2021年頭所感
コロナ禍のさなかまたもや唐突に安倍晋三が政権を放り投げ、「安倍路線の継承」を唱える菅義偉がその後継に収まった2020年、後手後手の政府対応によって感染は全国で拡大しつづけ、そのことがまた生活や経済を逼迫する状態を招きました。また、年の瀬を迎えてもなお、元農相の大臣室などでの大手業者からの現金受領、違法の定年延長の対象となった元検事長の賭け麻雀の検察審査会における起訴相当議決、桜を見る会前夜祭での安倍による経費補填とその隠蔽のための国会での100回を超える虚偽答弁、さらに嘘を重ね秘書に責任転嫁を図る前首相の醜悪な姿など、一般市民の健康や暮らしとは無縁の腐敗しきった自公政権のていたらくが改めて浮き彫りになりました。
しかし、そうしたなか菅内閣の支持率は急落したものの、立憲野党への支持は総じて伸び悩み、有権者は「静かな絶望」に慣れてしまったかのようにも見えます。今年行われる衆議院選挙でも、民意は政治そのものに背を向けてしまうのでしょうか。
新年を迎えてもなお、昨年11月に起きた痛ましい事件が胸に残ります。
路上生活を余儀なくされていた女性が未明の渋谷区のバス停で撲殺されてしまったのです。派遣労働に従事していた彼女は、住居を失ってもなお人や政府に頼ることなく「自助」を貫き、遺体が発見された際の所持金はわずか8円だったと報じられています。身を横たわることさえできない排除のベンチで束の間の休息を得ていた彼女は、不意に殴られ冷たい地面で最期を迎えた時に何を見たのでしょうか。
こんな社会、こんな経済、こんな政治は、変えなくてはならない、と思います。
私たち市民連合は、2020年9月19日に『立憲野党の政策に対する市民連合の要望書 −いのちと人間の尊厳を守る「選択肢」の提示を』を発表し、以後、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組、国民民主党、碧水会、沖縄の風に、政策実現とそのための共闘態勢づくりを要請してきました。2016年、2019年の2度の参議院選挙において、地方1人区(全32区)における立憲野党と市民の統一候補の擁立に成功し、ついに改憲勢力が議席3分の2を占めることを阻止した実績を踏まえ、2017年の衆議院選挙では限定的に終わってしまった野党共闘を今年2021年こそは大きく成功させて、有権者にまさに「いのちと人間の尊厳を守る選択肢」を提示することを目指しています。
行き場を失くした人がさらに排除され命さえ奪われてしまうようなことがないように、立憲野党各党が小異を残しつつ大同につくことを、私たちは強く求めます。消費税負担の軽減は重要な政策課題ですが、それだけでバス停で起きた悲しい事件が防げたとは考えません。公平な税制に基づいた社会保障制度の再分配機能の強化が、格差と差別のない社会の実現には不可欠だと思います。また、非立憲的な政権がつづくなか有権者が望んでもいない改憲議論を進めるべきだという意見に私たち市民連合が与することはあり得ません。政治家たちが喫緊の課題から逃避するための見せかけだけの「改革」はもうたくさんです。
党利党略を優先するのは、与党だけでなく野党も同じなのか。そう有権者に見透かされてしまうようなことになったら「静かな絶望」はさらに広がり、衆議院選挙においても投票率が50%を割り込んでしまう恐れがあります。それほどまでに数々の失政や不祥事にもかかわらず「この道しかない」と多くの人たちが思い込まされている現実があります。しかし、私たち市民が立憲野党のいっそうの奮起を促し、各党がそれに応える大きな判断を示すところから、政治は変えられるはずです。
2021年、「いのちと人間の尊厳を守る選択肢」をともにつくるために、市民連合は、市民と立憲野党の大きく力強い共闘を呼びかけます。
2021年1月1日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合