社会民主党・福島瑞穂参議院議員インタビュー @8月15日参院議員会館
2021衆院選 政党紹介インタビュー(第2回)
2021衆議院選挙に向けて、野党各党に「政党紹介インタビュー」を企画・連載します。第2回目は社会民主党・福島みずほ参議院議員です。インタビュアーは菱山南帆子さん(市民運動家)にお願いしました。
プロフィール
福島みずほ
社会民主党 党首
宮崎県生まれ、1980年東京大学法学部卒業、弁護士。1998年7月 社会民主党から参議院全国比例で当選。2009年9月 鳩山政権で内閣府特命担当大臣に就任。
現在、参議院議員4期目。国会では、環境・人権・女性・平和を4本柱に据え幅広く活動中。<著書>中野晃一/ 福島みずほ「嘘に支配される日本」(岩波書店)、
内田樹/福島みずほ「『意地悪』化する日本」(岩波書店)、海渡雄一/福島みずほ「脱原発を実現する~政治と司法を変える意志」(明石書店)ほか多数
菱山南帆子
1989年生まれ。イラク反戦から市民運動を開始、当時13歳。市民運動家、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、憲法9条壊すな!実行委員会、許すな!憲法改悪市民連絡会事務局次長、市民連合などのメンバー。著書「嵐を呼ぶ少女と呼ばれて~市民運動という生き方」(はるか書房)。現在は福祉施設で働きながら市民運動を行う。
菱山 3月に行われた女性による女性のための相談会に福島さんも参加されていましたが、コロナ渦での女性の貧困と自死がなぜ増えているのでしょうか。
福島 日本社会の最大の問題の一つが女性の貧困、低賃金だと思っています。実際にシングルマザーの年間平均就労所得が200万円を切っていると言われています。女が当たり前に働いて子どもを育てていける賃金を得ることが困難な社会を変えたい。コロナの前から女性の貧困問題はありましたが、よりしわ寄せを受けた形になっています。
やはり大きな理由は女性の非正規雇用割合が54%という現状があるからだと思います。男性ももちろん大変ですが、パート・派遣・契約社員などの非正規雇用者は女性が多い。また今回のコロナ渦で、とりわけ飲食・観光・サービス業などエッセンシャルワーカーの仕事がなくなっているというのもあります。この2つの理由から仕事がなくなった、賃金が減ったということになっていると思います。
菱山 たしかに構造的差別が背景にあるから、女性の貧困が問題になっていると思います。
福島 それから、女性は「助けてほしい」と声をあげにくいという状況があると思います。若い人は友達などに貧困であることを言うと引かれてしまうために貧困に見えないようにしているなど、弱音を吐きづらいという人が多いです。貧困なのは自分が悪いせいだとか、自分が我慢するべきだと思ってしまう人が多いように思います。
象徴的なのは昨年11月に渋谷で路上生活をしていた60代の女性が近所の男に殴られ亡くなった痛ましい事件。彼女は元々試食販売をして生活していたのにコロナ渦で仕事がなくなり、家がなくなり、所持金もほとんどなくなった中、殴られて殺されました。彼女は生活保護には頼ることはせず、コロナが収まったらまた自分の力で生活できると我慢していました。頑張り屋の女の人であるほど、弱みを見せられず助けを求めることができないのだと思います。
菱山 女性が生活保護の申請に行くと役所の職員に「頼れる男性はいないの?」と聞かれることがあるそうです。これが逆の男性の申請者でも「頼れる女性は」なんて聞かないですよね。
福島 根本的に女性は低賃金な上に、「女は男に養ってもらえ」というような男が主で女が従というようなイメージが社会全体にあると思います。「女性による女性のための相談会」の報告を見て思いますが、貧困だけでなくセクハラやパワハラやDVなどいろんなことが複合的に起きていて、女性自身が生きにくいという状況もあります。
菱山 性差別をなくして誰もが平等に暮らしていく社会を目指すのが国会の役割だと思いますが、その国会でさえも、女性議員が少ないという現状がありますよね。女性議員が増えたら国会や私たちの生活はどう変わりますか?
