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#赤木さんを忘れない
 長尾詩子(安保関連法に反対するママの会/弁護士)【2022.2】

長尾詩子(安保関連法に反対するママの会/弁護士)

Netflix’sで放映されているドラマ版『新聞記者』が評判である。映画『新聞記者』と比べても、2018年3月7日に自死した赤木俊夫さんの件にスポットをあてている。「この作品はフィクションです。」というテロップを見て、我にかえり、横浜流星くん演じる村木(赤木さんがモデル)の甥のこと以外にどこがフィクションだったんだろうと思ってしまった。そこで、赤木雅子さんの著書『私は真実が知りたい』を再読した。

「よく食べ、よく話し、よく笑う」「マフラーが似合う」俊夫さんが、2017年2月8日の森友事件が始まった日以降に残業がいきなり増え、笑顔が消え、追い詰められている様子が生々しく書かれている。まさにそばで見ていた人にしか書けない、人が壊れていく様子だ。読んでいて息が詰まるように辛くなる。読んでいるだけでこんなに辛いのだから、俊夫さんと雅子さんの辛さは想像を絶する。

そして、現実がドラマを超えたのは、国の請求認諾。昨年12月15日、国は、雅子さんが提訴した民事訴訟で請求認諾をした。公開法廷において証人尋問が行われることで事実を明らかにされることを恐れての判断としか考えられない。お金ではなく、真実を明らかにしたかった雅子さんにとっては、まさに札束で頬を叩かれたに等しい思いだっただろう。

政権維持のためにそこまでするのか、保身のためにそこまでするのか、と怒りを覚える。今、私たちが目撃している現実は、ドラマすら追いついていない想像を超える酷さなのだと思い、身震いしてしまう。

そして、たぶん多くの人が、間違っていることを間違っていると指摘した人が追い詰められて自死するなんて許されないと思っている。国民のために働くという尊い志をもって働く人を踏みにじり追い詰めることが許されていいはずがないと思っている。そんな現実に対して、勇気を振り絞って立ち向かう人を、一人にはしておけないと思っている。そんな思いが広がって、「#赤木さんを忘れない」というハッシュタグが続いているのだと思う。

そんなまっとうで純粋な一人一人の気持ちが社会を動かし変えていくのだと思う。

社会をまっとうに変えていきたいと考え悩み続けている人が一人づつ増えていくことで、現実にある酷いシステムに対して全くの無批判で凡庸な人たちが築いてしまっている社会を変えていけるのだと思う。負けたと思う出来事にぶつかることもあるけれど、それは歴史が見せるいたずらで、考え悩む人がいる限り、絶え間なく一歩づつ歩いているのだと思う。そして、改憲が危惧され、参議院選挙、沖縄県知事選挙と大事な局面をむかえる2022年、ドラマを超えた希望ある現実を見たいと思う。

長尾詩子(安保関連法に反対するママの会/弁護士)