コラム

ロシアのウクライナ侵略をめぐって
飯島 滋明(名古屋学院大学教授、憲法学・平和学)

1 「武力不行使の原則」(国連憲章2条4項)に違反するロシアのウクライナ侵略

2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領はウクライナに侵略戦争をはじめました。この侵略戦争を受けて、世界中で多くの市民が「戦争反対」の声を挙げました。女性や子ども、老人などの多くの一般市民が犠牲になり、戦争の恐怖に怯えています。

失われた「いのち」は取り戻せません。「戦争」「武力の行使」は言語に絶する悲劇をもたらします。決して認めてはいけません。ロシアのウクライナ侵略は「武力不行使の原則」を定めた「国連憲章」違反、明確な国際法違反です。

2 軍備増強、核保有、憲法改正が必要?

プーチン・ロシアのウクライナ侵略を理由にして、日本では軍備増強、核保有や核シェアリング、憲法9条の改正を主張する人たちが出ました。ただ、ロシアのウクライナ侵略に対して、「国連憲章」の「武力不行使の原則」は意味がないから改正せよという主張が国際社会で強くなっているでしょうか?

飯島滋明(名古屋学院教授、憲法学・平和学)

国際社会では多くの政府や市民は「戦争」に反対し、ロシアに「国際法を守れ」と要求しています。2022年1月、アメリカは事態に備えて東欧に派兵準備をしました。しかしロシアがウクライナに侵略した際、なぜアメリカやNATO加盟国は派兵してロシア軍と戦わなかったのでしょうか? そのようなことをすれば、軍事紛争はエスカレートし、最終的には「核戦争」すら想定されるからです。「憲法の平和主義を守れ」という主張には「非現実的」という批判があります。ただ、「武力で守る」との主張こそ、「戦争の現実・悲惨さ」を軽く考えすぎています。「核保有」等を主張する人たちは、広島や長崎の原爆資料館等をきちんと見てください。

それらを見ても「核戦争」を主張するのでしょうか? 「軍備増強」「核保有」「憲法改正」では日本を守るどころか危機にさらします。戦争にならないための、平時からの平和創造活動が必須です。日本国憲法の「国際協調主義」はそうしたとりくみを求めています。

3 国連憲章の「武力不行使の原則」・日本国憲法の「平和主義」の重要性

「ユネスコ憲章」の前文では、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かねばならない」とされています。「ユネスコ憲章」前文のように、「戦争は絶対にいけない」という気持ちを一人でも多くの市民に定着させることこそ、戦争防止につながります。国連憲章の「武力不行使の原則」や日本国憲法の「平和主義」の理念を広めるとりくみは、「心の中に平和のとりで」を築くためには極めて重要です。

また、プーチン・ロシアのウクライナ侵略は「軍縮」、とくに「核兵器禁止条約」の重要性も明らかにしました。プーチン大統領は「ロシアは世界で最も強力な核大国の一つ」と発言し、ウクライナに侵略しました。「核の保有」がプーチン・ロシアのウクライナ侵略を支える一因になっています。国際社会での侵略戦争をなくすためには「核兵器禁止条約」の実現も重要です。日本政府は核兵器禁止条約の交渉にすら参加しませんでした。そうした態度を改め、「核兵器禁止条約」の実現にむけて真剣にとりくむことが必要です。

日本国憲法の「国際協調主義」は、そうした平和創造にむけた外交を求めています。憲法を改正して軍事を増強したり核兵器を持つのではなく、戦争の現実・悲惨さを認識して戦争を起こさせない、あらゆる平和的手段にとりくむこと、憲法の平和主義の理念を活かすことこそ、国際社会や日本の「平和実現」に必要です。