信州市民連合と立憲3野党長野県組織との政策協定締結/信州市民連合共同代表 又坂 常人 【2022.5】
5月4日、信州市民連合と立憲3野党の長野県組織との間で、参議院選挙に向けた政策協定の締結式が行われた。長野選挙区ではすでに立憲民主党現職の杉尾秀哉氏が候補者として同党から公認されていたが、共産党は公的には候補者の擁立について確定的な態度を明らかにせず、政党間合意としての候補者の統一は先送りされてきた。今回の協定締結によってようやく「市民と野党の共闘」が正式に成立し、全国に先駆けて野党候補の統一がなされたことをまずは率直に喜びたいと思う。
長野県で市民連合をブリッジとする「市民と野党の共闘」が確立されたのは、6年前の2016年参議院選挙の時であった。この選挙において、野党と信州市民連合との共同作業を通じて野党統一候補を擁立し、候補者と政策協定を締結して戦うという「市民と野党の共闘」の原型が形作られたのである。二人区から一人区に変更された最初の選挙であるこの激戦を制したのが今回も立候補する杉尾氏であった。爾来、19年参院選及び21年参院補選においても野党統一候補が圧勝し、参院では自民党に議席を許さない状況を作り上げてきた。信州市民連合は一度解散し、信州市民アクションとして再結成された後再び名前を信州市民連合に戻し、現在まで県内各地域の市民連合を結ぶネットワーク組織として、選挙に限らず広く立憲主義の実現をめざす多様な活動を展開してきている。以下で今回の協定締結にいたる過程を報告したい。全国での様々な闘いの一助になれば幸いである。
「市民と野党の共闘」が成立するためには、政策内容の一致と共闘の「かたち」に関する合意が不可欠である。前者について、まずは市民連合として政党に提示すべき政策の概要を確定する必要があった。事務局を中心に昨年総選挙及び参院補欠選挙の際の協定案(総選挙は「確認書」)を下敷きとして6項目の原案を作り、それをもとに3党(立憲・共産・社民)県組織と市民連合メンバー(共同代表・事務局5名)からなる調整会議を設置し、協議を行った。基本的な考え方には当然のことではあるが大きな違いはなく、立憲主義の回復、安保法制の違憲部分の撤回、新自由主義的経済社会政策からの転換、コロナ禍によって傷ついた生活と経済の再建等の主要部分については問題なく合意が得られた。外交政策については、日米同盟の堅持を党是とする立憲民主党の政策との整合性を確保する観点から若干の修正が行われた。
問題は、共闘の「かたち」をどう作るかにあった。立憲民主党中央は昨年総選挙の際の共産党との「閣外からの協力」合意を連合中央から批判されたことを契機に、共産党との政策協定そのものを拒否する路線に転じたために、地方においても従来のように市民連合と候補者及び政党県組織との三者間ブリッジ協定というかたちがとれなくなったのである。他方、共産党が、政策合意もなく自党が候補者を立てないという選択は、比例区での選挙を考えた場合に取りえない、と考えることは政党としては当然のことであって、この解決が課題として残されたのである。
この問題は以下のように調整された。市民連合が立憲民主党・日本共産党・社民党県組織それぞれとの間で政策協定を締結する。立憲民主党公認候補の杉尾氏も同党所属党員であるので、当然この協定書に拘束される。他方、この過程とは別に前記3党間で杉尾氏を野党統一候補として擁立し、共に戦う旨の合意を相互に確認する。この確認は協定書の締結に先立ち、口頭で行われた。また、杉尾氏本人には協定書と同一内容の要望書を協定書への署名後に信州市民連合から手交し、その場で氏は書かれた政策の実現に努力する旨を宣明した。これにより3党が同じ政策内容で一人の候補者を擁立して共に戦うという合意が市民連合をブリッジとして、3党及び候補者の間で成立したことになる。
このようにして信州における「市民と野党の共闘」が実現した。そのもっとも大きな要因は、2016年以降の戦いを通じて作られた、市民連合内部の、そして市民連合と政党との、政党相互間の信頼関係の積み重ねにある。また、これまでの成果に基づく責任ある立場の人の熱意と誠意が共闘合意に大きく寄与した。立憲民主党の新県連代表に就任した下条みつ衆議院議員の共闘維持に向けた熱意、鮎沢聡共産党県委員会委員長の柔軟な対応力と決断力、社会民主党県連合代表の中川博司県会議員の地道だが大きな努力に深い敬意を表したい。また、市民連合事務局の喜多英之氏には、水面下での政党間調整等大変な汗をかいていただいた。この場を借りて厚くお礼を申し上げたい。
言うまでもないことであるが、候補者が統一されたからといって自動的に勝てるわけではない。市民連合の提示した政策項目は十分な訴求力を持ち、また候補者の人格的力量は相手候補を凌駕するものであることについて、私は確信を持っている。しかし当選のためには、従来から指摘されている支持基盤の高齢化や中間層への食い込み不足等の多くの課題をクリアしなければならない。7日に開催されるキックオフ集会を起点に勝利へ向け、全国の志を同じくする市民と共に、さらなる努力を払う決意でいることを最後に付言したい。
2022年5月6日
信州市民連合共同代表 又坂 常人