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市民連合/立憲野党インタビュー【2022参院選をかく闘う】(3)社会民主党・服部良一幹事長 【2022.6】

市民連合、立憲野党インタビュー【2022参院選をかく闘う】をお送りします。第3回目は、社会民主党・服部良一幹事長(前衆議院議員)です。インタビュアーは福山真劫(市民連合事務局)です。

(福山)今回は服部さんが、政治家になろうとした動機や、原点や目的などを教えてください。

社会民主党・服部良一幹事長

(服部)元々私は機械メーカーで33年間働いていました。政治家になろうとしたきっかけは、元参議院議員の山内徳信さんが、2007年の参議院選挙全国比例で社民党から出馬される際に、応援したことに始まります。それまでは政党とは距離を置いて、市民運動や中小企業の労働運動などを中心に活動していましたが、私も大阪選挙区で立候補することになり、始めて社民党に入党して選挙戦を戦いました。その後、2年間山内徳信参議院議員の公設秘書を務め、2009年の民主党連立政権発足時の衆議院選挙に出馬し、当選させて頂きました。これが政治家になった経緯です。

私は1969年京都大学に入学したのですが、その当時は学生運動が盛んな時代で、全学封鎖で授業が全くないという時代でした。私はクリスチャンで田舎の牧師から京大のYMCA地塩寮を紹介されて入寮したのですが、そこも学生運動の拠点でした。しだいに周りに感化され、大学2年生の時には退学して大阪の西成に引っ越しました。そこで地域の差別の問題や、中小企業の労働運動に尽力しようと思い地域運動を始めたというのが、私の活動の原点です。

(福山)社民党は、2019年の参議院選挙後、当時の枝野立憲民主党代表の呼びかけで立憲に合流する人たち、社民党に残る人たちそれぞれいたと思います。服部さんは幹事長になられて、こうした動きにどう対応されましたか。

(服部)私は沖縄とのかかわりが多く、平和で基地の無い沖縄を目指す立場です。立憲民主党の綱領には日米同盟を基軸にしている部分があり、日米安保条約や日米同盟を基軸にするという考え方に私は同意しかねます。この点が、私が社民党に残った理由の一つです。その後社民党の再生に向け活動するわけですが、想定外にも幹事長を務めることにもなりました。

活動で全国を回ると、活動家の多くが、高齢化しています。若い世代の雇用の問題や、将来への不安などをアピールしているのですが、実際にはなかなかその世代に届いていません。若い世代に社会民主主義をどうつないでいくのかが、大きな課題だと言えます。

(福山)日本の現状と、直面している課題について社民党はどう考えていますか。

インタビュアー・福山真劫(市民連合事務局)

(服部)社民党は今回の選挙には政党要件がかかっていますし、この参議院選挙が終わったら改憲の可能性が非常に高い情勢になっています。もし社民党が政党の要件を失うと同時に憲法が変わる、国民投票が実施されるということになれば、これはある種、戦後の政治の一つの象徴的な転換点になる可能性があると思っています。現在の日本の政治の最大の危機は、いわゆる立憲野党に求心力ではなく遠心力が働いていて、野党から与党に入りたい人やすり寄りたい人が出てきてしまっていることです。その分憲法の危機が高まっています。

(福山)今の状況は安倍元総理が憲法の内実を空洞化させてきて、次の黄金の3年と言われている期間に憲法そのものを変えてしまおうという場面に直面しているということですか。

(服部)岸田政権発足当時は新自由主義政策からの転換についても触れたりリベラルな政策に期待したのですが、現実には、麻生さんや安倍さんの力を借りないと総理大臣になれないということもあって、安保政策は軍備増強、経済政策も中身のないものになってしまっています。そして岸田政権での改憲の可能性が高まっています。安倍さんや日本維新の会などは改憲を煽っていますが、まだまだ9条改憲を止める日本の良識というのは、私はあると思っていますので、いまが頑張り時ではないかと見ています。

(福山)日本は戦後80年弱となり、憲法体制が出発して作り上げてきた平和と民主主義の力というのはそう簡単に壊されるような単純なものではなく、抵抗勢力あるいは平和・民主主義・憲法を守ろうという勢力もまだまだ頑張っています。社会民主党が自公政権に変わって、政権を獲得する基本戦略はどうなりますか。やはり野党共闘というような形でしょうか。

