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市民連合/立憲野党インタビュー【2022参院選をかく闘う】(2)日本共産党・田村智子副委員長【2022.6】

市民連合、立憲野党インタビュー【2022参院選をかく闘う】をお送りします。第2回目は、日本共産党参議院議員・田村智子副委員長です。インタビュアーは上智大学・中野晃一教授(市民連合事務局)です。

(中野)早速ですが、総理が岸田さんに代わって、自公政権の何が変わったのか、何が変わってないのか、田村さんがお感じのところをお聞かせください。

(田村)岸田政権に変わる直前というのは、安倍政権や菅政権がしてきたことに対する批判的な世論が相当に強くなっていたと思います。なので、岸田さんは総裁選では大きな方向転換を図るメッセージばかり発していました。しかしその後、岸田さんは何ら方向転換できない総理だということが国会の中で明瞭になりました。驚いたのは今度の骨太の方針で、結局アベノミクスの三本の矢は堅持するし、所得倍増と言っていたのがいつの間にか持っている貯金を株に投資しろというので、これでは安倍元首相がやっていた株価第一主義と変わりません。

日本共産党参議院議員・田村智子副委員長

(中野)有権者にその実態が伝わりにくい理由としてはどのようなものがありますか。

(田村)岸田総理は言葉が丁寧で言葉数も多いのですが、答弁はどの質問に答えているかもわからないほど、不明瞭だと感じます。一問一答の予算委員会で、逃げを許さない論戦がもっと求められていたと思います。通常国会は予算委員会の回数も少なかった。野党が一丸となって対峙したか、反省的な分析が必要だと感じますね。野党合同ヒアリングは、批判はいろいろあったにしても、重大な問題が起きたときには、連係して、曖昧にすることを許さないぞという国会からの強い発信になっていたわけです。それが一切なくなってしまっていいのかと思います。

 (中野)結局誰のための政治なのかということですよね。国会の中でこれだけ代表性が歪められている中で、どこまで私たち国民の立場から追及してくれるのか、政策を変えていってくれるのかというのを有権者は見ていると思います。

(田村)喫緊の課題で一致できるところでは一致し、対決しなくてはならないところではしっかり対決して課題に迫っていくという姿勢があってこそ、国民の側も国会が何かやっているぞというふうに見ますからね。私たちも引き続きそういった共闘ができるように頑張っていきたいと思います。

(中野)昨年の衆議院選挙では自民党が議席を減らしている一方で維新の会は議席を伸ばしました。維新の会についてはどうご覧になっていますか。

(田村)国民が求める「改革」の期待感が維新の会に集まっていますが、その改革の中身は実現不可能だと思いますし、実現の根拠も曖昧です。例えば、規制改革をすればあたかも非正規雇用で苦しむ若者が救われるかのような論を展開しています。こうやって高齢者対若者、正規雇用対非正規雇用の対立を煽るわけですが、正規雇用まで不安定化してしまったらそれは国民労働者の全不安定化でしかなくて、それで非正規雇用の人が正規雇用になれるかといったらそうではないと思います。こういった危険な議論の本性をいかに国民に知らせていくのかというのも課題です。

(中野)そうした政策が言いっぱなしになっている一方で、それがメディアの取り上げ方などによっていわゆる提案型というか、実際に根拠はなくても地方では成果を上げているというようなニュアンスで言われて、それに対して共産党などの野党は反対しているだけだというような言説がかなり広がっているように思われます。その辺りのことに対して対抗策はありますか。

インタビュアー・中野晃一(上智大学教授/市民連合運営委員)

(田村)やはり今消費税減税の法案を野党が一致して出せているということは歴史的に見ても極めて重要だと思います。税収の大きな柱である消費税をどうするのかという点での一致というのは、ある意味税制改革の大きな方向で自公政権とは違ったものを出せているというのを示すことができます。

(中野)ジェンダー平等についても、選択的夫婦別姓など、国会で、また選挙に際しての政策合意など野党が一緒に取り組んできました。

(田村)選択的夫婦別姓や女性の候補者議員の比率ということがここまで国民の関心事になり、選挙の争点の一つにすることができたというところは市民と野党の共闘の前進です。男女の賃金格差の問題も私たちが質問し続けてきたら、企業に対して公表の義務付けるというふうに政治が動くわけですから、この分野はもっと動かせますね。痴漢ゼロというのが男女共同参画局の中で重要な政策の柱として取り入れられたことも含め、特に性暴力とか性教育、セクシャル教育あるいはリプロの問題があります。

