コラム

October-01-2021

立憲野党・政党インタビュー(第2回)日本共産党・志位和夫委員長

インタビュアー/法政大学・山口二郎教授(市民連合)

9月21日/日本共産党本部

山口 9.19の直後に志位さんが国民連合政府という構想を打ち出されて、その大胆な構想に非常に驚いたのですが、改めてあのタイミングで志位さんが国民連合政府を打ち出した経緯や、あのときの思いについて教えていただきたいと思います。

志位 安保法制の強行というのは、いろいろな悪い法律の一つが通ったというものではなく、日本の立憲主義という土台を壊してしまう非常事態が起こったという非常に強い危機を感じました。そしてその非常事態を正そうというこれまでにない新しい市民運動が生まれてきました。つまり、労働組合の動員で集まるというのではなくて、一人一人の自発的な思いで集まって新しい政治をつくろうという流れが広がってきた。最後に「野党は共闘」というコールがわきおこりました。

ですからここは政党として、非常事態ということで、市民の声にこたえることが必要だと思いました。またもう一つ考えるならば、強行されるときにみんなががっかりしないで次に進めるように、ああいう提起は必要じゃないかと思いました。

山口 それはかなり前から構想練っておられたのですか。

志位 そうですね。2014年に山口さんと中野(晃一)さんとお会いして、野党共闘についてお話があったと思います。

2014年に沖縄で選挙があったのです。2月の名護市長選で「オール沖縄」の稲嶺進さんが勝利して、11月に知事選挙で翁長雄志さんが勝利した。そして直後の総選挙で1区から4区まで全部で勝利しました。これで、市民と野党の共闘が「オール沖縄」という形で始まったのです。

ですから、2014年ぐらいから、いろいろ考えなくちゃいけないなと考えていました。

山口 なるほどね。

志位 共産党も(国政でも)新しい道に踏み出さなければならないなというのは、あの年(2014年)ぐらいから予感のように感じていました。

それで、15年1月の「党旗開き」で、「沖縄で起こったことは全国で起こるんじゃないかと予感がする」と言ったのです。

こういうことは14年から考えていたのですけれども、15年にいよいよ、安保法制を通されて、野党もみんな結束して、闘いましたよね。その結束をする中で信頼関係も広がっていったということで、いよいよ決断しなくちゃいけないと思いました。

山口 そうですか。

志位 それで、党の常任幹部会ではそうなったら場合の対応について、少し前には相談をして、それでああいう対応しました。この途中までは、最後まで廃案を求めるわけなのですが、その筋を通しながら、強行されたらこれはもうタイミングだと思って、即、次の旗を立てようと思いました。

山口 私も安保法制の戦いのときには、もう人民戦線の発想でいくしかないというふうに思いましたね。やはり民主政治とか、あるいは近代的な立憲主義の土台そのものを崩されるときに、多少は従来の政策の違いは乗り越えて、安倍政治と対決しなきゃいけないという思いは共有されていったなと思いますね。

志位 それまで共産党の場合、国政選挙の選挙協力というのは、国政の基本問題で一致しないといけないというのを大原則にしていました。日米安保条約の廃棄とか、そういう基本の問題が一致しないと、これはできないというのはずっと一貫してやってきたのですね。それはそれで一つの筋だったと思っているのですけど、状況が変わったら、それに即して、党の方針も変えなくちゃいけないと思いました。やはりあそこで変えてよかったと思うのです。

山口 これは本当に大胆な方針だったと思いますね。英断といいますか、その勇気というのは日本の政党政治の歴史を変えたと思いますよ。

志位 野党共闘はこれからが正念場ですけど、これまでの歩みをたどっても、国政選挙で3回共闘してきて、成果も上げています。これがなかったら、もうひょっとしたら9条改憲やられていたかもしれないというぐらいに思います。

山口 みんなが協力して一つの議席を争う選挙では、自民党を倒しに行くんだということが常識になっています。改めて志位さんが提唱した国民連合政府構想が、こんにちの野党と市民の協力の定着に繋がったことに対する評価を聞かしていただきたいです。

