市民連合/立憲野党インタビュー【2022参院選をかく闘う】(1) 立憲民主党・小川淳也政務調査会長 【2022.6】
市民連合、立憲野党インタビュー【2022参院選をかく闘う】をお送りします。第1回目は、立憲民主党衆議院議員・小川淳也政務調査会長。インタビュアーは福山真劫(市民連合事務局)です。
(福山)政治家になろうとした動機、あるいは原点は何でしょうか
(小川)元々中央官庁で勤務しておりましたが、そこでぶつかったのが省益の壁、縦割りの壁を排せないことでした。「省あって国なし、局あって省なし」と言われる状況に非常に矛盾を感じて、それも100歩譲って、昭和の右肩上がりの時代であればそれも成り立った可能性があると思いますが、やはりこういう時代で、それでは社会が立ち行きませんから、それを正すのが政治じゃないかと思ったのがきっかけでした。
(福山)なるほど。そういう意味で言うと、そういう社会のあり方を変えて行きたい、持続可能な社会を作っていきたいということですね。2019年参議院選挙の後、当時の立憲民主党枝野代表が、社民、国民民主党に党統一の呼びかけをして、いくつかの不十分点はあったわけですが、新しい体制で衆議院選挙を戦いました。しかし結果として、めざしたほど、衆議院選挙で票、勢力は伸びませんでした。そういう結果を踏まえて、立憲民主党は、泉代表を中心に、小川政調会長をはじめ、新しい体制で再出発をしているというのが今だと思います。それで、衆議院選挙の敗北というのはどう総括されたのでしょうか。
(小川)私たちは政権交代を、めざしています。政権の受け皿として、国民に認知していただけなかったという認識です。一定の批判勢力として、野党第一党としての期待はあったと思いますが、やはりこの人たちに政権を任せてみようということには、遥かに至りませんでした。立憲民主党としての力が弱かった。
(福山)私ども市民連合サイドから言いますと、政権交代を獲得するためには、今の選挙制度で、政権交代を目指そうとすると、野党共闘体制で選挙をやらなかったら勝てないと思います。そのためには、連合と共産党にどういう形で参加してもらうのか、というのが一番大きな課題だと思います。一定の野党共闘はありましたが、本格的野党共闘の形成は出来ませんでした。
(小川)野党共闘はやりましたが、不十分だったという意味でしょうか。それについて言いますと、いろんな経過はあると思いますが、労働運動だって一緒にやれないのか、これから考えていく必要があると思います。それから共産党さんの、共産主義の看板と、天皇制の廃止と日米安保の即時廃棄については、現実的な路線でお考え頂く必要が出てくると思っています。
皆がそれぞれ互いにリスペクトしながら、個別の利害と、個人的感情を乗り越えるということです。世のため人のために。それができなかったら公的な役割は果たせません。
(福山)日本の現状と課題、岸田政権をどう見るのかお聞きしたいです。
(小川)昭和の時代とは大きく社会構造が変わっているわけです。今までの前提を前提のまま置き続ける限り、社会は変われないので、きちんと新しい時代にふさわしい、モデルチェンジを進めていく必要があると思います。自民党政治は、基本的に、右肩上がりの昭和型社会に馴染みます。つまり、経済成長のパイを各地域に利権誘導して、金と票を集め返す政治ですから、基本的に右肩上がりの時代にふさわしいわけです。
しかし平成に入って30年、自民党政治は行き詰まっています。単独で政権維持できなくなり、公明党と手を握り、現世ご利益を重視しているように見えます。社会の変革を怠っているので、そのツケは全て借金として貯まっています。現在の円安も無縁ではないです。
ただ、彼らは政権運営の玄人なので、政権を維持し続けています。しかし、根本的に今の時代にたえうる政治ではないと思っています。
岸田政権も、安倍さんとは違うように見えますが、本質は既得権の上に乗っかった現状維持勢力です。現世ご利益をみんなで食(は)んで、将来利益を食い潰しているというわけです。
(福山)立憲民主党の政権交代のための基本戦略はどう考えていますか。
