ひろば

れいわ新選組・木村英子参議院議員インタビュー 8月24日・オンライン(ZOOM)

2021衆院選 政党紹介インタビュー(第3回)


2021衆議院選挙に向けて、野党各党に「政党紹介インタビュー」を企画・連載します。第3回目はれいわ新選組・木村英子参議院議員です。インタビュアーは菱山南帆子さん(市民運動家)にお願いしました。


 

プロフィール


木村英子(きむら・えいこ)

参議院議員(れいわ新選組)。1965年、横浜市生まれ。生後8ヶ月で歩行器ごと玄関から落ち、重い障害を負う。18歳までの大半を施設と養護学校で暮らし、一九歳の時に東京都国立市で自立生活を始める。一九九四年には、多摩市で「自立ステーションつばさ」を設立し、地域で生活したいと望む障害者の自立支援を今日まで行う一方、全国公的介護保障要求者組合・書記長なども務め、長年にわたって障害者運動に携わる。2019年7月の参院選に、れいわ新選組から立候補して初当選。現在、国土交通委員会に所属。障害当事者の視点からの提案を政府に行っている。著書:「生きている、殺すな」山吹書店(共著)、「〈反延命〉主義の時代」現代書館(共著)

菱山南帆子

1989年生まれ。イラク反戦から市民運動を開始、当時13歳。市民運動家、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、憲法9条壊すな!実行委員会、許すな!憲法改悪市民連絡会事務局次長、市民連合などのメンバー。著書「嵐を呼ぶ少女と呼ばれて~市民運動という生き方」(はるか書房)。現在は福祉施設で働きながら市民運動を行う。


 

菱山 よろしくお願い致します。コロナ禍になりもう一年半になりますが、未だにPCR検査の拡充がなされていない現状で日本は現在過去最高の感染爆発と言っても良いほどの深刻な事態に陥っています。政府のコロナ対策に対して思う事や要求してきたことなど教えてください。

木村 私は重度の障がい者なのでその立場から言うと、やはり濃厚接触が避けられない生活ですから、介護者に対するPCR検査の充実や、そういった人の中でワクチンの接種を希望する方が速やかに接種できる体制を作っていただきたいと思います。

また、重度の障がい者の人はそれぞれ障がいが異なるので、その障がいに合わせた介護を日常的に受けていると思います。そして介護と看護は異なるものなので、重度の障がい者の人がコロナウイルスに感染した場合、介護者を同伴で入院できる体制を作っていただきたいです。

入院時の介護者の派遣については現在区分6の方にのみ認められている現状ではありますが、このコロナ禍においてはたとえ制度として認められていても、なかなか入院ができない現状になっています。一般の患者の方の家族が面会に来ることができない状況の中で、障がいを持った人たちは更に厳しい状況になっているため、そういった面も制度を充実させていただきたいと思っています。そのような要望は出していますが、現在あまり実現には至っていないため引き続き要望は出していきたいと思います。

菱山 昨年、コロナが始まったばかりのころ、重度知的障がいの方がコロナウイルスに感染した際に病院に受け入れ拒否をされたという話を聞き驚きました。拒否の理由は病院側が、重度知的障がいの方にどう接したら良いか分からないということでなかなか医療が受けられないという事が起きたようです。また、施設で感染者が出た場合そこの介護施設の職員が防護服を着て対応をするという話も聞きました。医療知識を持っていないため本当に大変だったと最近、コロナ感染をした妊婦の方が適切な医療を受けられず、お子さんが亡くなられてしまうという大変痛ましいことがおきました。政府は様々な方たちが医療を受けられる体制をなぜ未だに構築できないのでしょうか。

木村 昨年、コロナ対策政府与野党連絡協議会が立ち上がった際に障がい当事者の感染対策については当事者の意見を反映していただきたいという要望は出したのですが、少数会派は参加できないという慣例があり私自身は参加することができませんでした。そういった状況なので、障がいを持っている方の感染対策あるいは入院時の感染対策について政府が具体的にどう考えているかは分かりません。

菱山 少数会派だからといって意見を聞かないのはおかしいですよね。

木村 私も質問をしてもよろしいでしょうか。

菱山 はい。

木村 菱山さんは障がい者施設の職員をされているということですけれども、コロナ禍においてどういった点に気をつけていますか。

菱山 いまだにPCR検査を受けることがなかなかできずにいます。私は先月にワクチン二回目を接種し終えることができました。しかし、先ほど申し上げたようにPCR検査は一度も受けることなくワクチン接種完了しました。現在私の施設内では主に知的障がい者の方々が通所されています。感染予防対策のため本来ならば窓をしっかりと開けて換気をしたいのですが、窓を開けると声が聞こえる、こっちを見ているなどといった理由で周辺の方々からクレームが入るといったことが起こるため、窓を開けて換気するのも気を使います。緊急事態宣言が初めて発令された去年の4月の時驚くことがありました。障がい者の方がバスに乗っているだけで通報を受けたり、小突かれたりなどの事態が相次いだのです。誰もが経験したことのない事態に陥り、更に目に見えないものという事が人々をパニックにさせ、そこから排外主義のようなものが巻き起こっていました。先ほど木村さんがおっしゃっていたように私たちの仕事はどうしても食事や排せつ処理などでどうしても濃厚接触になってしまいます。そういった点から、介護や福祉を担っている方にはいつでもPCR検査ができるようにしていただきたいと思います。無症状で感染させてしまう不安感が常にあります。

