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June-10-2019

安倍政権が企む憲法改正ー 高田健(総がかり行動実行委員会共同代表)

安倍政権による憲法改正阻止のため、連日、街頭宣伝や署名活動を行なっている高田健さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)に安倍政権がすすめようとしている憲法改正について5つの質問にお答えいただきました。

Q1. 安倍首相らがすすめようとしている「改憲」に反対する理由は?

安倍首相は第1次安倍政権の誕生以来、「憲法改正」を自らの究極の政治目標にしてきました。

自民党は2012年4月に「自由民主党憲法改正草案」を党議決定しましたが、これは「天皇の元首化」、9条を変えて「国防軍を保持」する、究極の強権政治につながる「緊急事態条項の導入」などなど、歴史の流れに逆行するもので、世論の評判がよくないものでした。そこで安倍首相は2017年5月に、この改憲草案を棚上げにして、あらたな改憲案をしめしました。それは評判の悪い「9条改憲→国防軍の保持」ではなく、現行憲法の第9条1項、2項をそのままにして、あらたに「9条の2」として、「自衛隊明記」の条文を付け加えるというものです。安倍首相らは「憲法に自衛隊を明記しても、任務、権限は1ミリも変わらない」などと説明しています。これは真っ赤なウソです。そもそも憲法9条は「武力による威嚇または行使」を国際紛争の解決の手段としては「放棄」する立ち場に立っています。しかし、2015年9月の「安保法制」で集団的自衛権の行使が可能になった自衛隊を憲法に明記することは、米国などが主導する海外での武力紛争に参加する自衛隊のことであり、戦争を容認することで、現行9条の平和主義の精神とは真逆のものになります。わたしたちは日本が「戦争する国」になることに反対です。

 

Q2.自衛隊の違憲論争は終わらせるべきでしょうか ?

安倍首相は「災害救助や国防に日夜励んでいる自衛隊に関して、違憲論がある。自衛隊員のお子さんが学校から帰って、父親に『お父さんは憲法違反なの?』と聞いたという。こんなかわいそうなことを許してはならない」。「憲法に9条を明記して、憲法学者などがいう『違憲論争』を終わらせる」といいます。

たしかに自衛隊は憲法9条2項が禁じている「戦力」にあたり、その発動は「武力の行使」にあたるのではないかという議論があります。憲法の平和主義を論ずるうえで、こうした議論の存在は健全なことです。自衛隊員の息子さんの話はほとんどフェイクであることが国会の論戦でも明らかになりましたが、そもそも自衛隊員個々人を「違憲」などという議論も学校教育もありません。

こうした「自衛隊、かわいそう」などという感情的なレベルの扇動で、前項で見たような「武力を行使しない国」から「武力を行使する国」への180度の転換を企てているのは容認できません。

 

Q3。その他の改憲項目と狙いはなんですか?

いま、自民党が提示している改憲案(条文イメージ、たたき台案)にはこの9条改憲のほかに3つあります。「教育の充実」「緊急事態条項」「合区解消と地方自治」です。

結論からいうと、この3つはそもそも憲法改正に値するマターではありません。世論が警戒する9条問題が突出するのをおそれて、あるいは、公明党や維新の会を改憲派に巻き込みたくて、これらを強引に改憲項目に付け加えたのではないでしょうか。「高等教育の無償化」などといいますが、日本国憲法は教育を受ける権利を保障しています。憲法は義務教育の無償化を謳っていますが、高等教育の無償化を禁じてなどいません。政治が実行する気さえあれば、憲法を変えずとも実現できるものです。

緊急事態条項の導入論は、当初、「大地震、その他の災害発生時に、国会が解散していたらどうなるか、国会議員の任期延長が必要だ」という議論でした。ところが自民党内の議論の経過の中で、災害発生時の「緊急政令」などの条項も新たに付加されてきました。緊急時には国会が決める「法律」に匹敵する「政令」を内閣が決定できるというものです。しかし、災害対応は「災害対策基本法」があります。国会議員の任期延長は参議院が3年に一度の半数改選であることや、公選法の「繰り延べ投票」などを適用すれば、国会が機能しない事態は考えられません。これは改憲事項でないことはあきらかです。そればかりか、「緊急政令」はかつてのナチス・ドイツの「授権法」を想起させる権力の乱用、独裁の危険があります。

 

Q4。改憲手続き法にはどんな問題がありますか?

いま、衆議院憲法審査会では「憲法改正手続法(国民投票法)」の改定の議論があります。自民党などは同法を、投票の利便性(投票所設置の緩和)などの改定をした公選法の改正にならべて改憲手続法を修正する案を出しています。改憲手続法は2007年に制定されたものですが、制定当初かが多くの問題点が指摘されていました。国民投票法は改憲発議のあと、改憲の是非を問う国民投票を実施する法律ですが、この法律が民意を公平・公正に反映できるものであるかどうかは、憲法の死活にかかわる問題です。2007年に採択された同法は問題が多く、3つの附則と18項目の付帯決議が付いた、いわば欠陥法でした。日本弁護士連合会なども会長声明などで同法の問題点をしばしば指摘しています。このところ、国会では公選法並びの改正案が自公から提起されたことを契機に、改憲手続法の問題点が議論され、とりわけ野党からは投票結果に重大な影響を与える有料テレビコマーシャルの取り扱いが、資金力のある改憲派に極度に有利な仕組みになっていることが指摘されました。この問題では憲法審査会で民間放送連盟の幹部なども参考人聴取されましたが、民放連は自主規制を拒否しました。野党は「自主規制」を前提に作られた法律なのに、前提がくずれれば出直ししかないと、公選法並びに限った改定に反対しています。問題は、このほかにも、国民投票運動期間が短すぎることや、国民投票の最低投票率規定がないこと、公務員・教育者の国民投票運動に規制が強すぎることなど、抜本的な再検討を要する項目がすくなくありません。自民党などは一刻も早く、憲法改正案の議論に入りたいため、強行採決をちらつかせ、与野党の対立が激化しています。

 

Q5。憲法を守るって?

人は生まれながらにして天からあたえられた権利、自由を持っています。しかし、国家権力はときに暴走し、こうした権利を踏みにじったり、うばったりすることがあります。憲法とは権力制限規範です。

私たちは時の権力者による憲法改悪に反対し、立憲主義を擁護する立場にたっています。

改憲反対というと、「反対」「守る」という主張が強く突出してみられがちですが、立憲主義と合わせて考えると、きわめてポジティブな考え方になります。日本国憲法の3原則といわれる「平和主義」「民主主義」「基本的人権の尊重」を社会のすみずみにまで生かし、実現する政治を求めるものです。これに「前文」や「9条」の国際主義を加えれば、こうした憲法が求める社会の実現が、この社会を平和で、自由で、平等な、明るく、豊かに、大きく変えていくことにつながります。安倍首相らの改憲に反対する運動は、決して後ろ向きな運動ではなく、そうしたポジティブな運動です。(以上・高田健)

 

戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会 http://sogakari.com/