次期衆院選に向けて。市民連合@新潟・政策要望 ―新型コロナウイルス感染症に負けず、希望がもてる社会のためにー
去る8月3日、市民連合@新潟が記者会見を行い、発表した各野党宛の政策要望書です。
読んでいただければわかるように、政権選択選挙である次の衆院選に向けてのもので、新型コロナウイルスへの有効な対策と新しい社会像の建設とが同じ像を結んでいることを訴えています。
新潟は6つの選挙区がありますが、すでにすべての選挙区で、野党統一候補がほぼ決まっています。この政策要望書は、いわば立憲リベラル政治の「最大公約数」なので、各候補はこれに各選挙区の課題や自分の政治目標を加えて独自の政策をつくっていくことになります。新潟は、市民と野党との共闘がもっとも円滑に進んでいると言われますが、それはこれまでの選挙での勝利経験もさることながら、市民の側からこのような政策のアジェンダを率先して提案していく実践にも支えられていると言えます。政策要望の各項目が、各地域のこれからの実践に少しでも参考になれば幸いです。市民連合@新潟 共同代表 佐々木寛
次期衆院選に向けて。市民連合@新潟・政策要望
―新型コロナウイルス感染症に負けず、希望がもてる社会のためにー
新型コロナウイルスの猛威は、未だに終息の見通しが立ちません。一方、政治の機能不全は目を覆うばかりで、多くの市民はもはや政治そのものに希望を見失っています。
新型コロナウイルスの危機は、それまでの社会が内側にもっていた深刻な問題点も浮き彫りにしました。「自己責任」や競争原理が過度に強調され、弱者や少数者が見捨てられる格差社会。「今だけ、カネだけ、自分だけ」といった殺伐とした気分を醸成する分断社会。支え合い、つながり合うのではなく、「社会的孤立」や「孤独死」を大量に生み出す無縁社会…。このような、つまりは人間の尊厳やいのち、人間らしい生き方を根源から破壊する「新自由主義」の問題性が、新型ウイルスの惨禍によって一層表面化したと言えます。
私たち市民連合は、設立当初から、戦争へと向かう安保法制の廃止、そして法や正義にもとづく最低限のまともな政治を求めてきました。しかし、その願いは未だに果たされず、当時から個人の尊厳や民主主義を軽視してきた同じ政権によって、現在の見通しがもてないウイルス禍の閉塞状況に直面しています。
私たちは、政治をあきらめません。新型コロナウイルスの危機を克服し、少しでも希望が持てる人間的な社会を取りもどすためには、政治の力を無視することはできないからです。政治の私物化と劣化によってもたらされたこの国の経済や道徳の荒廃を立て直すのも、やはり市民の参加による政治の再生をおいて他にありません。次の衆議院選挙においても、私たちは引き続き、新しい社会を目指す全ての政党や関係者に呼びかけ、再び新潟から全国に希望を発信できるよう、下記の政策のもとに結束することを要望します。
1 くらしの安心と安全をとりもどす
- 現在の無為無策な新型コロナウイルス感染症対策を刷新する。ボトムアップの徹底した検査体制や医療体制を確立する。
- 兵器の爆買いや「敵基地攻撃能力」など、戦争準備に膨大な税金を費やすのではなく、新型コロナウイルスに立ち向かう地域医療機関や医療従事者、看護師や保育士、ソーシャルワーカーなど、私たちのくらしの維持に不可欠な公的働き手への手厚い支援を行う(軍事的安全保障から社会的安全保障へ)。
- 新型コロナ対策を理由とした、国民の深刻なプライバシー侵害、罰則強化の法改正などはけっして行わない。
- 新型コロナ禍の下での原発再稼働は行わない。現在新潟県が進めている「原発検証委員会」の熟議を最大限尊重する。本気の“原発ゼロ”に向き合う。国民にこれ以上の被ばくをさせない社会の実現。
- 近年深刻化する自然災害(気候非常事態)への対策を国家レベルで強化する。またその背景となっている気候変動問題への取り組みを優先的な政治課題とする。
- 「人間の安全保障」や予防外交、信頼醸成措置に基づく新しい外交・安全保障政策の構築。またこれに関連し、沖縄の新基地建設を取りやめ、日米地位協定を見直す。
2 ときめく新潟の未来——地域から希望をつくるグリーン・ニューディール
- 持続可能で活力ある新潟をつくるため、分散型の地域経済、新しいエネルギー政策による新しい地域産業の育成と地域再生を全力で目指す(グリーン・リカバリー)。
- 新型コロナ禍で苦しむ地域の中小企業の支援。地域の雇用を守る。持続化給付金事業の継続。
- いのちを支える食農の重視。「主要農産物種子法」や「一次産業戸別補償制度」の復活。
- 地域医療を守り、地域福祉を再生することによって、地域の雇用を創出する。公的病院の安易な統廃合や民営化は行わない。
- 所得税の累進性や給付つき税額控除の導入、消費減税や炭素税の強化などの総合的な税制の見直しによって税制の公正さをとりもどし、地域復興や社会福祉のための財源確保を図り、格差のない社会をめざす。
3 人間らしく生きられる社会へ——誠実な努力が報われる社会
- 誰一人、取り残さない。誰もがふつうの暮らしを保障される社会へ。あらゆる世代のセーフティ・ネットの強化。生活保護基準の引き下げをストップさせる。
- 人間らしい労働条件の確保。とくに若者が希望のもてる将来を描けるように、全国一律の最低賃金引き上げをすすめる。週40時間働けばふつうに暮らせるルールの確立。非正規雇用労働者の差別的待遇の廃止。
- 次世代をつくる教育をとりもどす。高校授業料や給食費の完全無償化、給付型奨学金制度の確立、オンライン授業のインフラ整備、教員数の拡充と少人数学級の実現など。
- 男女における賃金格差の解消、性暴力の禁止、選択的夫婦別姓の実現。
- 性差別をはじめとするあらゆる差別やハラスメント、ヘイトの根絶。
4 基本的なルール(立憲主義)を守る開かれた政治
- 強行採決された安保法制や特定秘密保護法をはじめとする「トンデモ法」の廃止。また現政権が進める憲法(特に第九条)の改定に反対。
- 〈嘘のない政治〉を実現するため、現政権で浮上した森友学園・加計学園疑惑、数々の文書改ざん問題などの徹底的な真相究明を行う。
- 強行採決ではなく熟議、また議事録や記録、客観的データや科学的知見に基づく政治をとりもどす。徹底した情報公開と透明性の実現(新型コロナウイルス対策においては特に重要)。
- 国民の自由を守るため、国家権力のメディアへの介入・規制に強く反対する。
5 わたしが決める、わたしがつくる——政治を市民にとりもどす
- 化石燃料から自然エネルギーへの「エネルギー転換」を起点にした、経済や産業における分散革命を実現し、地域のあり方を地域の市民が自己決定できる地域分散ネットワーク型社会を実現する。
- 投票率の向上、国民の普段からの政治参加を促すための、生涯にわたる「政治(公民)教育」の拡充を実現する。
以上