コラム

改正障害者雇用促進法の課題と私たちの取り組み-重度障害者の雇用を進めるために-/DPI日本会議・西村正樹副議長

改正障害者雇用促進法の課題と私たちの取組み

―重度障害者の雇用を進めるためにー

障害者雇用は、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度を基本として一定規模の従業員を雇用する民間企業や中央省庁及び地方自治体といった公的機関に対して、従業員数に応じて障害者雇用を義務付けている。この法定雇用率(以下、雇用率)は、2021年3月31日現在、民間企業2.3%、国や地方公共団体2.6%、教育委員会2.5%に設定されている。

認定法人NPO法人「DPI日本会議」 西村正樹副議長

民間企業が雇用率未達成の場合は、不足する障害者数1人に対して月額5万円の納付金が義務付けられており、この納付金は、雇用率を達成している民間企業で働く障害者の職場環境の整備等を進める調整金等として支給することにより雇用率達成企業の経済的負担を軽減している。また、雇用率未達成が改善されない場合は、ハローワークからの指導を経て、最終的には、企業名が公表される。

一方、公的機関には、民間企業に課せられている納付金に準じる制度はないが、雇用率が未達成の場合は、民間企業と同様に適正実施を勧告される。なお、全ての公的機関の障害者の雇用状況は、公表されている。

しかし、公表されてきた公的機関の雇用率については、2018年8月に中央省庁が障害者の雇用数を水増ししていることが発覚し、それまで公表されていた雇用率が虚偽であることが露見した。その後、同様の問題は、地方自治体でも行われていることが判明し、私たち障害者雇用の促進に取り組む団体や個人をはじめ社会全体に大きな衝撃を与えた。公的機関は、民間企業に対して、垂範して障害者雇用を促進すべき責務を担う立場であるにも関わらずに起きたこの不祥事は、公的機関の信頼を大きく損なう極めて深刻なものであった。

その後、雇用率を達成するために2019年度中に4,000人の障害者雇用を進める方針を厚生労働省は示した。しかし、財務省が告知した「事務補助員の募集」の応募資格には、「自力により通勤ができ、かつ、介護者なしで業務の遂行が可能であること」と定めていた。これと同様の制限規定が、他の省庁及び地方自治体においても明記されており、法制度の立案及び施行を主要業務としているはずの公的機関が障害者権利条約や障害者雇用促進法といった法令を遵守していない状況が明らかとなった。

私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害当事者運動として雇用・労働分野も含めて、社会の全ての場面で障害の種別や程度に関わりなく障害者が排除や取り残されることなく、障害のある人もない人も共に生きることができる社会の実現に向けた活動を進めてきた立場からこの問題に対応してきた。具体的には、声明を出すとともに、中央各省庁、全国知事会、市長会及び町村会に抗議文と改善要望を提出した。これらを受けて、現在、国や地方自治体は、制限規定を削除している。

2019年6月、中央省庁による障害者雇用の水増し問題を受け、再発防止策を盛り込んだ改正障害者雇用促進法が可決・成立し、2020年4月から施行された。この改正にあたって、私は、衆議院厚生労働委員会の参考人質疑で、参考人の一人として障害者雇用に関する課題を提起した。その結果、発言内容については、附帯決議として盛り込まれることになった。

附帯決議は、衆議院で10項目、参議院では15項目が決議されており、障害者が働くため、働き続けるための課題のひとつとして、雇用施策と福祉施策の一体的展開の推進を速やかに整備することで、必要な支援等がないために働くことができない障害者の置かれている現状を改善し、通勤や職場において介助者等を必要とする障害者への支援を確保することを求めている。

その後、厚生労働省は、2020年10月に「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」を示すとともに同年11月以降、雇用施策と福祉施策の更なる連携強化に向け、必要な対応策のより具体的な検討が進められ、その結果は、今年の6月に報告書として公表された。今後は、具体的な制度としての充実が期待される。

こうした経過を踏まえ、私たちは、一般就労を希望する介助等の人的支援を必要とする重度障害者の一般就労を実現し、安心・安全に継続して働き続けることができるために必要な制度として、雇用施策と福祉施策の支援制度をシームレスに利用でき、重度障害者が一般就労できるための制度の整備についての議論を深め、障害者雇用の推進に貢献することを目的とするフォーラムを7月30日(土)にオンラインで開催することとした。

関心のある方は、是非、参加をお願いしたい。

▽HPでの案内はこちら

https://www.dpi-japan.org/blog/events/2022_labor_forum/

【西村正樹副議長・プロフィール】

1958年 北海道網走市生まれ。1979年 大学3年生時に交通事故により車イス生活となる。1981年 北海道庁に就職(2017年退職)。1996年DPI日本会議副議長に就任。2003年自治労障害労働者全国連絡会代表幹事に就任(2012年退任)。2010年内閣府障がい者制度改革推進会議差別禁止部会構成員に就任(2013年退任)。2011年自治労中央本部執行委員に就任(2015年退任)。2017年 社会福祉法人アンビシャスに就職し業務執行理事・総合施設長に就任(2022年退職)した。