(服部)この間の野党共闘に対するネガティブなキャンペーンがありますが、お互いの政党の政策が違うのは当たり前です。政策が全く同じなら同じ政党になれば良いわけで、歴史も理念も当然異なります。今日本はアメリカと共に戦争をできる国に舵を切ろうとしています。そういった日本の方向性に反対するのか、あるいは税金は基本的に暮らしに使うという平和国家としての道を選択するかという大きな分かれ道にあり、最大公約数的にいくつかの政策で野党がまとまっていくというのは、今の日本の力関係から見て当然だと思います。野党は、明確な強いメッセージを出していくべきです。

社民党の役割は、期待感の持てる野党共闘にするために努力し活動することに存在意義があります。去年の衆議院選挙、今年の参議院選挙では、野党に遠心力が働いてまとまりがない中で、市民連合の方々は非常に苦労されてきたというのは強く感じます。

自公政権の軍事強化が国民に対する説明も国会での議論などもないままに進んでいっているということが、今の日本の極めて危機的な現状です。国民の中には今色々な不安が渦巻いていると思います。だからこそ、市民連合や野党共闘の役割は今まで以上に重要です。結局野党側の問題としては、野党はいったい何をしたいのかというのが見えてなさ過ぎるところにあると思います。

(福山)今の情勢や様々な世論調査を見ていきますと、岸田政権の支持率というのは60%の横ばい、自民党の支持率はなかなか下がらないというのが現実です。そこでどうやってここから巻き返していくのか、社民党の選挙政策などをお話しいただけますか。

(服部)今までの日本は専守防衛で憲法9条があるということで、戦争をしない国であるとアジアから見られていました。今の自民党の「戦争する国へ」政策が進んでいけば日本は明らかにターゲットになり、一歩間違えば戦場になるという流れに今はなっています。それと同時に国内の生活格差はますます深刻になっていて、江戸川区の引きこもりの調査では40代の中年の引きこもりの割合が17%ほどだといいます。これはおそらくロストジェネレーションという、非正規労働を渡り歩いた世代の実相ではないかと思います。日本の生活実態は非常に深刻になっていると思います。昔のような経済大国・総中流日本というのは崩壊していて、この平和とくらしという二つの要素から日本の今後の在り方をどう考えていくのか、どう制度設計していくのか、今非常に大きな分かれ道に立っているというように思います。

党の政策は、9条改憲を許さないこと、とにかく戦争はしない、させない、外交で平和を作るということをがんこに訴えていきます。戦争のリスクが一番高まっているのが今だと思います。そういったことを今回の参議院選挙の最大の争点としながら、一方で本当に食べていけないというか生活の見通しが立たない方が大勢いらっしゃるわけですから、そこに対する大胆な経済政策というのは必要になってきます。そこで大企業の内部留保に課税し3年間消費税ゼロを打ち出しています。

得票率2%、120万を最低のラインとして、二人の当選を目指して頑張っていきます。著名人の共同テーブルは社民党応援団だという方もおりますが、必ずしもそういう狭い枠ではなく、今日の日本の政治に危機感を持っている方々が大勢集まっていらっしゃいます。

今回の選挙で社民党としては、「がんこに平和!くらしが一番!戦争はさせない!」をキャッチコピーにしています。この「がんこに平和」というのは土井たか子さん時代のフレーズです。社民党が残ることによって、来る憲法9条改憲を阻止する国会での論戦はもちろんですが、市民運動や大衆運動で市民連合の皆様と一緒に役割を果たしていけるのではないかと思っています。

(福山)ぜひ参議院選挙を頑張って頂きたいと思います。ありがとうございました。

(6月13日、参議院議員会館)

 

【服部良一幹事長(前衆議院議員)プロフィール】

1950年、福岡県八女市に生まれる。1969年、京都大学法学部入学(のち中退)。1971年大阪市西成区に移住し地域運動に関わる。1973年~ 大阪市内の機械メーカーに就職、         労組委員長を16期17年務める。2回の会社倒産から2回の再建を勝ち取る。1996年神戸淡路大震災被災地のつどい実行委員長(通算16年務める)。2007年、参院選大阪選挙区に立候補・惜敗、山内徳信参議院議員公設秘書に。

2009年~ 衆院選近畿比例区で当選(1期3年3ケ月)、議院運営委員会・外務委員会・海賊テロ対策特別委員会など所属。2012年・2014年衆院選に立候補・惜敗。2017年衆院選大阪9区野党統一候補で闘うも惜敗。2020年12月~社民党幹事長就任、選対委員長、政策審議会長など歴任。2022年参議院議員選挙(東京選挙区)に立候補。