コラム

東電刑事裁判 緊急署名にご協力を!/武藤類子(福島原発告訴団団長)

4月5日、私たち福島原発刑事訴訟支援団は、東京高裁に370ページに及ぶ意見書を提出してきました。目次だけで11ページあるものですが、ここには東電刑事裁判の被告人である東電旧経営陣に福島原発事故の責任が明確にあることが、さまざまな証拠に基づいて書かれています。

福島原発告訴団団長     武藤 類子さん

 

昨年11月に東京高裁で控訴審が始まりましたが、2月9日の第2回では、私たちが切望した福島第一原発の現場検証と新たな証人尋問が却下され、次回6月6日の結審を言い渡されました。しかし、このままこの歴史に残る大公害事件の刑事責任を問う、重要な裁判を終わらせて良いはずはありません。

どうしても裁判官には更なる審理をしてほしく、弁護士たちが夜も寝ずに意見書を書いてくれました。私たち福島原発刑事訴訟支援団は、【緊急署名】を立ち上げ、裁判所に訴えることにしました。

この夏前には、損害賠償訴訟での国の国家賠償責任について最高裁の判断が下され、7月には東京地裁民事第8部の東電株主代表訴訟の判決も下されます。いずれも刑事裁判で取り調べられた証拠も吟味されているため、刑事裁判はこれらの判決を待って、審理を尽くし公正な判断をするべきです。

どうか「一審判決を破棄し公正な判決を求める署名」へのご協力をお願い致します。

東電の旧経営陣の原発事故の責任を問う刑事裁判は、2012年3月に福島原発告訴団を結成し、6月に福島県民1,324人が、福島地裁に東電旧経営陣や経産省役人、御用学者等33人を刑事告訴したことが始まりです。2012年11月には、運動を全国に広げ14,716人の大告訴・告発団となりました。

検察の2度にわたる不起訴処分、検察審査会の2度の起訴相当議決を経て、2017年6月にようやく強制起訴裁判が東京地裁で始まりました。2019年までに38回の公判が開かれ、闇に眠っていた数々の証拠が明らかにされました。しかし、2019年9月19日、裁判所は「被告人は全員無罪」の判決を下しました。

東京高裁前ヒューマンディスタンスチェーン(2021.11.1)

私たちはすぐに控訴の手続きを求めた緊急署名を検察官役の指定弁護士に届け、控訴がきまりました。その時に指定弁護士は「この地裁の判決がこのまま確定したら、著しく正義に反する」と言う言葉を話されています。

昨年11月に東京高裁での控訴審が始まりました。1回目の公判で指定弁護士は一審の判決の誤りについて、長期評価の信頼性、具体性を否定したことが、原判決の最大かつ基本的な誤りであること。原子炉の安全性について、法令上の規制や国の審査基準等は社会通念が反映されていて、これに従っていれば過失責任は生じないとしたこと。結果回避義務を原子力発電所の停止措置だけと捉えていること。福島第一原発の現場検証を却下したことを挙げています。

更に、10m盤を超える津波の襲来の可能性を被告人が認識していたことは証拠上明らかで、津波危険度評価からも対策工事をすべきだったこと、長期評価は国の唯一の公式的見で信頼性のあるものと主張しました。そのうえで、3人の専門家の証人尋問と裁判官による現場検証を求めました。

昨年10月29日には、株主代表訴訟を審理する東京地裁の裁判官が、福島第一原発の敷地内に入り、詳細な視察を行いました。現地を見れば、原発事故のすさまじさ、津波の痕跡、原子炉の立地や海からの距離などを、五官を通して感じることができ、詳細な検証ができたと思います。刑事裁判でも、裁判官の現場検証をぜひとも行って欲しいと切に願っていましたが、2月9日の第2回控訴審で、現場検証と証人尋問などが却下されました。理由は「必要性がないため」。指定弁護士の「異議」も棄却されました。

私たちは、地裁の判決がどれほど間違ったものであるか、高裁が現場検証をせずに判断することがいかに常識から外れているかを、もう一度社会に訴えていかなければならないと思います。

人の人生を根底から覆すような被害を何十万人もの人に与えた事故を起こした、東電の旧経営陣の責任はこの上なく重いと思っています。このまま、責任が問われずに曖昧にされていけば、必ず再び同じような事故が起きるのです。私たちは司法が完全に独立した正義の砦であることを望み続けたいと思います。

【署名】

*署名は紙の署名とネット署名があります。福島原発刑事訴訟支援団のホームページをご覧ください。https://shien-dan.org/changeorg-202204-syomei/

*4月5日に提出した370ページの意見書は、福島原発刑事訴訟支援団のHPに掲載していますので、是非ご覧ください。https://shien-dan.org/written-opinion-20220405/

 

【プロフィール】

武藤類子 福島原発告訴団団長

1953年福島県生まれ。チェルノブイリ原発事故を契機に脱原発運動に関わる。

原発事故前までは、原発から遠い暮らしを提案する「里山喫茶燦(きらら)」を経営。

主な著書「福島からあなたへ」「10年後の福島からあなたへ」(大月書店)