衆参補欠・再選挙2021

保守牙城での 立憲野党統一候補宮口治子勝利! 参議院広島選挙区再選挙の結果報告

1、本年4月25日に実施された参議院広島選挙区の再選挙は、自民党候補と立憲野党(立憲民主党、共産党、社民党、新社会党)が推薦又は支持する宮口治子候補との一騎打ちとなり、宮口候補は約37万票の得票を得て自民党候補者を約3万4000票引き離して勝利しました。

  同時に行われた、三つの選挙のうち、この「広島選挙区の選挙だけは危ない」との不安を払拭し、三選挙区とも立憲野党が推す候補者が当選することができ、大変うれしく思います。

  自民党と立憲野党との前回参議院選挙の得票数は、河井と溝手候補の得票総数57万票、立憲野党の総得票数は40万票です、よく勝ち得たと思います。

2、広島県内の市民連合は、私が代表幹事を務める広島県第3区選挙区(広島市安南・北区及び芸北地方を含む、以下「3区市民連合」という)のみでした。前回2017年の衆議院選挙において、塩村文香さん(現東京選挙区選出の参議院議員)の当選を目指して設立され、立憲野党に対して統一して闘うよう求めました。

  何とか野党一同が同席したものの、連合広島の大労組の力が大きい広島県では、当時、共産を除く野党は、「共産党とは統一して闘えない」、「選挙協力の枠組みは政党間で決める」との立場で、3区市民連合の呼びかけはけんもほろろという状況でした。しかし、この衆議院選挙において、共産党は自らの候補者を取り下げて闘い、あの河井克行候補(彼とは、この時から因縁です)に2万票差に迫るという大善戦でした。この結果により「一緒に闘うこと」の意義を示すことが出来たと思います。

3、私は、3区だけでなく他の選挙区にも市民連合を作る必要があることを痛感し、機会がある毎に、他の選挙区の関係者に市民連合の設立を呼びかけてきました。

  私が共同代表である「ヒロシマ総がかり実行委員会」に所属している人々が呼応してくれて、2区と5区に市民連合ができ、総がかり実行委員会が共闘態勢の精神的な核となり、市民連合が野党統一のための具体的政治活動を行うという役割分担ができるようになりました。

  2区、3区及び5区に市民連合(3市民連合という)ができたため、活動は飛躍的に拡大し、この3市民連合が共同して野党各党や連合広島に対し、次なる総選挙には統一して取り組むよう求めたり、野党及び衆議院予定候補者との懇談会を開催するなどの活動を進めていました。

  ところが、その矢先である本年2月、選挙買収により有罪を受けた河井案里参議員が控訴せずに議員辞職する旨表明したため、参議院の再選挙問題が急浮上しました。

4、そもそも、この選挙買収問題は、週間文春2019年11月号が河井克行議員は案里議員の参議院選挙に際し、選挙運動員に法定以上の日当を支払った等と報じたことが始まりです。

  3区市民連合内で「これは放置せず、告発すべきだ。」とする意見が生じたのです。しかし、案里議員の当選無効は、県民全体の問題であることから、3区市民連合とは別の「河井疑惑をただす会」が作られ、3区市民連合幹事の山根岩男さんが事務局長として実務を担うこととなりました。その後、この「ただす会」の活動は目を見張るものがあります。

  当初「告訴人は20人程度集まれば」と思っていたところ、最終的には600名を超える告発人を集めました。私は、他の弁護士に「告発人代理人に就任するよう」呼びかたものの、誰も「そんなことをしても、検察が捜査に着手するはずがない」として相手にしてくれないため、取りあえず私が告発状を作り、広島地検に告発してもらいました。

  すると、上脇博之神戸学院大学教授も別途告訴したり、告発者が多かったためか、検察も放置できず河井事務所を捜索したところ、コンピューターから消したはずの買収一覧表が復元され、芋ずる式に40名を超える議員や首長が金品を受け取っていることが明らかとなったのです。

  そして、選挙買収容疑で河井夫婦は逮捕され、先のとおり案里議員の有罪判決と再選挙問題が生じたのです。物事はやってみなければ分からないものです。

5、再選挙が決まるや3市民連合は、立憲野党等に対し、急ぎ、統一候補者を選任し、一緒に闘うよう要請をしたものの、ようやく3月14日(選挙42日前)に宮口治子さんを候補者として立てることが決まりました。私たちは、直ちに、宮口候補と会って、金権政治の打破、核廃絶を目指す等の6つの政策要望書を渡して政策協定を求めたうえ、3月28日、「市民と野党の力で政治を変えるヒロシマ集会」開催することとし、そこで、この再選挙は金権政治を排除して民主主義を取り返す選挙であることを強く訴えました。共産党を含む立憲野党各党関係者も出席して、統一して選挙を闘う意思表明してもらい、また宮口さんもこの集会において自分の経歴や立候補した動機や女性や社会的弱者のために闘う旨述べ、政策協定書にも署名してくれました。私たち市民連合と候補者との政策目的が一致したのです。選挙戦が始まると市民連合の関係者は、率先して各区の選対事務所に詰めかけて電話架け等の対応を行ったりしました。

  しかし、この頃には、長野選挙区で立憲民主党が共産党などと政策協定書を結んだことが問題となり、立憲民主、社民党、新社会党は「結集ひろしま」なる枠組みで闘うことを鮮明にし、共産党の推薦も受けないという態度を明らかにしたため、統一して闘うことの足並み自体が崩れかねない状況になっていました。しかし、共産党は、「一方的な支持・支援で構わない」との態度を取ってくれたため、なんとか共闘関係は維持できたのです。

6、選挙戦は静かな論戦で始まりましたが、終盤になり、山口二郎氏や前川喜平氏など著名人が続々と選挙演説を行い、「この選挙勝利が河井夫婦の選挙買収等による金権政治の打破である」と唱え、宮口候補もこのことを前面に出し始めたため、自民党候補者自身も、この論戦から逃げるわけにはいかなくなり、自らも河井事件の解明を主張し始めたのです。こちらが考えていたとおりの展開になってきました。

  ところが、終盤になり、選挙運動に協力していた共産党関係者から、「共闘関係から除かれ、これでは統一して選挙運動を行っているとは言えない」との苦情が入るようになりました。私としても終盤戦において、これを放置はできず、東京で選対を務めている広島県選出の森本参議院議員に連絡して、共産党も参加した集会を行うため、これに協力するよう求め.、投票日2日前の4月23日に急遽、郷原弁護士の河井買収事件の講演会を開催することにしました。

  これに志位共産党委員長と平野立憲民主党選対委員長が出席してくれて、共に闘うことを誓ってくれました。これにより、選挙を共に闘って宮口さんの当選を勝ち取ろうとの機運が高まったことは間違いありません。

  このような事情があり、冒頭のとおり、何とかこの選挙は立憲野党の統一候補の当選を勝ち取ることができましたが、裏方に徹した市民連合としては、薄氷を履む思いでした。この選挙は、①何とか野党が統一して闘えば十分に勝てること、②市民連合がこの接着剤を果たす役割の大きいこと、③選挙戦ではぞの時々の政治的問題点を正面から唱えて論戦すること、④やれる手段は、諦めずに行ってみること、⑤今後、連合と共産党との関係が選挙戦の重要な問題をなることなどの教訓を得ています。

  どの市民連合が抱えている悩みや成果だと思いますが、参考になればと思い報告しておきます。今後とも共に頑張りましょう。

広島3区市民連合代表幹事 弁護士 山田延廣