の新聞購読者は、年齢が高い層に偏っていて、新聞・テレビの報道を通じて世論が大きく動く時代ではありません。そのような難しい時代状況の中での戦いであり、現職であり個人人気を誇る高島市長に対抗するためには、話題性の高い材料がもっと必要だったのかなと思いました。SNSも活用しましたが、市民のどこまで届いていたのか? 疑問が残ります。

反省点は多々ありますが、①野党共闘を進展させることにはなりました。②市内で計画されている諸問題、例えば海の中道海浜公園で計画されているIR(カジノ)事業や乱開発による小・中の過大規模校の問題など、明らかにしました。③新聞などマスコミとの良好な関係も構築できました。④独立した選対として、選挙戦を戦った経験は貴重です。

先日開いた「かえる会」の総括会議では、会を存続させること、高島市政の検証を行い広げることで4年後の市長選に臨むことなどを確認しました。そして、こうした蓄積は、来春の統一地方選、さらには国政選挙にも生かせるものだと思っています。

文責:片山純子(市民連合ふくおか事務局長)