福島 盗聴法反対運動をしていた1999年に、自民党の男性国会議員に「みずほちゃん女の子なんだから大人しくしてなさい」と言われたことがあります。これは恫喝でもあると思いました。政治というものが権力をどう行使するかということなので、男性優位という権力を行使したのだと思います。
女性が進出するとこうした政治の文化は変わると思います。「組織が、上が決めたからこうしなければならない」という男性的価値観も崩れると思います。また市民や現場とつながって多くの人々の弱音と結びついた政治になります。これからは組織とは関係なく私はもっとこうすべきだという主張ができる自由な政治にする必要があります。
女性議員が増えれば政策の優先順位も変わるし、政治の文化自体が変わると思います。日本の政治の世界はマンスプレイニングとマウンティングをする文化があるが、これも変わっていくと思います。
女性が増えれば政策の優先順位が明確に変わります。それから女性の首長がもっと増えたらいいと思う。私が男女平等参画担当大臣の時に、女性首長大集合というのをやりましたが、ある町長さんが「政治って、今まで自分がやってきたことをする場所なんだと思った」と言っていたのが印象に残っています。また「自分が今まで地域運動などでやってきたことを議会でやるんだ」と言っていて、女性は現場の問題をちゃんと議会に持ち込むので、政治に向いていると思います。
菱山 介護や保育など、ケアワーカーはものすごく賃金が低いことから見られるように、ケア労働は「女の仕事」という概念があるからでしょうか。女性の社会的な構造的差別を無くしていくにはやはり女性の声が議会に必要ですね。
福島 ケアワーカーの実態を知らない議員からは、家事の無償労働の延長線上くらいに思われているのだと思います。
若い女性たちが、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツのことを言うようになって、緊急避妊薬を医者の処方なくしてもらえるようにしてほしい、あるいは中絶薬を認可してほしい、あるいは中絶に関しての援助をしてほしいという声が上がっています。女性議員が増えれば、国会で堕胎罪とか中絶とか避妊について言う機会が増えるなどして、政策の優先順位が変わると思います。
なぜ女性議員が少ないのかですが、政治は男がやるものだという風潮が染みわたっているからだと思います。だから女性の首長が増えて、女性が政治の場で普通に働いているという光景がもっと広がると、自分もやろうかなという選択肢ができるのかなと思います。
菱山 自民党の中でも女性が輝くとか女性の声を増やすなどと言っていましたが、実際はむしろ女性の貧困を生み出している現状があります。自公政権では性差別が無くならないのはなぜだと思いますか?
福島 今の自民党政治は長いこと新自由主義政策をとってきて、企業が潤えば経済が上手くいくと考えたが、新自由主義は格差拡大と貧困を産んでしまったということだと思います。これは社会民主主義の格差是正、貧困の根絶と富の再配分の考えと真逆のことです。
企業が儲かるために労働法制の規制緩和などで、ほとんどすべての業種で派遣が可能になり、今年4月1日から看護師を看護の現場に日雇いで派遣できるようになってしまいました。労働法制の規制緩和が広がっていく新自由主義の元では男女平等は実現しないと思う。なぜなら企業の利潤追求でいくなら、いくらでも女の人が妊娠出産で振り落とされるし、低賃金で給料を固定されてしまう。今の政治の根本そのもの、新自由主義が女性差別を生んでいると思います。
今の自公政権は共感力がない。自公政権は自分たちを支持してくれる大企業などの上位層のために政治をして後は切り捨てている。つまり人々が苦しんでいたり、困っている人に対して共感力がなく、多くの国民の苦しみを無視しています。また、新自由主義による民営化によって公立保育園や公立病院も民営化され、そこで働いていたりそこを利用する女の人は打撃を受けることになり、女性の貧困に繋がり、女性が生きにくい社会になっています。
新自由主義から社会民主主義への転換を図り、税金の取り方や使いみちを変え、法人税や所得税の累進課税をもとに戻すくらいやり、消費税は3年間0にし、500兆円ほどの内部留保には3年間課税をする必要があります。
今、防衛予算が教育予算を上回っている現状があります。給食の無償化などやるべきだが、今の政権では無理だと思っています。女性の生きにくさは今の政治によって作られていると思います。
菱山 特に安倍政権しか知らない若い世代にとって政治や政権が「変わる」ことに不安を感じ、消極的な自公政権への支持があると聞きました。
最後に、そんな方や若い方たちに向けて私たちに投票したらこう変わるよ!
という具体的なメッセージをお願いします。
福島 社民党はすべてのひとの命と尊厳が守られる社会を作ります。すべての子どもが自分のなりたいものに挑戦でき、すべての人の尊厳が守られる社会を作ります。選択的夫婦別姓や、LGBT差別解消法や、同性婚法は自民党のもとではできにくいです。多様な生き方や、あなたをあなたのままで尊重するようなことはできません。また新自由主義のもとでは男女平等やジェンダー平等は実現しません。女は安価な労働力として見られ、あるいは子どもを育てろという風に見られ、男女平等は実現しません。
私たち社民党に投票してくれれば、すべてのひとの命と尊厳が守られる社会になります。社民党は命と暮らしだけでなく個性と人権が守られる社会を作り、差別をなくすことができるので、多くの人とそれを実現します。
菱山 ありがとうございました!