ひろば

立憲民主党・辻元清美衆議院議員インタビュー @8月16日衆議院議員会館

2021衆院選 政党紹介インタビュー(第1回)


2021衆議院選挙に向けて、野党各党に「政党紹介インタビュー」を企画・連載します。第1回目は立憲民主党・辻元清美衆議院議員です。インタビュアーは菱山南帆子さん(市民運動家)にお願いしました。


 

プロフィール


辻元清美

衆議院議員。立憲民主党副代表。衆議院予算委員会野党筆頭理事。1960年奈良県生まれ、大阪育ち。早稲田大学卒業。学生時代にNGOを創設、世界60カ国と民間外交を進める。1996年、衆議院選挙にて初当選。NPO法を議員立法で成立させ、被災者生活再建支援法、情報公開法、児童買春・ポルノ禁止法などの成立に尽力する。2009年 国土交通副大臣、2011年 災害ボランティア担当の内閣総理大臣補佐官、2017年女性初の国対委員長(野党第一党)を歴任。衆議院議員7期目。

菱山南帆子

1989年生まれ。イラク反戦から市民運動を開始、当時13歳。市民運動家、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、憲法9条壊すな!実行委員会、許すな!憲法改悪市民連絡会事務局次長、市民連合などのメンバー。著書「嵐を呼ぶ少女と呼ばれて~市民運動という生き方」(はるか書房)。現在は福祉施設で働きながら市民運動を行う。


 

菱山:長引くコロナ渦で女性の貧困、自死がすごく増えていますが、背景に女性差別などがあると思いますが、そのことについてどの様に思いますか。

辻元:深刻に受け止めています。今までの社会の矛盾が女性たちに集中したのではないかと思います。1つめは、女性は構造的に非正規で働く人が多いということ。例えば介護や保育。ベーシックサービスで人が生きていくうえで基本的に必要な仕事は女性労働者が多い。女性労働者が多いところは補助的に女性が働いているという構造があります。このような構造の中で介護や保育などは賃金が低いので是正する必要があります。

それから一番しわ寄せがくるのが子育てと仕事の両立が難しいシングルマザー。また女性が多く働く飲食店や観光業などのサービス業に従事している女性。彼女らはコロナが直撃したので食べていけなくなっています。シングルマザーは子育てをしなければいけないので、さらに追い詰められているという現状があります。

そうした中で、生活困窮者の女性に5万円の支援金や給付金を渡すような目の前の対処ももちろん必要ですが、働き方や賃金の格差や女性差別、非正規の低賃金で働くような構造を変えない限り、いざ危機が来た時には全部弱い女性のところへしわ寄せがいきかねないと危惧しています。そのため構造から変えていきたいと思っています。

菱山:人が生まれてから死ぬまでに必ずはお世話になるベーシックサービスで働く人たちの賃金がすごく低いのはなぜでしょうか。

辻元:まさに「働き手が女性だったから」というのが大きな理由になっていたと思います。夫の稼ぎがあるから女性の賃金は低くてもいいというような風潮があります。それは性差別とつながっていると思う。しかも、男性も非正規労働者となったり、賃金が上がらない現状があって、かつてのような「一家の大黒柱とそれを支える妻」というモデルは崩壊しています。そして男性の看護師や保育士も増えています。看護や介護や保育は今一番大事な仕事なので、男女ともに生活できる賃金にベースアップしていきたい。これは法的な力でできます。また社会を作る基盤を強くするということにつながると思いますので、次の選挙では公約にいれたい。

菱山:女性の手持ちのお金が増えれば消費につながりますよね。

辻元:苦しくなるとどうしてもプラスアルファの消費ができず目に見えて節約せざるをえない状況ですが、ベースアップされれば自分自身に使うお金や子供を旅行に連れて行ってあげられるお金も増えるので、景気回復策としても女性の職場のベースアップはプラスになると思う。

菱山:日本はまだまだ女性の議員が少ないです。女性議員として国会内で差別を感じるようなことはありますか?

辻元:あります。私は安倍総理など歴代11人の総理大臣と最も多く激論を交わしてきた議員の一人ですが、総理大臣によっては女性議員だからということで「うるさい。わきまえろ」というような言動をする人や、ヤジをとばして威嚇するとかありましたね。

それから逆差別もあり、とくに自民党などで「女性を誰か入れておかなきゃ」ということがある。これも差別だと思う。有権者との関係で、最近「票ハラ」という言葉が生まれてきていますが、有権者の言うことを拒否できないということでセクハラがあったり、街頭演説をしていても罵声を浴びせられるとか、男のひとにはやらないだろうというようなことをやられます。

菱山:どうして女性の議員がこんなに少ないのでしょうか。また女性の議員が増えたら国会はどう変わりますか。

辻元:女性国会議員は子育てとの両立が難しいというのがひとつ大きな理由です。子育て中の女性でなくとも、男性議員よりハンディを抱えることがありますね。多くの男性議員は「政治家の妻」という、もう一人のよく働く内助の功みたいな人とセットで政治活動をしています。そういう風土が日本にはあります。子育ても身の回りのことも含めて政治家の妻がサポートしているという男性議員は多い。そういう人は自分の政治活動だけしていればいいわけですから、当然活動量も多くなる。

