コラム

August-28-2021

新型コロナ災害 押し寄せる生活の危機 -支援現場からの報告ー

 新型コロナ災害緊急アクションは。新型コロナウイルス感染拡大に伴い。拡大する貧困問題を共同して解決するために、私が事務局長を担う反貧困ネットワークが呼びかけして、昨年 3 月 24 日に設立、41 団体の参画で活動を進めている。

「緊急ささえあい基金」を昨年 4 月 16 日にスタートさせた。現段階で、市民からのカンパで約 1 億 2 千万円が集まり、6 千万円以上を給付している。コロナ禍で仕事を失なったり、ライフラインが止まる。2015 年に生活困窮者自立支援制度が始まり、相談支援機関はたくさんあっても、金銭的な援助を得られる場は限られており、その活用も制限されている、相談支援機関はたくさんできたが、経済的援助手段はなかなかない。社協が窓口となっている生活福祉基金も、実際には活用しづらい。公的な貸付制度でも救えないコロナ災害の受け皿として、「緊急ささえあい基金」から給付支援をおこなって、いのちをつないでいる。

★新型コロナ災害緊急アクションでは、2020年4月からホームページに相談フォームを設けている。そこに、現在いる場所、所持金、携帯電話の有無、生活保護を受けたいか、支援して欲しいことは何か、今後の生活についてなどを書きこんでもらい、対応を開始する。

私たちの元に届く相談者の80%は住まいを喪失している人々だ。2002 年の小泉・竹中構造改革によって、派遣労働と非正規雇用を増やし、彼ら彼女らを低賃金で不安定な立場に押し込んだ。働く人の 4 割が非正規雇用で、非正規雇用で働く人の平均年収は 179 万円。男性は 236 万円、女性非正規に限ると 154 万円、貯蓄ゼロは単身世帯で 38%、ネットカフェで暮らす人々の平均の月収は 11.4万円。アパート等の入居に必要な初期費用(敷金等)をなかなか貯蓄できずに「ネットカフェ難民」になってしまった人たちの存在、飲食店や派遣会社の寮から退去されられた人々の SOS も多い。多くの人が「寮つき派遣」しか選択肢がないと考え、応募するが、仕事が極端に少ない上に、携帯電話が止まり、さらに仕事探しが困難になる。職探しの間にわずかな貯金が尽きてしまっている。

【現在の深刻な状況】

以降、1年半以上、ほぼ休む事なく路上からのSOSに向き合う日々を続けている。所持金が100円しかない。「このままでは死んでしまう。死のうと考えた。」SOSの現場に駆けつけて、その後の生活保護申請同行とアパート入居までの支援をおこなっている。

夏を迎えての相談内容が、緊急アクションの相談チームを始めた昨年春と比べて明らかに違ってきている。年代層も20代の相談が大幅に増加、ここ数日は若い女性からのSOSも急増している。昼間の仕事も生活できない程の低賃金と雇止め、風俗のみが受け入れ先となっているが、繰り返される緊急事態宣言が直撃している。悲しすぎる程の、底が抜けた社会に僕らは生きている。

【複合的な困難】

「最近の相談事例によると、相談者のそれぞれの「生きづらさ」の要因や抱えている課題は多様で複合的である。例えば、知的、発達障害やうつ症状といった障害や病気を抱えている相談者、家計管理に難を抱えた相談者。精神的困難と経済的困難を抱えて、心をやられてしまった若い世代が増えている。幼少期から、いじめや虐待による対人不信等の両方を抱えていたり、多くの親がひとり親、低収入、親自身が、ひとりでの子育て、同時に複数の課題を抱えて生活していた。その子どもたちが多くの課題を抱えながら、大人になり、就けた仕事は非正規しかなく、コロナ禍により路上にでている事例が多い。そこまで追い込んだのは「助けて!」と言える友人や相談機関がなかった事、そして、やり切れない程の孤独だ。コロナが感染したから貧困になったのではない。以前から「助けてと言えない社会」「どうしようもない孤独な社会」だった。多くの相談者が言う。「たまらなく寂しかったんです。」このように「助けてといえない」状況に何故、至ってしまったのか、困っている時に福祉の窓口に行った時に「若いのだから生活保護は利用できない。」「ギリギリまで落ちたら相談に来てください。」「施設入所が生活保護受理の条件です」。福祉事務所から、冷たく追い返される事が日常的に起きている。単なる生活保護申請同行からアパート入居の支援スキームでは済まない状況となっている。通院同行、社会生活訓練、就労ケア、孤立化させない、引き続きの伴走が必要となっている。