志位 一石を投じたことになったと思います。それから、当時連合政府ということを提案させていただいたのですけど、そのときは、筋としてはわかるけどちょっと難しいんじゃないという方も少なくなかったですね。ところが、この間3回国政選挙を重ねてきて、今は共産党も協力して新しい政権を作るというのは現実の問題として、一つの大きな道になるのではないかということについて、多くの方々がそりゃそうだねと言っていただける状況があるんじゃないかなと思います。

市民連合の福山真劫さんが、私たちの党大会にあいさつに来ていただき、国民連合政府の提案のときはちょっと違和感があったが、今や野党連合政権ということを言われるのは違和感なく受け止められるということをおっしゃっていました。うれしい激励でした。これは相当積み重ねてきた結果、ここまで来たと思うのですね。

ですから、ぜひここは実らせたいと思っておりまして、あと一歩のところまで来たのではないかと自分では思っています。

山口 2017年に希望の党の騒動というのは、市民と野党の共闘路線に対する保守2党論者のクーデターですよね。集団的自衛権と改憲賛成という人を希望の党に入れてやる、というような。そこで枝野さんが思い切って立憲民主党を作ったということですよね。

志位 やはり17年の総選挙は最大の危機でした。民進党の両院議員総会で、希望の党への合流を決めてしまった時は、これはもう大変だと思いました。せっかく積み重ねてきたものがこれで壊れるかもしれないという不安もあったのですけど、ここで諦めちゃいけないなと思いました。やはり共闘を願っている人は必ずいるはずだと思い、あのときすぐに、こういう下でも共闘を願っている政党や団体・個人など、みんなが力を合わせましょうということを呼びかけまして、そういった流れの中で立憲民主党が生まれてきたので、協力の体制がつくられていきました。ですからあのとき諦めないで来たことは大事だったと思います。

山口 改めて共産党ってどういう政党かっていうのを一言お願いします。

志位 いろんな言い方があると思うのですが、私たちの目指す未来社会――社会主義、共産主義というのは、資本主義のもとでの人民のたたかい作られた価値あるもの――たとえば自由と民主主義、人権の制度、国民の権利や生活を守るルール、豊かな個性などのプラスの要素は全部、次の社会に引き継いで豊かにしていくというものなのです。人間の自由、人間の解放が、私たちの目指す社会の特徴なのです。

山口 先ほど言われた未来社会と現状はかなり大きな距離があると思うのですけれども、志位さんの構想の中ではどのくらいのタイムスパンで本来の理想に到達するという感じなんでしょうか。

志位 これは一定のタイムスパンがありますね。と言いますのは、社会主義、共産主義は私達の目指している社会ですが、ご承知のように一足飛びに行くという方針ではないですから。まず今日本の政治でいいますと、あまりに異常なアメリカの言いなりになっているという問題があります。それから財界中心の歪みがひどいです。この二つの歪みを正す、私たちはこれを民主主義革命と言っていますが、それをまず国民の合意でしっかりやって、日本の国を本当に国民が主人公の国にするという大改革をやって、その先の話ですから、率直に言って本当に時間がかかりますね。

ただ、いま世界を見渡しますと、コロナの下で、貧困と格差がひどく広がりましたよね。それからもう一つは、こんなに地球環境を壊し続ける経済社会を続けていいのかという問題も大きくなっていますから、資本主義の矛盾が噴き出てしまっていますよね。

山口 そうですね。そのお話を次に伺いたいのですが、資本主義に対する反省の機運というのはアメリカでさえありますし、もちろんヨーロッパでもありますよね。バイデン大統領が4月の末に行った施政方針演説で、週40時間働いても貧困ラインで生活をするっておかしいと話していましたが。

志位 バイデン大統領は、「トリクルダウンは失敗した」と言い切りましたね。「最低賃金15ドル」、「1%の富裕層への課税」ということも言いました。

山口 これ全部志位さんが提起していることじゃないですか。

志位 ずいぶん似てきましたね。ここへきてアメリカ民主党と日本共産党で共通項が出てきたということは、面白いことです。コロナを体験して、新自由主義はもうやめなければならないという流れが、世界でも大きく広がっていることを感じます。

山口 アメリカの場合、若者がそれに呼応しているところが日本から見ると羨ましい点ですね。若者は大学の学費の問題なんかもありますから、世の中の矛盾に非常に敏感ですし、いわゆるZ世代とかミレニアル世代と言われる人々がソーシャリズムという言葉に対して偏見なしに向き合っているというところがありますね。

