【声明】菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に抗議し決定の撤回を求める
2020年10月1日、日本学術会議は、新会員候補者として菅義偉首相に推薦した105名のうち、6名が任命を拒否されたことを明らかにした。同会議は、ただちに菅首相に対して、任命されなかった理由を説明すること、そして6名を任命することを要望する文書を提出した。菅首相は、10月5日、任命問題について記者説明を行ったが、「推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのかと考えてきた」と述べ、この措置が「法律に基づく」ものと説明するにとどまった。
日本学術会議は、科学者によって組織される国の特別の機関として、日本学術会議法に基づいて設置され、学術的立場から政府や社会に対して、助言・提言を行うことを目的としている。職務の独立性が保障され、会員選考も独立性の保障のために、日本学術会議が学術的基準によって自ら実施し、会員候補者を首相に推薦することとされている。これまで、このようにして推薦された候補者が任命を拒否されたことはなかった。
この間、野党の追及やメディアの調査によって明らかになったことは、今回の任命拒否にいたる筋道は、安倍政権下ですでに準備されていたということである。安倍政権が「人事」を梃子にして霞が関官僚を支配してきたことと同様のことが、いま、菅政権によって科学者組織である日本学術会議に向けられている。日本学術会議の活動は学問の自由のもとで生まれた科学の成果を広く社会と国民の生活に活かすことであり、その独立性は、日本国憲法の保障する学問の自由に基礎づけられている。
市民連合は、さきに決定した「立憲野党の政策に対する市民連合の要望書―いのちと人間の尊厳を守る『選択肢』の提示を」において、「学問の自由の理念の下、研究の自立性を尊重するとともに、政策形成に学問的成果を反映させる」政策を示している。菅首相の今回の日本学術会員任命拒否は、この政策に示したわたしたちの要求にまったくそぐわないものであり、学問の自由の理念を軽視し、日本学術会議の存在意義をあやうくするものである。
市民連合は、日本学術会議の菅首相への2点の要望を支持し、菅首相が人事を梃子にして強権的政治を進めた安倍政治からきっぱりと決別し、今回の日本学術会議会員任命拒否の決定を撤回することを強く要求する。
2020年10月6日
安保法制に反対し立憲主義の回復を求める市民連合