コラム

中村喜四郎さんインタビュー

 市民連合は、2015年12月の発足以降、国政選挙において、野党統一・市民連合推薦候補の擁立を実現してきました。また、同時に投票率のアップのため、街頭宣伝などや様々な取り組みをしてきました。
 その私たちに対して、中村喜四郎議員が事務総長を務める「全国108万ネットワーク国民運動本部」から、国民運動本部がすすめる「投票率10%アップをめざす108万6288人国民運動」署名の協力要請がありました。国民運動本部には、立憲民主党の枝野代表を本部長として、日本共産党志位委員長、社会民主党福島党首などが名を連ねています。
 投票率をアップさせることは、私たち市民連合の取り組みにとっても非常に大切なことです。このため、今回、事務局で、署名運動の趣旨等をうかがうために、中村喜四郎議員のインタビューを行いましたので、掲載いたします。

2020年8月19日  於:衆議院第二議員会館

市民連合 
衆議院議員中村喜四郎さんインタビュー


-今日はお忙しいところ、ありがとうございます。
 最初に、これまでの経歴と、政治家として何をめざしてきたのかについてお聞かせください。

 私は1976年の第34回衆議院議員総選挙に旧茨城3区から無所属で出馬し、初当選。当選後、自民党に入党しました。1989年宇野内閣で科学技術庁長官に任命され、1992年、宮澤内閣で建設大臣に任命されました。1994年のゼネコン汚職事件の時も政治活動を続け、2005年のいわゆる郵政解散にともなう総選挙の時に、無所属で再び当選、今に至るまで当選14回を数えます。これは有権者のみなさんに、私の政治姿勢を評価しつづけていただいたからだと考えており、感謝しております。
 私のめざして来たことは、「社会正義」を貫く、と言うことです。公平・公正な政治をやるべきで、その前提として民主主義を守り抜くことが大切だと思っています。そのために、これまで、一切妥協することなくやって来ました。

-自民党内閣で、建設大臣までつとめられた中村さんが、
 なぜ今、野党陣営に身を置いているのでしょうか。

 私の知っている自民党は中選挙区時代の自民党です。90年代の選挙制度改革には、私は反対でした。政権交代が可能となる二大政党制は、それぞれの確固たる支持層があって、初めて成り立つものです。そのようなものが全くないまま、政党交付金の制度で「政治とカネ」の問題が解決するなどと言う短絡的な発想で改革が進んでしまいました。
 その後、私は無所属になって、自民党がどう変わっていくのかを、じっと見続けて来ましたが、私が懸念していたことが、現実のものとなってしまったのが、この安倍政権の7年間でした。
 安保法制をめぐる解釈改憲などは、公平・公正な方法ではなく、まさに民主主義は危機に瀕しているといわざるを得ません。
 

-安倍政権、安倍自民党の問題点はどこにあるのでしょうか。
 
 最大の罪は「権威主義的な政治を加速させ、国民に政治をあきらめさせたこと」にあると思っています。原因の一つは、小選挙区制度によって、「一強多弱」の状況が作られてしまったことだと思いますが、もう一つの原因は「公務員制度改革」によって、内閣人事局が、中央省庁の幹部人事を官邸でコントロールする仕組みが出来上がってしまったことにあると思っています。かつての自民党は、役所の皆さんには、専門知識や情報を活かしてもらって、政治家が責任を取る、という形でやって来ましたが、今は常に官邸を守る役所になってしまった。だから森友の問題にしても、平気で公文書を改竄する。役人が嘘に嘘を重ねなければ、やっていけないようになってしまった。さらに、マスコミの報道に対する介入も目に余るものがあります。特定秘密保護法とか、共謀罪とか、表現の自由を制約するような法律をいくつも通している。これは民主主義にとって、とても危険なことです。
 一方で、安倍首相は、言っていることに全く中身がない。例えば、消費税に関しても、4年半にわたって、国会で154回、「社会保障のための財源にする」と言って来たにもかかわらず、突然、「教育のため」と言い出す。2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化をすると、衆参の本会議で30回も答弁したにもかかわらず、突然撤回する。アベノミクスにしても、何の成果が上がったのか、さっぱり分からないうちに新アベノミクスとか言い出す。もう出鱈目です。
 そして、安倍首相に人事権を握られているので自民党の中でも、異議を申し立てる人がいない。国会議員が300人もいても、十分な議論をしない。今の自民党は自浄能力を失った政権与党になっている。これではダメです。

-私たちも、安倍政権に対しては同じような認識を持っていますが、
 それではこれから、野党はどうしていけばいいと思われますか。

 このままでいけば、安倍総理が辞めても次の人も、同じことをするでしょう。そして、政治をあきらめた国民は、どんどん投票に行かなくなる。ここをどうにかしなければいけない。投票に行かない1000万人の人たちが投票に行けば、一強多弱の状況を変えられる。いわゆる「保革伯仲」となれば、政治に緊張感も生まれる。このことで「あきらめない政治」を作り出していくことが必要だと思っています。

-なるほど、
 それで中村さんは「投票率10%アップをめざす108万6288人国民運動」を進めていらっしゃるのですね。

 そうです。私は、この運動に賛同してもらうにあたって、自分の足で、野党の議員の事務所を一軒一軒、これまでに4回訪ねて回りました。そのようなことをする国会議員は、これまでにはいなかったのでないかと思います。私自身、土日は必ず選挙区を歩くようにしています。四日で一回り、一年で25回、4年で100回、これを正確なルートで回ることが必要です。そうするとそのうち、有権者が「ああ、今日は中村が来る日だな」と、待っていてくれるようになる。そのような人たちから、直に話を聞くことが必要です。
 今の野党議員に足りないところは、まさにそこだと思っています。本やインターネットで情報を得るだけでなく、じかに話を聞いて、国民の声を受け止めていく。そうすると、「ああ、この人は自民党の議員よりも私たちの話を聞いてくれるな」となり、本気度が伝わっていくのです。その時に、「投票率10%アップをめざす108万6288人国民運動」の趣旨を伝えていく、すなわち、みんなで投票に行ってくれと、訴えてもらえればと思っています。

-わかりました。
 最後に、野党共闘を進めて来た私たち市民連合に、メッセージをお願いします。

政治の原点は、国民の中に飛び込んで、そこに根差したものでなければならないと思っています。市民連合で、市民運動をやっていらっしゃる皆さんとも、一緒にやっていかなければなりません。その際、市民連合の皆さんにも、ぜひ、投票率をどうあげていくのか、ということを、活動の柱にしていただきたい。この度の選挙では、野党は、自民党に対する批判票で勝つのではなく、実力をつけて勝っていく。そのためには、多くの人たちに、政治を変えるために投票に行ってもらわなければなりません。私もそのために、精一杯頑張ろうと思っています。よろしくお願いします。

-ありがとうございました。