地方から

October-11-2020

長野県における市民と野党の共闘-現状と課題

1 信州市民アクションの成り立ち

 信州市民アクションは、2016年の参院選挙において野党統一候補を支援するために結成された信州市民連合の後継組織である。同連合は野党候補の統一を強く主張し、共産党の画期的な戦術転換もあり、統一候補である民進党(当時)の杉尾秀哉氏は与党候補に7万票以上の差をつけて大勝した。同年9月、信州市民連合はミッションの終了を宣言して解散した。
 翌2017年、「森友・加計」問題の噴出、自民党新9条改憲案の提示、共謀罪法の成立、小池新党(希望の党)設立などある種騒然とした雰囲気の中で衆議院が解散された。そして最大野党である新進党が希望の党への合流をめぐって分裂するという混沌とした状況下で、県内の30余の市民団体の連携組織として信州市民アクションが結成された。それは、総選挙における野党共闘を市民の立場で推進することを目的とする市民団体及び個人の緩やかなネットワークとして位置づけられたが、総選挙後も市民と野党の共通フォーラムとして存続し、今日に至っている。

2 信州市民アクションのこれまでの活動

 信州市民アクションはこれまで2度の選挙を戦っている。1度目は前述の総選挙である。このときの基本方針は、①安倍政権下での改憲に反対し、立憲主義の政治を回復する、②新安保関連法、特定秘密保護法、共謀罪法の廃止を求める、③格差と貧困を拡大する政策を転換し、生活者本位の政策を推進する、という3つの基本政策に賛同する野党もしくは無所属の候補を支援するというものであった。希望の党は、リベラル派を排除し、安保法制を容認し、改憲を志向する自民補完勢力である、という理由で支援対象から除外された。県内5選挙区のうち4選挙区で希望の党が立候補し、そこでは信州市民アクションは社民党、共産党、無所属の候補者を支援した。そして比例復活を含む自民党3名、希望の党2名が当選し、かろうじて無所属で立候補した1名のみが野党統一候補として当選するという苦い結果となったのである。
 2度目の選挙は昨2019年の参議院選挙である。まずは、前回総選挙の経験を踏まえ、野党との緊密でありながら対等な連携体制を構築することが重要であった。必要なのは野党が一方的に候補者と公約を決定し、それを呑むか否かを市民側に求めるという非対称的な関係を打破し、市民と政党が対等な立場で共同的な決定を行う場を形成することである。そこで生み出されたのが「市民と野党の共同のテーブル」である。これは立候補予定者及び野党の代表と信州市民アクションの共同代表が同じテーブルに着き、会場に集まった多くの市民も参加しながら、信州市民アクション側が用意した政策項目案及びその他の事項について率直な意見交換をするというものである。
 投票まで3回開かれ、6月7日の最後のテーブルでは、市民と野党の統一候補の確認式が行われた。すなわち、信州市民アクション共同代表と候補者である国民民主党の羽田雄一郎氏及び野党県組織代表の間で、下記6項目の基本政策に基づき、参議院選挙を一体となって戦うことを相互に確認する旨の協定書が締結されたのである。候補者個人及び政党県組織の代表が、信州市民アクションと契約を結ぶということが肝である。
 基本政策の内容は以下のとおりである。①安倍政権の下での改憲、すなわち9条への自衛隊明記、緊急事態条項の創設などの自民党改憲案に反対し、立憲主義の回復をめざす。②新安保関連法、特定秘密保護法、共謀罪法の廃止を求める。③沖縄の米軍辺野古基地建設に反対し、日米地位協定の見直しを求める。④原発の再稼働に反対、原発ゼロ社会をめざし、再生可能エネルギーを促進する。⑤格差と貧困を拡大するアベノミクスをやめさせ、所得再分配を重視する政策へ転換する。今秋の消費増税の中止を求める。⑥ジェンダー(社会的性別)平等を推進し、LGBT、障がい者、在日外国人などマイノリティーの権利を保障する多様な社会をめざす。
 選挙結果は与党候補に前回参院選の2倍、14万票以上の差をつける圧勝であった。

3 衆院選へ向けた取り組み

 来年暮れまでには確実に総選挙が行われる。衆議院選挙が政権選択選挙であることを踏まえるならば、野党の政策の具体性や明確性、そして実行可能性が問われることになる。このような観点から、これまで県内数地区で野党代表等を含めて政策フォーラムを開催してきた。現在信州市民アクションとして、立候補予定者との政策協定書の草案を作成中であるので、今後はこれを用いて野党との意見交換を密にしていくことを考えている。
 さらに、選挙を戦う組織体制の整備が必要である。選挙区ごとに市民連合を立ち上げ、そこで政策論議を活性化していく必要がある。現在2区と5区で市民連合が立ち上がっており、他の選挙区でもその準備が加速している。なお、5つの選挙区のうち4選挙区で野党公認候補予定者が決まっており、これら「◯◯党公認候補」をできるだけ早く「市民と野党の統一候補」に転換することが喫緊の課題である。すでに今年3月に信州市民アクションとして候補者の早期統一を各政党本部に直接申し入れているが、野党にはさらなるスピードアップを求めたい。
 今後、市民アクションとして政党及び候補者に提示すべき協定書の内容が確定した段階で、各選挙区ごとに「市民と野党の共同のテーブル」を開き、そこで正式に協定締結できる日を目指して努力していきたいと考えている。

信州市民アクション共同代表 又坂 常人