コラム

住民投票でカジノ誘致をストップ/ 「カジノの是非は府民が決める 住民投票を求める会」共同代表・西澤信善

Ⅰ 大阪における住民投票を求める署名活動の経緯

私たちが組織するカジノ反対の団体である「大阪カジノに反対する市民の会」は、昨年6月、大阪府市で作るIR推進局と意見交換の場をもちました。その場で我々は、カジノの誘致は府民の反対が根強く住民投票をおこなって意見を聴くべきではないかと迫りました。しかし、返ってきた答えは、ノーというものでした。予想されたとはいえ、一切住民の声に耳を傾けようとしない姿勢に失望を禁じえませんでした。このことが契機となり、住民投票を求めるには署名を集めて府議会、市会にプレッシャーをかけるより他はないとの考えに至りました。そのためには大阪府の有権者の2%の署名を集めることが必要でした。その数すなわち法定数は約15万筆です。これだけの数を本当に集められるのか自信はありませんでしたが、横浜で19.3万筆を集めたことが我々の背中を押しました。その年の8月、横浜市長選挙がありました。この選挙ではカジノ誘致反対を唱える山中竹春氏が勝利しました。この選挙で特筆すべきことは、カジノ誘致を推進してきた自民党や日本維新の会の候補までが、誘致賛成から反対に転じて出馬したことです。

「カジノの是非は府民が決める 住民投票を求める会」    共同代表・西澤信善さん

なぜ、こんなことになったのか。それは市長選挙にさかのぼる数か月前、カジノ誘致に関して住民投票を求める条例制定の署名活動があったからです。その時集まった署名数の多さが、誘致推進派に賛成では勝てないということを認識させたのです。これはカジノ反対運動の中でも画期的な出来事であったと思います。

9月には全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会の代表幹事である新里宏二弁護士は、全国のカジノ反対運動に対し、「横浜に学べ」と檄を飛ばされました。これを受けて我々の会も署名活動を本格化させましたが、残念ながらカジノ反対を唱えている多くの団体の賛成を得ることはできませんでした。結局は、一旦断念しました。確かに大阪府は行政区も広く署名活動は大変です。その大変さは、後で実際に署名活動を始めて知りました。今にして思えば一理あることは確かですが、当時は残念な思いを拭い去ることはできませんでした。

昨年暮れ、「平和と民主主義をともにつくる会」の山川よしやす、山田敏正の両氏が、住民投票をぜひやりたいと言って来られました。我々が問題にしたのはタイミングでした。我々が提案した住民投票は本年2月、3月に開催される大阪市会、府議会にぶつけることを目的としていました。山川氏らは、「もう一つのタイミングは実施協定を結ぶときである」と強調されました。丁度、同じ時期に大阪府市および事業者が策定した「区域整備計画」が公表されました。これは議会にかけられるものです。そして年が明けた1月に、説明会、公聴会およびパブリックコメントがありました。われわれも説明会、公聴会に出席し、質問をし、意見を述べました。そのときに質問者および公述人の多くから「こんな大事なことは住民投票にかけるべきではないか」との意見が多くでました。その声に押される形でわれわれも住民投票に取り組むことにしたのです。

こうした経緯を経て、「カジノの是非は府民がきめる 住民投票を求める会」が発足しました。6人の共同代表を決め、事務局長には山川氏が就任し、多数の人が呼びかけ人になってくれました。そして2月20日にスタート集会を開催しました。記念講演の講師として和歌山で住民投票を主導された豊田弁護士をお招きしました。実際の署名活動は3月25日から5月25日までの62日間行うことになりました。なお、一部の地域は地方選挙等で4月から開始します。

Ⅱ なぜ、住民投票を求めるのか

改めて住民投票のための条例制定署名活動の意義を整理しておきたいとおもいます。

1 議会と住民意見との間でいわゆる「ねじれ」があり、住民の声が正確に反映しない。このままでは住民の多数が望まないものが誘致されることになります。これは民主主義の原則に反します。

2 情報操作が行われており、何が夢洲にできるのか府民の多くは正確に知らされていません。この署名活動を通じて特に以下の点を明らかにしたいと考えています。

大阪府庁前スタート集会(3月25日)

  • 大阪維新の会は「夢洲にできるのはIR(統合型リゾート)であってカジノではない」と喧伝している。しかし、IR全体の売り上げの8割はカジノである。またIR来訪者約2000万人のうちゲーミング客は1610万人つまり10人に8人はカジノをしに来るのである。したがってIRの実態はカジノである。つまり、正しくは、カジノで地域振興するというべきである。
  • カジノ業者の粗利益(GGR)はなんと4200億円である。これは賭け客から巻き上げた(対価を伴っていない)金である。これだけ巨額の金を巻き上げられたらどれほどの不幸が生まれるか。一方の儲けは、他方の負けである。賭博で地域振興するということは「人の不幸の上に自分の幸せを築く」(トルストイ)ようなものである。大阪府民から金を巻き上げて米国のカジノ業を儲けさす。地方自治体は住民の生命、健康、財産、暮らしを守るのが使命である。
  • 夢洲の土地改良費790億円を大阪市が負担するという。IRの地代をあてるから税金は一銭も使っていないという。IRの地代は税金とは言わないが、大阪市民の財産であることは間違いない。したがって、公費で負担しているというべきである。

3 議会で議決された「区域整備計画」が国でも承認されれば、いよいよ自治体と運営会社と実施協定が結ばれます。協定締結に向けてこの署名をぶつけます。その内容はきわめて業者側に有利な内容になることが予想されます。その契約内容に住民の意見を反映させねばなりません。