【生活保護につなげてアパート入居できたら終わり、じゃない】

今はコロナの影響で仕事も見付かりにくい。アパートに入っても人との関わりがないために孤立を深めてしまい、突然連絡が取れなくなる相談者が増えている。支援している相談者からの嘆きが相次いで届く。電話でもメールでも届く。共通していることは独りぼっちのアパートやビジネスホテルで「死にたくなるような寂しさ」、1週間、誰とも会話していない。以前のように仕事が見つからず、友だちもいない。部屋の天井を見上げるだけなのだ。僕らが思っているより、若い人たちの抱えている困難は深刻。もう一度仕事に就くにしても、ブラック企業で使い捨てのように働かされてきた人たちを、そこにまた戻すのかという問題もある。

【多くの相談者が生活保護利用を躊躇する】

★生活保護を申請したいという相談者は半数に満たない。生活保護の申請希望が少ないのには、4つ理由がある。

⓵生活保護制度を知らない→20代に多い。困った時に使える制度を知らない。

⓶生活保護への嫌悪感→生活保護は若者は利用できないと思っていたし、利用する事は恥ずかしい事だとの風潮、車や資産も奪われ、扶養照会など家族にも知られ、生活保護を受けるなら死んだほうがマシだ、とはっきりおっしゃるかたもいる。これは「生活保護バッシング」と「生活保護費減額」などをすすめてきた政治の責任は大きい。

⓷福祉事務所で生活保護の相談をしたが追い返された。→「若いのだから働きなさい」

「借金がある場合は利用できない。」「親族に援助してもらいなさい」「車や資産がある場合は利用できない」居所がない相談者に「ここに住民票がない場合は申請できない」

追い返し事例は改善されずに今日に至っている。

④無料低額宿泊所や自立支援施設に入所する事を約束しないと生活保護申請を受理できない。→ 多くの福祉事務所において、無料低額宿泊所、自立支援施設入所を生保申請受理の条件とされ、路上に居ただけで、「生活保護申請者に対する疑い」「偏見」が差別的な運用につながりアパート転宅が阻まれる状況が頻発している。福祉事務所は、「現在の感染拡大があるので、無低も個室で案内している」というが、実際は失踪者からの告発の声が相次いでいる。無低では入所から暫くは集団部屋、更生施設でも懲罰的な相部屋生活を強いられている。問題なのは、無低の入所を勧める側の福祉事務所が、無低の集団生活の規則を充分に把握していない事だ。①施設料が10万円超え、⓶食事は17時から18時までで食べなくても徴収、風呂は17時から20時まで、門限21時まで、自由を剥奪された規則、ケースワーカーは一度も無低施設を見学した事もない。

私が強調したいのは、各区市の福祉事務所の間では受けられる支援の格差が存在すること、東京都が提供している協議済みホテルの部屋を提供しているのは、実際には都内の3分の1ほどしかない。都として支援の枠組みを用意していても、実際には使うことなく、無料低額宿泊所や自立支援施設しか選択肢を示さない違法な対応を行う自治体が大半だ。

【福祉の貧困で人を殺す】

困っている時に福祉の窓口に行った時に冷たく追い返される事が日常的に起きている。所持金も1000円も切り居所もない相談者にも容赦ない。いちばん苦しい時に助けてもらう事も許されない。そのような福祉事務所の対応が、時には「死に至らしめる」事を福祉に携わる人々は自覚してほしい。「福祉が人を殺す」こんな事態が今日も全国のあちこちで起きている。

【コロナ感染爆発状況下のなかで】

東京五輪開会式以降のコロナ感染爆発状況下のなかで、気になっている事がある。コロナ陽性反応後の療養二週間後にSOSをくれた相談者対応が今週だけで二名、二人が泊まっていた場所はネットカフェだ。症状がでて連絡しても入院できていない。軽症入院ができない状況下でホテル隔離がされない場合は、ネットカフェで療養するしかない。所持金も尽き、保険証も持たない困窮状態にある若者たちはひとり苦しんでいる。昨年とは桁違いの感染爆発で自宅感染も酷く、安全な場所がなくなっている。公園で開催した医療相談会においても、具合が悪い野宿者がいて、診断したら陽性反応、この場合も全て入院やホテル隔離を拒否され、野宿を余儀なくされている。昨日も貧困ビジネスの無料低額宿泊所に住む男性から電話が入り情報を聞く。福祉事務所は、「現在の感染拡大があるので、無低も個室で案内している」実際は2フロアで68名、1フロアで34名が仕切り板だけで生活している、「日本には政府がある。貧困に苦しむ人に、いのちと暮らしを守る政府があるということを行動で示してください」現在においても、そんな悲痛な声も、彼らには届かなかったのだろうか。

 

反貧困ネットワーク 事務局長 瀬戸大作