木村 分かりました。ありがとうございます。

菱山 では、次の質問に移らせていただきます。障がいを持った女性として感じる差別などはありますか。また、木村さんが当選されて国会内での環境はどう変わったのかという二点をお聞きしたいです。

木村 まず、障がいを持った女性として感じる差別についてお話しします。あからさまな差別というのは国会で受けてはいません。ただ、女性の国会議員が少ないのと同じように、いや、それ以上に少ない重度の障がい者の議員が初めて誕生して、さらに女性という点では国会議員の中ではただ一人です。幼い頃から教育も分けられておりますし、実際に社会に出たいといっても、二十四時間介護が必要で、家族が介護できない重度の障がい者には施設での介護しか選択肢がない現状があると思います。

そういった施設で介護を受けるという選択肢しかない障がい者が議員に立候補するということは相当な困難を伴います。その段階にまでたどり着く方はごく稀で、私自身も今回、山本太郎さんにお誘いを受け実際に立候補して得た結果というのはやはり特定枠でした。特定枠というものがあったから当選できたと思います。そういった状況ですので、女性障がい者が国会に入っていくというのは、弱者の政策を進めていくという意味ではとても重要だと思います。

また、国会内のハード面のバリアフリーについては、マスコミ等で公表されているとおり、本会議場内のスロープやエレベーター等の設置がされました。国会内の合理的配慮については、委員会などでの秘書の代読やパソコンの持ち込み、介護者の付き添い、随時水分補給をすることなどを認めてもらっています。

菱山 先ほど木村さんが言われたように国会は男性議員が占めています。圧倒的に多数を占める男性の議員の割合が変わって、国会内が多様化していくことでどう変わっていくと思いますか。

木村 私が議員になって感じることは、障がいを持っている方たちの政策については専門家中心で作られるのではなくて、国会の場に障がい当事者の意見が反映されるようになることが世の中を変えていく上で重要な点だということです。そういった意味では色々な多様性というか、様々な状況にいる当事者が国会議員となることで、世の中を健常者や障がい者で分けるのではなく共に生きていける社会を構築できるのではないかと思っています。

菱山 共に生きる社会と分ける社会は相反するものですね。国会でも障がい者と健常者で分けず、共生のロールモデルになればきっと世の中が暮らしやすくなると思います。

木村さんは選挙制度などもっとこんな形で行えばより当事者の声を反映できるのでは?という事はありますか?

木村 例えば私が山本太郎さんと出会ったのは、私が施設から出て介護保障運動を仲間とずっとやっていたのがきっかけです。なので、障がい者の方が施設の外に出てこない限り政治の場に参加するのは難しいと思います。ですから、障がい者の方がより社会に出やすい環境や制度の保障、あるいはそれぞれの障がいが違うため、地域で社会参加するためにそれぞれの障がいのニーズに合った介護保障が必要だと考えます。そういったものがない限りはいつまでも地域に出るという選択ができない障がい者の方々がたくさんいます。その方々が社会参加をすることで政治に参加したいという方も出てくると思うので、障がい者が健常者と同じように当たり前の権利として社会参加していける仕組みを作っていくことが重要だと思っています。

菱山 ありがとうございます。まずは、障がい者と健常者を分けるような考えの社会であったらいつまでも差別はなくならないと思いますし、当事者不在の政治が続くように感じます。まずは社会から変わっていくというのが重要ですね。

続いて最後の質問になりますが、れいわ新選組を始め、自公政権ではない野党に投票したらどのように政治は変わるでしょうか。

木村 私たち重度障害者が地域で生きるための介護保障として、重度訪問介護制度があります。私たちは日ごろから他人介護を受けているので、介護者との関係づくりにとても苦労します。介護する立場と介護される立場では、お互いの意識が違いますし、介護中に少しの負荷がかかっただけでも威圧や虐待、差別が起こりやすい関係性です。そういった中で、健常者の方も何らかの障害をもったり、高齢で介護が必要になったときに私たちと同じような体験をすると思います。また、健常者の方々には介護保険というものがありますが、自分が介護保険のサービスを受ける事態になったときに、自分が納めてきた保険料に対して自分の望む介護サービスを受けられるかどうかを、今から検証しておく必要があると思います。介護は実際に受けてみなければ自分の心や体がどう感じるかはわからないものだからです。健常者の方が自分が障がい者や高齢者になって介護を受ける時に、世の中がもっと弱者に優しい社会であれば良いのですが、それは分かりません。そういう意味では政治を議員だけには任せずに、一人一人が自分の将来のために政治に興味を持って、あるいは参加していくことで少しずつ世の中が変わっていくと思います。ですから、日本がどういった未来であったら良いかというそれぞれの希望が一つ一つ結集して政治を作っていくのではないかと思いますので、より困難を極めている人たちの思いを持って政治に反映していける政治家の方に投票することが重要だと思います。そういったことが政治を変えていくということだと思いますので、自分の一票から政治を変えていくという気持ちで投票していただけたらと思います。

菱山 自分の一票で変わらないとは思わずに、まずは政策を見る。そして一票が未来を変えるということを私たちも訴えていかねばならないと思いました。

ありがとうございました。