(中野)今回の政策要望で四つの項目のうちの一つがジェンダー平等を含めた人権についての徹底的な尊重。他にエネルギー転換と気候変動についての対策、平和国家路線の堅持、そして暮らしや命を守る政策ということでできました。

(田村)子どもの権利条約がやっと国会の中で正面から議論できるようになりました。これは野党側の考えである、個人の尊厳を大切にする日本の社会が必要であり政策の転換が必要だという立場に立っての論戦というのが、与党や政府の側を少しずつ動かしつつあります。同時に今、安全保障分野にかかわって、大軍拡という方向性をこれだけ自民党や日本維新の会が示しています。この野党共闘の原点であるところの、安保法制のもとでのこの大軍拡がいかに危険なものであるかということを野党が率直に議論しどう対抗するべきかの結論を出すことは非常に重要であると言えます。安保法制のもとでは日本が攻撃もされていないのに戦争に巻き込まれてしまうわけです。それがいかに危険であるかというのを警鐘乱打して、真に戦争を起こさないために日本の安全保障はどうあるべきか、議論を深めたいです。

(中野)今年100周年を迎える日本共産党は、何を守り、またどう変わっていくとお考えですか。

(田村)資本主義社会がもたらす害悪に対して決して目をそらさずに、それを自己責任にせず、仕方がないことにもせず、今それと戦って将来この資本主義を乗り越えた先を目指しているというのが共産党のアイデンティティであり、これは大切にしていかねばならないと思っています。また発展的にということでいうと、私たちは現実的に政権参加を視野に入れて共闘に踏み出しました。どうやって国民多数の合意形成をしていくのか、そのときの政策を日本共産党としてどうやって打ち出していくのか、特に安全保障の分野で自衛隊の問題など様々な疑問が出されたことを考えてみても、そこは党内で率直に議論しながら発展させていく点が多くあると思います。

(中野)今回の参議院選挙で日本共産党としては何を一番訴えたいと思っていますか。

(田村)敵基地攻撃能力で相手国をいつでも攻撃できる装備を日本が持ったときに、その装備を標的にして新たな軍拡がアジアの中で起きるというのは明らかです。そうではなくて、いかに戦争を起こさないためにインクルーシブなアジアの話し合いの枠組みを作っていくかというのをこの選挙では正面から問いかけていきたいというふうに考えています。今はウクライナの問題を見ても、中国を含めて国連に結集している全ての国が国連憲章違反だと一緒に声を上げなくてはならないときです。そういうインクルーシブを作らねばならないし、ロシアに対してそれを言うのも外交であって、ロシアに対する外交なくして戦争は終わらないと思います。

(中野)それでは最後の質問となりますが、田村さん個人として、また共産党の女性リーダーとして今一番訴えたいことや変えていきたいことについてお話いただけますか。

(田村)男女の賃金格差の是正をしようと思ったら、女性の妊娠子育てというのは男性のそれと同じ条件ではありません。子供を生み育てることが不利益にならない保障を作ることは、大きな社会変革を求めることになります。こういったことに対する人事評価の在り方などにも切り込んでいきたいと思います。これらのことを是正するにはまず、人権の尊重をすることが必要ですし、それが経済の成長につながっていくと思います。この辺りに今の新自由主義のもとで日本の経済が弱くなった最大の理由があると思います。こういった人をコストとみなすのか、力とみなすのかということを参議院選挙では大いに問いかけていきたいと思います。

(6月14日/参議院議員会館)

 

【田村智子 参議院議員プロフィール】

参議院議員。日本共産党副委員長、政策委員長。1965年長野県小諸市生まれ。早稲田大学第一文学部入学、学費値上げ問題、核兵器廃絶運動などで学生の声を代表する論陣を張る。国会議員秘書などを経て2010年の参議院選挙で初当選。2019年「桜を見る会」について安倍晋三首相(当時)を質し、社会問題化させた。2021年の予算委員会で、コロナ禍で女性に困難をもたらしたジェンダーギャップを当たり前とする社会の構造的矛盾を変えるため、政策の根本的転換を求めた。2022年の予算委員会でも男女賃金格差の是正のため、国際的には当たり前の同一賃金同一労働とするよう求めた。愛称「タムトモ」