女性の場合、「男性政治家の妻」のような「夫」の存在はあまりないのでは。地元にいる夫に子どもを預けて、月から金まで東京に出て週末地元に帰るということはなかなか困難。そうすると小さな子供がいる女性議員は不利です。現在の政治家の仕事のサイクル・モデルケースが、女が専業主婦・男が猛烈仕事型みたいな昔のモデルのまま。そうすると女性の参入は難しくなってきます。それができない女性はなかなか選挙で勝てなかったり、当選しても政治活動の時間が十分に確保できなくて再選が難しいという昭和の古いモデルケースがあるのが現状です。

菱山:なるほど。それは一般社会にもあてはまりますね。

辻元:これがまだまだ日本社会には根付いているわけです。でもワークライフバランスがあらゆる仕事で言われて、ニュージーランドの首相なんか子どもを産んで、休暇を取ったり、ワークライフバランスを保ちながら政治活動をしようという風になっています。日本も女性が首相になったら必ず変わりますよ。女性の議員が増えたらそういう政治文化・風土は変わると思います。そうしてどんな職業についても子育てや介護、仕事の両立がきちんとできるような制度や税金の使い方にしようという風に変わると思います。

男女とも働くことを基本とするモデルに変わると、ダブルインカムになります。そうすると今低賃金・低成長の時代となり、夫の収入だけで家族が暮らすのはきつくても、ダブルインカムで収入が倍近くなったらだいぶ余裕が出るじゃないですか。さらに、年金制度などが安定して将来への不安が少なくなれば、マンション買おうとか旅行に行こうとかなるのでこれが景気を刺激していい循環になり、結果的に経済成長をして、かつ財政赤字が少なくなります。

菱山:日本の課題ですね。

辻元:女性が意思決定の場にいる企業の方が伸びている。企業にどうしてほしいかとか、こうしてもらったら私は助かるのにという切実な思いは女性の方が多いと思う。

今抱えている日本の問題というのは、女性が一生涯で抱える問題を解決することによってかなりの部分答えを見つけられるし、それによって経済成長もしていくと思うのでここを追求していきたい。

菱山:若い人たちは変わるのが怖いと言うことで自公政権に入れているという話も聞きますが、自公政権のここが嫌、私たちとはここが違うという事をお聞きしたいです。

辻元:まずひとつは菅さんに代表されるような、自己責任を優先する、「まず自助でそれがだめなら共助、公助」という政治だと思います。ここから脱却をしなきゃいけないと思う。政治の役割というのはどんな立場の人でも、例えばシングルマザーや障がいがある方、どんなひとでも「自助」で生きていけるための「公助」をするのですよ。

労働者派遣法の規制なんかも、放置していくと弱肉強食になってしまうところを、法律で規制をかけるからみんな最低限公平なスタートラインに立つことができるわけです。つまり、政治というのはみんなが自助で生きていけるための公的な規制や支援、公助を考えるところなのです。ところが「自助でやれ、最後は生活保護がある」みたいな発想の人たちが多いですね。

菱山:この前参議院の憲法審査会の傍聴に行ったときに、自民党の古川議員が「私は弁護士ですけど憲法なんて司法試験以来使ったことないです。裁判の時は民法や刑法でなんとかなっていて、憲法なんて使わないですよ。だから改憲してもっと使いやすい憲法にしましょう」と言っていましたが、使ったことがない人がどうして変える権利があるのだろうと思って驚きました。

辻元:国会議員は憲法で縛られている側です。縛られている側が「使ったことないから変えろ」と言う時点で、自分の立場も憲法の役割も分かっていませんよね。どうしてもここを変えてほしいという国民の声が圧倒的多数になれば、それでは国会で受け止めてそこを議論しましょうとなりますが、そんなことは関係なく一部の改憲族の人たちがイデオロギーと過去の幻想に縛られて憲法を変えようとしているのが許せないのです。

菱山:最後に私たちに投票したらこう変わるよ!ということを教えてください。

辻元:まず一つ目。自分らしく生きられる社会になること。これは多様性・選択的夫婦別姓の実現・LGBTQの差別の禁止、それから同性婚を法的に位置づけるなど、あらゆる人が生きやすい社会を作っていくということ。これは日本の経済成長とか社会の閉塞感を打ち破っていくと思います。それからヘイトをきちんと規制すること。これらは社会政策のように見えるのだけれども、みんなが自分らしく平等に生きられる社会を作るということです。

私はこの選択的夫婦別姓とか同性婚というのは人権問題ととらえられていますが、それだけではなく、社会の閉塞感を打ち破り、経済成長を促す、世界中から豊富な人材が集まってくる起爆剤になると思う。

それから、共感と参画の政治の実現。各国のコロナ対策を考えても、政治家が多くの人と共感する、それで共感した言葉を発することで、市民の参画を経て、困難な問題を解決しています。この共感と参画力は女性の方が高いのではないかと。なぜかというとほとんどの女性は、女性であるために差別されたり悔しい思いをした経験を大なり小なり持っています。だからしんどい人と共感する力は女性の方が高いのではないかと思います。私は共感と参画の政治に変えます。

菱山:たしかに!このままでは本当に日本は滅びてしまいますね。

辻元:日本は歪んでいますよ。本当の意味での平等や人権に対してほとんど考えてないリーダー、または歪められたイデオロギーの人がリーダーだと社会全体がそうなるのだと思います。ですから私は頭を変えないと社会は変わらないと思います。私は今回の選挙は、そこがかかった本当の勝負だと思います。

菱山:ありがとうございました!