(小川)やはり、改めて立ち位置を定め直さないといけない。アメリカで言えば民主党、イギリスで言えば労働党というように、その立ち位置を、理念や政策、党運営において、再確認する必要があると思います。その上で、主要野党が六つも七つもあるわけですから、これではとても政権を担える体制になるとは思いませんので、ことと次第によっては、合流や合併もあっていいと思います。それがなくとも、連立政権を前提にした政策合意や政党間協議が行われないと、国民の側からすると託す気にならないでしょう。
同様に政党間もそうですが、支持者、支持団体にも多様性を旨として互いの違いを乗り越える訓練を積まないといつまで経っても政権を預かれないですし、たとえ政権を預かったとしても正常に運営できないと思います。そういう自覚を、野党陣営並びにその支持者、支持団体みんなで自覚し、自己改革に励まないといけないと私は思います。
政権を担う際には立憲が中心軸でなければならないというのは、その通りです。やはり、根が深くないと木は高くならないですし、幹が太くないと葉は茂らない。やはり、政策と党運営がすべてで、それを担う人材をどう作るかだと思います。
(福山)2016年、2019年の参議院選挙では、32の1人区すべて、立憲野党で、候補者が1本化でき、11,10の選挙区で勝利しました。今回は候補者一本化、野党共闘体制は、不十分です。立憲民主党の参議院選挙の課題ですが、情勢をどう見ているのでしょうか。
(小川)厳しいですが、もう一ヶ月前なので、運動量を最大化するしかないと思います。
政策的には、どの程度この異常な円安と物価高が、この1ヶ月の間になお進行するのかしないのか。ウクライナ情勢を含めて、安全保障環境に大きな変化があるのかないのか。そういう外部的な要因はまだ見通せませんが、政策も、ビジョン22,「今こそ生活安全保障が必要です」もまとめたわけですし、選挙体制も整ったわけですから、あとはこの中で運動量をどれだけ最大化できるかという局面です。
(福山)最後に、この選挙戦で何を訴えるのかということを語っていただけますか。
(小川)当面は、物価高と、教育の無償化と、安全保障環境について、柱として訴えます。
この30年間、地方は衰退を続け、経済格差は拡大しました。そして今、多くの国民や事業者が収入減と物価高に苦しんでいます。立憲民主党は、全ての政策を生活の目線から見つめ直し、暮らしに安心を届け、平和と一人ひとりの命を守り、「人への投資」で、支え合いの社会をつくります。
そのために、消費税を時限的に5%に引き下げます。ガソリン減税、燃料等の購入費補助等、原油高騰対策を実施します。最低賃金を時給1500円に引き上げます。月額1万円の家賃補助を行います。介護・障がい福祉や保育等の職員の処遇改善を図ります。出産費用を無償化します。大学等の授業料を無償化します。高校授業料無償化の所得制限を撤廃します。
公立小中学校の給食を無償化します。高3までの全ての子どもに、児童手当月額1万5千円を支給します。選択的夫婦別姓・同性婚を可能とする法制度を実現します。入国管理・収容・難民認定制度を抜本改善します。核共有は認めず、非核三原則を堅持します。辺野古新基地建設を中止し、沖縄の基地のあり方を見直します。
そして、2050年再エネ電気100%で、化石燃料、原子力発電に依存しない社会を実現します。農業者戸別所得補償制度を復活させます。
(福山)それでは、ぜひ参議院選挙を頑張って頂きたいと思います。ありがとうございました。
(6月13日 @衆議院議員会館)
【小川淳也 衆議院議員プロフィール】
1971年 香川県高松市生まれ。高松高校、東京大学法学部卒。大学卒業後、自治省に入省。2003年に民主党より香川1区に候補するも惜敗。2005年に初当選(現在まで6回当選)。 民主党政権時代には総務大臣政務官を務める。
その後、政党の合流等を経て立憲民主党所属。2019年の予算委員会で統計不正問題を取り上げ、話題となる。現在、立憲民主党 政務調査会長。
著書に「日本改革原案 2050年成熟国家への道」(2014年/光文社)、取材協力に「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた」(和田静香/左右社)などがある。初出馬以降の半生を追ったドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」(2020年/大島新監督)がキネマ旬報ベストテン・文化映画第1位となる。