志位 最近、アメリカで大手の世論調査会社が資本主義と社会主義どっちがいいかと調査をした結果、若い人は社会主義がいいというのが多数なのです。もちろん社会主義と言った場合に何を指しているかというのは、定かではない面はありますが、資本主義はもう限界だという認識なのでしょうね。

山口 そうですね。もう冷戦が終わって30年経つわけで、今の若い人たちはもう別にかつての資本主義対社会主義や共産主義というイデオロギー対立を知らない世代ですから、むしろその資本主義の矛盾を散々見せつけられて苦しめられてきた経験からすると、社会主義の理念というのが、むしろ正常なものに見えるのでしょうね。

志位 言っている中身は、社会主義というよりも徹底した民主的改革ですよね。そういった点でも私たちと一致してくるのですが、その中で私がすごく興味深いなと思ったのは、貧困格差を正すという問題と、気候危機を打開するという問題が、一体のプログラムとして提起されているということです。これは別々の問題じゃないのです。アメリカでは「グリーンニューディール」という形で提案されていますが、格差と貧困と正すことと気候危機を打開することを一体に追求するということは非常に大事な方向じゃないかと思います。

私たちも今度の選挙に向けて、気候危機打開の政策を出しました。この政策でも「格差と貧困を正すことと気候危機の打開は一体」という位置づけを書きました。気候危機は文字通りの非常事態になっていますし、解決の時間ももうわずかしかない。政治が本気で取り組む姿勢をしっかり確立することは急務だと考えています。

山口 実際選挙をこれから戦うわけですけれども、志位さんが国民に対して一番訴えたい政策、あるいはテーマを伺いたいです。

志位 やはりまず、コロナの問題――コロナから命を守るということですね。その際にやはりきちんと科学に基づいたコロナ対策をやらなくちゃいけないと思います。日本ではこれが決定的に欠けていると思うのです。PCR検査を抑えてきた。「GoToキャンペーン」でウイルスを日本中に広げてしまった。オリンピック・パラリンピック開催を強行して感染爆発を招いた。これらは、科学者の側から強い警告があがっていたにもかかわらず、それに反することをやって失敗した。何よりも科学に基づいて、命を守る政治にしていかないといけない。そうしなければ、今後も失敗が続くと思います。

国民との関係でいうと、国民にきちんと説明する、国民の声をよく聞いて政策に反映させる――リスクコミュニケーションができるような政権でないと、感染症対策はできないと思っています。

それから、「原則自宅療養」の方針など、この分野にまで「自己責任」をおしつけるのは最悪です。そのあたりの基本のところを変えていかないといけない。コロナの問題は今後も続きます。ワクチン2回接種でハッピーエンドだというふうにはならないと思うので、これまでのまずかったところを変えないといけないと考えています。

そのうえで私たちは、総選挙では「自公政治からの四つのチェンジ」を訴えていきたいと思っています。一つは、新自由主義は終わりにしようということです。命と暮らしを何よりも大事にする政治に切り替えようということですね。二つ目は、気候危機を打開する、政治の責任を果たしていこうということです。三つ目は、ジェンダー平等の日本で本気でつくろうということです。四つ目は、憲法9条を生かした平和外交の実現です。

今、この4つの訴えを始めているところです。国民はみんなコロナを体験していますから、コロナの体験を踏まえて、やはり新自由主義はもう駄目だね、変える必要があるねということを訴えています。もう一つ、気候危機とジェンダーという、人類が今直面している大きくて新しい問題についても。大胆に訴えていこうと思っています。


志位和夫

1954年千葉県生まれ。東京大学工学部物理工学科卒。1990年から日本共産党書記局長、2000年から幹部会委員長。衆議院議員9期。

 

山口二郎

法政大学法学部教授。市民連合呼びかけ人

1958年岡山生まれ。東京大学法学部卒業。北海道大学法学部教授を経て、法政大学法学部教授。専門は行政学、現代日本政治論。著書「民主主義は終わるのか 瀬戸際に立つ日本」(岩波新書)、「異形の政権 ――菅義偉の正体」(祥伝社新書)など多数。